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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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22/135

草野球カップ3回戦・最上ノーストップズ戦(その6)

「ごめん。雑なリードで変な球要求しちゃったな」

「いや。幾ら策略を立てても向こうには良いバッターが結構いるんだからそらもう仕方ないよ」

―ま、利季がそういうならそうなんだろうけど…。

「じゃオレ、バッターボックス行ってくるわ」

「あ、ああ…」


『試合は1対1の同点でこれから3回の裏を迎えます』

『3回の裏、最上ノーストップズの攻撃は―9番 ピッチャー 瀬見。ピッチャー 瀬見』

『最上ノーストップズはピッチャーの瀬見から。両チーム、この回で打順が2巡目に入ります』

「プレイ!」

―真っ直ぐ1択。こんでええ。

―ん。


パァン!


「ストライーク!」

『初球真っ直ぐから入ってきました片山・関川のN`Carsバッテリー』


パァン!


「ストライクツー!」

『2球続けて真っ直ぐを空振り。2ストライクと追い込んだのは片山』

―はーやいね。そりゃ良いピッチャーとか評価貰うわけだよ。でもそんなに良い投手なら…、


こっちもこっちなりに、応えるだけじゃん!!

ガキィ!


『バットの根元、詰まっているがセカンドとセンター追って…!?』


トン!


『その間に落ちた、ヒット!』

「良いぞ利季!!」

「ナイスバッティング!!」

『先制点を取りながらも2回まではノーヒットの最上ノーストップズ、この3回にエースの瀬見が自らのヒットで勝ち越しのチャンスを作りました!』

「まだ勝っとるからな」

「うん」

―次がポイントゲッター…。ま、ごちゃごちゃ考えんと打ち取るだけか。

―ゲッツー行かして貰うで。

『1番 レフト 向町』

『さあランナー有りで向町を迎えます』

『ポイントゲッターの前にランナーいますからね。絶好のタイミングで廻って来ましたね』

―ポイントゲッターに送るなんてこと無いやろ。

―チーム1の好打者やからな…。尚更ゲッツーか。

―さっきみたくストレートを根元に。

―それをミット1個分下げるのね…、わかった。

『1塁ランナーはピッチャーの瀬見ですからね』

『尚更ここは自由に打たせてくると思いますが』


キィン!


『ストレートを捉えて…、ライトに上がった!』

「永田ぁ!」

―うわ、もう少し角度抑えて打つんだった…。ゲッツー阻止の筈が反ってボールの下叩いちまった…。

『ただ上空風がある、大丈夫か…!?』


パン。


「キャーッチ!」

『捕って1アウト。1塁ランナーの瀬見はハーフウェイから1塁に戻ります』

「そうそう確実に返して!」

―よーしOK。

「ナイスライト!」

―あー良かった。

―1番安堵しとるのはアイツやろな。好打者の打球が飛んで来たんやから。

―相変わらず危なっかしいけどな。アイツなりに何とかやってる感じ。

『チームで最も多くの得点に絡んでいる好打者の向町ですが…、今日はエラーでの出塁があるものの2打席ヒットがありません』

『2番 サード 本城』

『1アウト1塁でキャプテン。ただここもバントの構え』

『2アウト2塁にしても勝ち越し点を、というところでしょうね』

―決まり。さっきと同じで。

―上げるか強め?

―どっちにしろやらせん。

―OK。


―!

カッ!


「ファールボール!」

『同じように初球の入りは内角へのストレート。簡単には送らせませんN`Carsのバッテリー』

『避けながらバットに当たってますね。ちょっと結果的には中途半端にファールにしてしまったか』

―言うてもそれでも懲りんなぁ。たださっきよりは見えてるか…。

―さっきはバット引く間も無く上げとったもんな。


カッ!


―とと…。

「ファールボール!」

『これもいまいちバットを引ききれずファールボール。バントの構えを見せていますが2球続けてインコースのストレートに中々バントをさせて貰えません』

「カウント2ストライク!」

『2ストライクと追い込んだのはN`Carsバッテリー』

「本城!」

―作戦変更だ。

―はい。

―流石に動いたか。2ストやもんな。

―で、続けんの?

―ストレート…、と言いたいところやけどさっきまでの様子を見る限りストレートは見えてるっぽいな。カーブで泳がせてゲッツー。

―わかった。

「涼、栄次!」

―ゲッツーシフト。

―OK。

―ん。

『2ストライクと追い込まれて流石にバントはしないか…、そしてN`Carsは二遊間が深めに下がりました』


キィン!


