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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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26/136

草野球カップ3回戦・最上ノーストップズ戦(その10)

「アイツ何ゆっくりやってんだ? この回の先頭でしょ?」

「本城に促されるまでずっと立ち止まったままだったもんな…」

―というか、バックスクリーンのほう見て睨んでた気がする。

「おいおい、早くしてやれって」

「ええ…。潰してきますよ」

「潰すって…。アイツそんな人格だったっけ?」


「なあ涼」

「ん?」

「瀬見がお前に投げた5球目…、あれ多分スクリューだぞ」

「スクリュー?」

「うん。カーブと似てるけど、シュート回転しながら沈んでいってるから…」

「スクリューだったんだあれ…。結構コントロールもキレも良かったぞ」


『5回の裏、最上ノーストップズの攻撃は―9番 ピッチャー 瀬見』

『4対1、3点を追う最上ノーストップズは今日ヒットを打っているピッチャーの瀬見から』

「プレイ!」

『3点ありますから、まずは自らが塁に出て、チーム1の好打者である向町くんに廻せると良いですね』

―…ん…?

―睨んでる…?

―さっきまでと雰囲気が違うな…。よっぽどさっきまでの失点が腹に拗ね返ったんか?

―開次…、いや、何方かと言うと目線が左方向やから…、健と涼?

―あの2人何かしたんか…? まあええ。その強気は買うたる。

―真ん中から内側。強気で返すんやったらここやで。


キィン!


―そら来た。

「ファールボール!」

『初球から振ってきます瀬見。ストレートに最初からついて行きました』

『バックネットに真っ直ぐ飛んでいますのでタイミングばっちりですね』

―ごめんその真っ直ぐ飛ばす気無い。

―次はこれで。


チッ!


『あっとっ…』

「ファール! ファール! ファールボール!」

『いや、バットに触っています。ファールです』

―何でスライダーで逃げんだよコイツ…。1球目の真っ直ぐも132km/hしか出てないし、こんな抜いて躱す片山など打っても仕方無いんですが。

『さあこれで追い込んだのはN`Carsバッテリーです』

―絶対ウイニングショット隠してる。最高球速144km/hのストレート、あれこそアイツのウイニングショットだ。それを叩き、更に都筑と小宮山の三遊間もブチ破る。ウイニングショット叩きとさっきの攻撃の功労者2人の間をブチ破るというある種2段階のメンタル攻撃をオレが成功させれば…、


キィン!


「ファールボール!」

―後は向、本城、ミツ、東で片山を打ち砕く。正直オレを含め5人もいれば3点差は追い付ける。

『追い込んでからバッテリーが選んだのは縦のカーブでした』

―来いや144km/hの真っ直ぐ。それ来るまでオレはファールで粘るぞ。

『キャッチャーの座る位置は変えません』


キィン!


「ファールボール!」

『今度は1塁線へ、これもファールボール』

―また133km/hのストレート…。144km/hならもっとコンマ数秒速いからな。

―今度は高さを変えて。

―OK。


カッ!


「ファールボール!」

『今度は3塁側ベンチ前へ、ここもついて行きます』

―またスライダーかよ…。

『真ん中から低めに集めていた配球を一転高めに変えて来ましたが、途中で止めたとはいえ良くバットを出していきましたね』

『見送ればボールであろう球にもついて行った瀬見。5球続けてファールの後の6球目は…』


カッ!


「ファールボール!」

『これもファール。低めに来た縦のカーブでしたがまたファールにして来ました』

―またカーブ? …これ、もしかしてオレがファールにし続けているからこの配球なのか? オレが打たない限り配球を変えないつもりだな…。なら粘っててもしょうがない。作戦変更だ。ストレートなら球速関係無く前へ飛ばす。

『7球目…、キャッチャーアウトコース!』

―え!?


カコン!


「ファールボール!」

『一転してアウトコースで来ましたバッテリー。瀬見も喰らい付いたものの読みが外れたか体勢が崩れました』

―バット短く持っただけで作戦を切り替…、え、115km/h!? ストレートの筈だぞ!? こんな遅いストレートだったの今の!?

―やっぱりな。バット短う持ったからストレート狙いやったな今の。おそらく三遊間方向への狙いも変わってへんから、抜いて正解やったわ。

―で? ここまで遅くした後の次は?

―コヤツや。

了解(りょ)

『次が8球目…、キャッチャー構えは変えません』


―速い、狙い目だ!!

カキ―ン!


『三ゆ…、』


パァン!


『間は抜けない! 都筑ダイビングキャッチ!!』

「健ファーストや!」

「和義!」

『1塁は!?』


「アウトー!」

『アウトだ間一髪間に合ったー! 都筑ファインプレー!』

『いやあ素晴らしい守りでしたね。三遊間への速いゴロでしたが良く反応しました』

『バッターランナーの瀬見もピッチャーでありながら1塁へヘッドスライディングしました…が』

『本当にここは紙一重の差でしょうね。それだけ塁に出たかったという気持ちがあったわけですから』

「ごめん…、今の球何km/hだったかわかる?」

「え、見てない」

「139km/h」

「139!? え…、もっと速く出てたと思ったんだけど」

「技だな」

「技?」

「うん、間違いねえ。1度抜いた球の後に速い球だから、速く見せられたんだ。つまりその巧い技にしてやられたのだ…」

『1番 レフト 向町』

―利季がああやってまで塁に出たがったんだ。今度はオレが塁に出る番だ。

「向出ろよ! 3点差追い付くぞ!」


カキ―ン!


『ピッチャー返し!』


パァン!


「キャーッチ! キャーッチ!」

『今度は小宮山が横っ飛び、ダイレクトキャッチー! ファインプレー! 初球のカーブを打って行きましたがセンターへは抜けず、ショートライナーで2アウト』

『2番 サード 本城』

―せめて一仕事でも出来れば。

「本城出ろ! 今度はお前が出る番だ!」


ガキィ!


『真っ直ぐに詰まって…、セカンドか? ファーストも出て来る』


パン。


「キャーッチ!」

『最後はセカンドが掴みました。3アウト』

―速球投手かと思ってたけど意外とテクニックもあるんだな。点が欲しかった場面だけど、140いかない真っ直ぐと変化球で翻弄されちゃ難しいか…。となりゃあとの2イニングは無失点が絶対条件だな。

『5回の裏終了。2回以来の三者凡退で最上ノーストップズ、この回も無得点に終わっています』


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