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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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23/135

草野球カップ3回戦・最上ノーストップズ戦(その7)

「ちょっとこれは…まずいかもしれねな…」

「まずいとは?」

「いや、バッティングのほうでさ、皆積極的に初球から振ってくれてるのは良いんだけんど…、何か…、向こうの思う壷って気がしてきた…」

「壷?」

「うん。うちはファーストストライクがら積極的に振ってくけんど、だったら早いカウントがら変化球で打たせていけば良い、っていうピッチングさ見えてきた…。良い当たりが出てもアウトさなるのが続いてるってことは…、うちがそういうバッティングが出来てるっていうよりは、向こうが最初がらそのテイで打たせでるってことになる…」

「で、どうすんすか?」

「それで、この回から、1球目は捨てて、2球目以降を積極的に振る作戦に変えます」

「ボールカウントは?」

「ボールカウントさ関係なく1球目は見送れ。2球目以降からいつも通り積極的に振れ。良いな!?」

「はい!」

「はい、じゃ~…、あっ、浩介か」

「永田がこの回2人目やからな…。よっしゃ、勝ち越すで!!」

「おー!!」


『試合開始から20分程が経過しました。非常にサクサクとしたテンポでこれから4回表の攻撃へと向かいます』

『4回の表、N`Carsの攻撃は―2番 ショート 小宮山』

「プレイ!」

『ここまで瀬見投手は3回を投げて12球。非常に少ない投球数です』

『持ち前の変化球を駆使したコントロールの良い投球(ピッチング)がここまで出来ていますね』


カキ―ン!


「えっちょっ…」

『初球ピッチャー返し!』

「初球待てって…」

「何打っ…、あ、あれ?」

『センター前!』

「ナ、ナイスバッティング!」

「あ、あれ…? アイツ聞いてねがっだのが?」

「いやだって…、先頭バッターでしたから…」

「あそっか…」

『さあ、先頭小宮山のセンター前ヒットでノーアウト1塁、勝ち越しのランナーが出ましたN`Cars!』

「じゃあ関川、ちょっと」

「はい」

『3番 ライト 永田』

「永田!」

「ん?」

『打席に行きかけたキャプテンの永田に、副キャプテンの関川が何かアドバイスをするようです』


「え~~~?」

「瀬見のテンポを崩す為や…。(さが)に合わへんかもしれんけど、ここは1つ」

「…わかった」

―は、良いけどさ…。アイツあんなガッツリ至近距離で言わなくて良いのに。


「ファーストストライクから打つアイツにとっては、ちょっと合わんかもしれませんね」

「ああ…。だば、やり易くすっか」

―えっ? そのサインなら、態々関川を伝令に寄越すことなかったんじゃね?


『関川からアドバイスを貰った永田、この構えです』

『大事な勝ち越しのランナーですのでね、ここは確り決めたいところ』


―ん。

パン。


『そして瀬見も1塁へ牽制を入れます…勝ち越されたくない場面というのもあって間合いを取るのも兼ねながら様子を窺おうという姿勢』

『慎重になっていますね』

―もし走って来たら立ち上がって外す。それまではストライク1本で、バントをやらせるつもりで行け。

―ん。

『お互い慎重の第1球…、あっ!!』


―!

「来たっ!!」

『1塁ランナースタート!!』


バシィ!


「ストライーク!」


ザッ!


「セーフ!」

『盗塁成功!! 1塁ランナーの小宮山、初球から走って来ました!』

『左ピッチャーの瀬見くんということでちょっとやりにくかったんでしょうが、良いスタートでしたね』

―うっわ。折角外したのにか。

―足が交差する前にこっちを向いたら牽制、そうじゃないまま交差したら投球。瀬見さんもその通りでしたね。

―まあでも良かったわ走られて。ランナーと目ぇ合わせずに済むもん。

『初球、バッテリーは投球を外しましたがバッターがバントの構えのまま空振りしましたので投球1ストライクです』

『今のはバット引いても良かったんですが…、ここで1ストライクを取られたことがどう影響するか』

『しかし2球目も同じ構えです…』

『どうやらして来ますね』

―三盗?

―いや、左ピッチャーだけど左バッターだからね。三盗は難しい。バント1択。

―だよな。

『サードは固定、ファーストはダッシュ』


カッ!


―あっ?

「ファールボール!」

『バントが決まりませんキャプテン』

『どっちのチームもキャプテンがバント決まりませんね』

『追い込んだのはバッテリー』

『バントが難しい場面ですが…バットを引きません』

―ヒッティングのほうが良いけどダブられるリスクもあんだよな。スリーバントも危ねぇけんど、バントの構えが前の試合より若干良ぐなってる。

―待て待てバントの基本思い出せ~…。え~と…、まず下半身を柔らかくして、バットのヘッドを上げて…。

『スリーバントで来るか、引き続きサードは固定、ファーストはダッシュ!』


―体重を後ろのほうに寄せて、ボールは上半分を見て…、


コッ。


『今度はきっちり転がした、3塁方向!』

―やった転がった!