『バットを短く持って…、1・2塁間―の広いところ、抜けて行った!!』

「涼に返して涼に! バックセカン!!」

「ナイスバッティング!!」

『1塁ランナーの瀬見は2塁ストップ。キャプテン本城のライト前ヒットで1アウト1・2塁とチャンスを広げました、最上ノーストップズです!』

『決してパワーのある感じとは言い難いんですが…、広く空いたところをゴロでしぶとく抜いた、ナイスバッティングですね』

『3番 キャッチャー 満沢』

「球審、タイム願います」

「タイム!」

『1アウト1・2塁と最上ノーストップズ勝ち越しのチャンスで3番の満沢を迎えたところで…、ここでN`Carsはキャッチャーの関川がマウンドに行きます』


「さて…、ゲッツーで行く?」

「それに関連してちょっと…、まだ3回やけど昨夜(ゆうべ)に言ったあの球、使ったほうがええかな?」

「あの球…? …ああ、昨夜(ゆうべ)言って練習したヤツか」

「そう、それ」

「まあでも…、ほっとくと勝ち越される上にアイツが調子上げて来るもんな…」

―瀬見か。

―瀬見や。

「すぅー…、わかった。その代わり頭っから行ったらアカンから、その前に2つストライク取るで」

「わかった」

「皆ここ守るでー!」


『マウンドからの戻り際、関川がバックに声を掛けて戻ります』

『バッターは 満沢』

「プレイ!」

―まずはインコースにストレート。

―ん。


バシィ!


「ストライーク!」

『まずは低めのストレートから入って来ました』

『しかし良いコントロールですね。1回戦のピッチングの時もそうでしたがスピードだけで無くコントロールも良い印象です』

―次はアウトコースに、縦のカーブな。

了解(りょ)


―ん? 遠くね?

パァン。


「ストライクツー!」

『縦のカーブ、これもいっぱいのところに決まりました!』

『ストレートも変化球もこれだけギリギリのところに入れられるんですからね。際どいコースで勝負したい時には捕手(キャッチャー)にとってはリードしやすい投手ですよ』

―ボールかと思ったけどごく僅かに入ってるんだな…。重松球審がどうこうじゃなくて向こうのコントロールが良い。

―次で愈々これ行くで。

―ん。

『キャッチャーもう1度アウトコースだ!』


―格好の餌だ、曲がっ…!? え!?

パァン!


―え…!? 何今の!?

「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振! 最後はスライダーでも縦のカーブでもない球…』

『でしたね。曲がったことは確実ですが』

『何だったんでしょうか。3番の満沢から3球で空振り三振を奪って、2アウトランナー1・2塁と状況が変わります』

『4番 センター 東法田』

『依然チャンスで4番の東法田。満沢への3球目が何だったのか、おそらく東法田もネクストバッターズサークルから見ていたとは思いますが』

『あそこで狙い球を急遽変更したかもしれませんが…、果たしてバッテリー何から入ってくるでしょうかね』


パァン!


「ストライーク!」

『まずはアウトコースの低めいっぱいにストライク!』

―まあ、狙い球はスライダーかさっきのあの球やもんな…。1打席目打ち損じとるしあの球は見せたばっかやから2択のどっちか。

―随分コントロールが良いな。今のがギリッギリストライクか。

―2球目は…外の…、えっ、そっち?

―微妙に外せ。狙いを外すのと、万一狙いと合っても芯を外す。

―ん、あ、裏の裏をかくのね…。わかった。


―えっ、また外…?

キィン!


―ほほう!?

『1塁せ…』


「ファールボール!」

「危な…」

『僅かにラインの外。これで2ストライク』

「危ねぇよ」

―外をちょっと続け気味やったから内側行くか思たのに、アイツ外に構えよった。でも裏をかくだけやったら打たれたかも。

―まあ同じようなコース続けたから周りはそう思えるかもしれへんけど、同じ外でもミット微妙に外にずらしたからファールなったんや。これがさっきと完全に同じコースに構えとったら、和義の横突き抜かれて最悪2人還ってたで。

『2ストライクと追い込んだN`Carsバッテリー。3球目は…あっ、これも外に構える?』

『さっき痛打されかけたコースをもう1度行くんですね』


―来た、狙い…、!?

パァン!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振! 最後も外へ続けて三振!』

『わかりました』

『ん? 河瀬さん、何かわかったんですか?』

『横カーブです』

『横カーブ?』

『はい。満沢くんの時といい今の東法田くんといい、3球目に決めに行った球の軌道と回転が全く同じだったんですよ…。で、リリースも確かめたら横カーブだったと…』

『今テレビの画面ではVTRをご視聴頂いていますが…、あっ、そうですね。横カーブですね』

『全体的に縦方向に回転する縦のカーブに対して、横のカーブは横方向に回転しながら曲がる変化球なんですよ。何れも山なりの軌道なだけに読みにくかったのかもしれませんね』

『3回の裏終了。エースとキャプテンのヒット2本で1・2塁とチャンスと作りましたが、片山が見せた横カーブの前に3番4番と連続三振に倒れ勝ち越しはなりませんでした。1対1、同点のままこれから試合は中盤へと入って行きます』

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