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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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134/135

速やかに撤収

 そして、間髪入れずにスパイクシューズからアップシューズに履き替えて、グラウンド整備が始まった。小さいグラウンドで、しかも1時間限定とは言え貸して下さった以上は丁寧に均してから帰ろう―いつも通りのことではあるが、できるだけ速やかにここを出発しなければならない状況の今だからこそ、よりその気持ちが一層強かった。


 まず、トンボを前後に動かして、スパイクシューズで散々駆け回って荒れたグラウンドの土を均す。あくまで平らに均すことが目的なので、必要以上に土を削る、或いは押し出す様な格好で、トンボを前後に動かした範囲の両端に所謂「山」という、土が小さく盛り上がった部分ができない様に注意しながら、トンボを縦に動かしながら横への移動を繰り返す。


 トンボで綺麗に平らに均したら、次はブラシ。既に埋め込まれているピッチャーズプレートを中心にして、円を描く様に右方向にぐるりと回る。ブラシを自分の後ろにして柄を持って、引っ張る様に進むとやり易い。


 ブラシで描いた円が大きくなるに連れて、トンボの跡が徐々にブラシの跡に変わっていった。1辺が30mの小さいグラウンドは、トンボとブラシで平らに綺麗に均された。






 それと並行して、持って来た荷物や道具を乗って来たマイクロバスに積み込む作業も同時に行われていた。このほうが効率が良いということで、グラウンド整備を担当しないメンバーは整備しているメンバーの分も一緒に先に積み込む。


 …自然に役割分担ができた形だが、両者とも共通するのは丁寧に、且つ速やかに、ということだった。荷物は他のメンバーの分も載せるということから、できるだけわかり易い様、マイクロバスに座っていた位置に置く。






 荷物と道具の積み込みが先に完了して、少し経ってからグラウンド整備も完了、全員改めてグラウンド前に整列する。


「気を付け、礼! ありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」


 シートノック完了直後にも行ったが、今度のはこのグラウンドから完全に引き払うということで、改めて感謝の気持ちを込めて一礼。




 その後、駆け足で速やかにマイクロバスに向かう途中で…、


「…クールダウンどうしよう」

「このダッシュで良くね?」

「それじゃクールダウンになんない…、うーん…」


クールダウンをどうするか決めておらず、萩原に相談しても尚頭を悩ませる永田。


―いつも通りにするのだとすれば…、そっか。


 ある考えが浮かぶと、ダッシュのペースを少しだけ上げて、マイクロバス…、にはすぐに乗らず、運転手のもとへ。




「何やってんだろ?」

「良いから乗るぞ」

「お願いします」


 何をしているのか気にしつつも、N`Carsの他のメンバーは順次挨拶の上マイクロバスに乗り込む。


「何してたの?」

「後で教える」


 用件が済んだらしい永田も、戸川に続いて挨拶をしてからマイクロバスに乗り込む。徳山監督、マネージャーの井手も含めて全員乗ったのを確かめてから、マイクロバスの前方に座っていた永田は、後方を向いて立ち上がる。




「クールダウンなんだけど、ホテルの200m手前でバスを降りて、そこから荷物と道具を持って走って、着いたらあとは体操とストレッチを各自で。それで良い?」

「良い…けど…」

「いつもと変わっているな」

「だって時間ギリギリまで練習したから…クールダウンやるとしたらこれしか方法ないわけよ…」

「あー成る程ね…、オレは良いよ」

「オレも」

「オレも」


 次々と永田の提案に賛同して、全員一致でその方法で決まった。


「では監督、それでお願いします」

「200m手前な。では、よろしくお願いします」

「わかりました。安全運転で参ります」


 シフトレバーをニュートラルから1速に入れて、半クラッチでゆっくりと発進したマイクロバスが、ゆっくりとスロープを下る。嘗ての校門だった2本の門柱の間を通過する時、




「ありがとうございました」

「ありがとうございました」




ここを貸してくださった区役所職員の方に、バスの窓越しに全員が次々と挨拶する。


マイクロバスは一時停止してから左右確認した後右へ曲がって、元来た道を走ってホテルへ戻る。マイクロバスが通過したすぐ後、グラウンドはその区役所職員によって再び門柱の間にバリケードが設置されて、封鎖された。






「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


 その後、彼らは本当にホテルの200m手前でマイクロバスを降りて、荷物と道具を持ってホテルへ走って戻った。()()()格好でのクールダウンは誰も経験が無いのだが、やると決めた以上は最後まで遂行した。




 …荷物と道具を持って野球選手がホテルのロビーに次々と駆け込む姿に、一瞬衆目が集まったのは言うまでも無い。


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