表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Baseball Novel  作者: N'Cars


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/136

練習決定…!?

 組み合わせ抽選会が全て終わって、抽選会場の出入り口近くのロータリーでタクシーを待つ徳山監督と永田。


 彼ら以外にもタクシーを待っている人が大勢いたので、少々待ち時間が長かった。その間、永田はガラパゴス携帯を開いてメールやら何やらが来ていないかチェックする。と、




―…LINE?


LINEから通知が来ている様だった。何のことか、取り敢えずLINEの画面を開くと、




―…えっ?

「監督」

永田はすかさず徳山監督にLINEの画面を見せる。そこには関川から、




『永田

 皆が練習したい言うてるで』




と送られて来た。


「え、練習?」

「はい」

「いや…、練習したいって言ってんのは良いんだけんどよ、どこでやるのや? それに組み合わせ抽選会の関係もあって今日までOFFで、練習するのは明日がらって皆さ予定伝えで無がったが?」

「…その筈なんですが…」


 しかしそうこうしているうちに自分たちが予約していたタクシーが来た。それを見るや永田は咄嗟に、




『皆今どこいんの?』

と、関川にLINEを返してからガラパゴス携帯を閉じる。




 タクシーが2人のすぐ横に停まると、左後方のドアが自動で開く。来た時と同様、徳山監督が後部座席の右側、永田がその左側に来る様、徳山監督から先に乗車する。


 左後方のドアが閉まってから、徳山監督はタクシーの運転手さんに行き先を伝えると、後部座席に2人を乗せたタクシーは前方のタクシーに続いてロータリーから一般道へ抜けるように発車した。






 途中の交差点で、タクシーは赤信号に従い前方の車に続いて停車する。信号待ちの間、永田はガラパゴス携帯を再び開いて、LINEの画面を見る。


 先程のテキストに既読が付いている。十字キーを画面の下方が見える様に少しずつ操作すると…、




「あ…、監督、皆ホテルのロビーにいるらしいです」

「関川がらが?」

永田は一つ頷くと、

「…、ホテルのロビーさ来でるってことは本気だな」


 徳山監督の発言を聞いた永田は、途中何度か歩行者用信号機の様子を窺いつつ関川に返信するか迷ったが、


「皆さそこで待っでろっつっとけ」


 ちらちらと縦向き2灯の信号機の様子を気にする永田を見て…、いや、見かねたのか、徳山監督の一押しで、永田はタクシーの絵文字を打った後、


『←なう。監督が皆はそこで待っとけと』


と、青信号に変わるまでのギリギリのタイミングで文字を打ち、送信した。


 その直後に信号が青に変わって、タクシーは前方の車に続いて再び発車した。


「ふぅ~…」


ギリギリで文字を打って、無事送信した安堵から永田は一息吐くと、ノールック且つ片手でガラパゴス携帯を閉じた。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






「皆はそこで待っときや。じき着くで」

「え、帰ってる途中?」

「永田が監督の言伝(ことづて)でこれ伝えて来た。すると同じタクシーの中なんやろな…」

「…あっ」


 関川は永田から送られて来たLINEを、一番最初に質問して来た都筑に見せる。


「…抽選会に行ったのこの2人だけだから、同じタクシーのほうが良いか…」

「タクシーが違うなら交通費も倍掛かるから…、あっ」




 都筑と関川の会話に萩原が加わったと同時に、萩原の視界に自動ドア越しにタクシーが1台停まるのが映る。


 横付けされたタクシーの左後方のドアから、誰か1人降りる。


 ホテルのロビーの自動ドアが開いて、降りた人が入って来る。




「永田だ」

「抽選会お疲れ様ー」

「おー…、ふぅ~…」


 タクシーから先に永田が降りて、プログラムを持ってロビーに入って来た。


「これ1人1部。皆持ってって」


 永田が目の前にあったベンチの真ん中付近にプログラムを全冊置くと、メンバーは次々と1人1部ずつプログラムを手に取った。






 疲れた…、というかそこに何か複雑な思いをしている表情の永田。集団から外れた彼に、関川が他のメンバーの様子を窺いながらそっと右手を永田の右肩に置く。




「ええ籤引いたな」

「んえ? …寧ろ拙い籤引いて申し訳無いって思ってんだけど」

「いやいや。こういう相手こそ全力で挑めるチャンスやで。どっちが勝って来ても全国大会ベスト4経験チームやろ?」

「…ま、そりゃそうだけど…」

「そうと決まりゃ、尚更真っ向から挑むまでやでー」

―何で関川とか片山は格上とか強敵とかが相手でも前向きなんだろう…。監督来た。





「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 後からホテルのロビーに入って来た徳山監督に、メンバーが次々と挨拶する。


「皆プログラムは受け取ったな?」

「はい」


 関川が1歩だけ徳山監督のほうに歩み寄る。

「監督、実は」

「ああ、練習のことが? 永田がら聞いたぞ」

「えっ」


―あ、そう言えば永田はLINEで監督と一緒に居る言うてたな…。




「本気で練習したい気持ちは十分に伝わったけんど、グラウンド取れるがだな…。練習は明日がらっつってあるからグラウンドも明日がらの分しか取ってないぞ?」



 やはり感情任せに決めたこともあって、必要とすべきスペースはすぐには確保することは難しそうだ。しかし、



「取れたら取れたで、取れなかったら取れなかったで考えて練習します」

「やれることやるので」

―その場合ロードワークだけもあり得るな…。


小宮山と高峰が続けて意見を述べる。高峰は練習メニューの制限を覚悟しつつ、首に掛けていたタオルを取ってグローブの上に置く。



 その2人を含めたメンバー全員の鋭い目線と顔付きに、永田は思わず少しだが気圧された。




「…監督、皆本気ですよ。練習しないほうが怖いです」

 本気というか貪欲というか…、何れにせよ、メンバーからの強い気持ちがこちらに向かって来た永田。

 放っといたら何するかわからないという緊張(プレッシャー)も同時に覚えてしまったのであろう、徳山監督に思わずこう発言した。




「…わがった。ただ、どこも取れないかもしれないぞ。それでも良いが?」

「「「はい!!」」」

「…交渉しで来る」


 全員一致の返事で、やることは決まった。徳山監督は借りられるグラウンドがあるかどうか交渉すべく、電話を掛けに行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