『マウンドを降りた瀬見が捕って…、3塁は間に合いません!』


パシ。


「アウト!」

『送りバント成功、1アウトランナー3塁、キャプテンがきっちりスリーバントを決めて勝ち越しのチャンスを迎えました!』

「ナイバンナイバン!」

「勝ち越すよー!」

『4番 ファースト 三池』

『今度はN`Carsが勝ち越しのチャンスを迎えて4番バッター』

『ここはものにしたいですね…1巡目ホームラン以外では出塁も無かったN`Cars打線が、2巡目で漸くランナーを出せた状態で攻撃出来てますのでね』

「内野…」

―監督要りませんよ。態々前進守備を敷いたところで打球が飛んでこないんじゃ意味ありませんもん。取る必要無し。

―じゃあさっきと同じ組み立てで行くのね。

―そう。

―取る必要無いならいっか。

「あ、ごめん。何でも無いや」


パァン!


「ストライーク!」

『バッテリーまずはスライダーから入って来ました』

『ランナーを背負ってる場面ですが躊躇わず行きましたね』

『そしてランナー3塁にいますが内野は前進守備を敷きません』

『小宮山くんは足も速いですし三池くんも一発長打がありますから前進守備したところで…、ということでしょうね』


パァン!


「ストライクツー!」

『ここもスライダー、2球続けて空振り。テンポ速く追い込みました』

「最初の打席と何も変わっとらんやん」

「これ…もう悟られてるかもしれへんぞ…」


パァン!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振! ここもスライダーで来ましたバッテリー!』

―スライダー3発。これで十分ですね彼は。

―1打席目の時のスイング見てこれは得意じゃなさそうなスイングしてたもんな…。

「これもう悟られてますね、はい」

「せめて何か工夫せえ。呆気無さ過ぎやろ」

『5番 キャッチャー 関川』

『2アウト3塁となって打席には関川』

『ただまだまだ油断はできませんね…。1、2回戦は大当たりの関川、今日も第1打席で大きなセンターフライがありましたから』

―怖いの出て来たな…。でもこっちも作戦は立ててある。

―歩かせるとか?

―外野を下げる。どうせ飛ばさせるならそこに打たせれば…。

―ああそうね。

「外野バック!」

『2アウト3塁ですが…、最上ノーストップズ外野陣深めの守備を敷きました』

『2アウト3塁なら普通なら定位置にするのがセオリーなんですけどね…、彼らなりに作戦を立てた理由があるのかもしれません』


バン!


「ボール!」

『そしてバッテリーも慎重に入って来ます…初球はアウトコースのストレート』

―次からやな。

―黙って見送った…そりゃ見送るか。ボールだもんな。

―で次は…、えっ、そんな簡単に行って良いの!? 旨過ぎね?

―オレにはボールだから見送ったように見えたもん。

―オレには最初から初球は打つ気無しに見えたんだけどなー…。まいっか。どっちが真かは、これでわかるでしょう。


カキ―ン!


『2球目のスライダー捉えた―っ!! 打球は右中間へ大きな当たり!! 外野はバックしていたが!?』


ポ―ン!


『破ったあっ!』

「よっしゃ廻れ廻れ!」

「ナイスバッティング!!」

「浩介2つや2つ―!」

『小宮山ホームイン、バッターランナーも2塁へ―っ!!』

―うわ。読み違えた…。最初からストライクを誘ってたのか…。利季がサインに疑うわけだ。

―道理で変だと思ったよ。ボールじゃなくてもあの見送りは変だった。

『N`Cars勝ち越し! 先に次の1点を入れたのはN`Carsの5番・関川のバットからでした!』

『コンパクトなスイングで見事に逆方向に強烈な打球を飛ばしましたね…ナイスバッティングですよ』

「あのシフトやったらいっそのこと柵まで越してまえばええのに」

「まず1点やろ」

「大仕事はオレに任せた、ってか」

「まあそういうこと」

「なら飛ばしたるわ」

『6番 ピッチャー 片山』

『尚も2アウト2塁とチャンスが続いて打席には片山。先程はバックスクリーンへの豪快なホームランでした』

―またフェンスによじ登るの…?

『外野は深め…センターが2,3歩後ろに下がってフェンスにより近いところで守ろうという守備位置です』

『かなり深いですね』


バシィ!


「ボール!」

『ここも初球は外に外しました』

―あ、わかった。こりゃ初めからストライクでも初球は捨ててるわ。ミツこれどうやらチームの策略っぽいよ。

―完全にチームの作戦にしてやられたのかあの1点…。まあ切り替えてこ。さっきのパターンでいったら次が狙い目?

―…だろうね。

―そしたら…、ストライクからボールになる球で空振りを誘っとくか。球種は何でも良い。

―OK。


カキ―ン!


『変化球を捉えて、これもライトへ大きな当たり―!』

―誘ったのに!?

―しかも芯半分くらい外して、あそこまで…!?

「法田!」

『深めに下がっていたライト、フェンスに貼り付く!』

「なんだったらよじ登れ!」

『風が出ているが、入れ…、ばっ…、』


パン。


「キャーッチ!」

『ギリギリでキャッチ』

―すげえな。

―ふぅわああ…、助かった…。またリードミスるところだった。

『しかし冷や汗の出るような…、ライトフェンスギリギリの大きな打球。アウトにはなりましたが素晴らしい打球でした』

『逆方向にあそこまで持って行くんですからね…フェンスによじ登りこそしませんでしたがあそこまで行くと結構目を引きますね』

『3アウトチェンジ、ランナー2塁に残塁。しかしこの回、N`Carsは2アウト3塁から5番・関川のタイムリーツーベースヒットで2対1と勝ち越しに成功しました! N`Carsが1点をリードして4回の表を終えています』


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