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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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13/167

片付け・球場移動

「片付けとグラウンド整備!」

「はい!」

「てきぱきやろう! 12時半には出るから」

―まあもう既に始めてた人いるんすけどね。

 永田の号令で、全員が一斉に使用した道具の片付けとグラウンドの整備に取り掛かる。ほぼ時間通りに練習を終わらせて、残った約30分で道具の片付けとグラウンドの整備を進める。グラウンド整備を行う時は、必ずスパイクシューズからアップシューズに履き替えてから行う。

「監督」

「ん?」

「道具と荷物どうしますか?」

「この後そのまま出るがら、グラウンドの入口さ全部並べとけ」

「はい」

「道具はグラウンドの入口に並べて!」

 徳山監督に確認した永田は、自分たちが持って来た道具と荷物をグラウンドの入口に並べるよう指示する。自らもボールケースを持ってグラウンドの入口に置いた。

「そう、どんどんここいらに…横1列に」

 後から道具や荷物を持って来たメンバーにも、この近くに横1列に並べるよう指示する。一通り道具と荷物が並べ終わったのを見て、既にグラウンド整備を進めているメンバーに永田も加わろうとした。

―あ、でも…。

既にグラウンド整備は人手が十分足りていたようなのと、もう1つやるべきことを思い出した永田は、ベンチのほうに引き返した。

「どうした?」

「ちょっと…」

「やってぐなが?」

「使ったからには」

 途中で自分のバッグから雑巾を取り出した永田は、戻るなりベンチを拭き始めた。いつも試合後に必ず行っていることだが、このグラウンドは借りているということもあり、行うと決めた。

「いつも以上に丁寧だな」

「借りてますから」

 ベンチの座面は勿論、渕の部分や支えている脚の部分まで丁寧に拭く。全てのベンチを拭き終わると、今度はスコアラーが使う机を拭き始めた。

「そこも拭くのが」

「ベンチのうちですから」

1人せっせと机を拭く永田を見て、マネージャーの井手は徳山監督にこう言った。

「中途半端にはできないんでしょうね。1回やりだしたら止まらないタイプ」

「そうだな」

「やるって決めたら限界までやりそうなんですよ。そんでやって駄目なら仕方無いけど、中途半端に投げることのほうが嫌いそう」

「うん…だげんどそのバッグ良いのが? ずっと持ったままだぞ」

「あ。あでも、私はこのほうが…」

「そうか。皆道具と荷物あっちさ置いてたったがら」

「これから書くところが砂とかで汚れるの嫌なんで」

 井手が持っていたのは、スコアブックや筆記用具等が入ったバッグ。チャックとファスナーで確り密閉してあるとは言え、スコアは綺麗な状態で書きたいものだ。

 時折グラウンド整備の様子を窺いながらベンチの清掃を進めていた永田は、今度はスコアラーが使う椅子を拭き始めた。机・椅子ともに以前学校で使われていた物のようだが、これが中々使い勝手が良い。

 座面と背面を拭き終わって、椅子の脚を拭き始めた永田は、もう1度グラウンドを見遣る。…と、グラウンド整備が粗方完了しかかっていたようだった。

―え、やべ。

 アップテンポで椅子の脚を全て拭き終えて、グラウンド整備が外野の端の部分まで終わったのを確認した永田は、次の指示を出す。

「バック!」

「はい!」

「グラウンド整備の道具、並べ終わったらこっちに横1列に並んで!」

 グラウンド整備を終えたメンバーは、それに使ったトンボやブラシをプレハブ物置に元あった通りに丁寧に並べる。ただそのまま1人ずつ並べると効率が悪いので、1人がプレハブ物置の前に立って、もう1人がその裏側に立ってそれぞれトンボとブラシを受け取って綺麗に並べる。他のメンバーはトンボとブラシをそれぞれ渡した後、道具や荷物が横1列に並べてある箇所のすぐ前にこれまた横1列に並ぶ。勿論この間もスピーディーにてきぱきと行う。

 永田がトンボとブラシがきちんと並べて置いてあるか確認した後、駆け足で列の先頭に戻る。

「よし…、気を付け、礼! ありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」

 約2時間に渡り貸して頂いたグラウンドに、全員で一礼。

「はい、道具と荷物持ったら速やかにバス乗るよー!」

 永田の号令で、ナインは自分たちの後ろに並べてある道具と荷物を持って、グラウンドからバスに向かう。

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

 グラウンドを出る際にも各自グラウンドに脱帽の上挨拶、一礼。すぐ後に、

「お願いします!」

「お願いします!」

バスの運転手と市役所の職員にも同じように各自脱帽の上挨拶、一礼。そのまま道具をバスのトランクルームに積み込み始めた。

 2人は談笑をしていたようだが、N`Carsナインが道具を積み込み始めたのを見て運転席に戻った。マイクロバスの鍵は暫く掛かっていたが、12時を過ぎたあたりでいつでも出られるよう開けていた。

「道具積み込んだ人から自分の荷物持ってどんどん乗ってて」

「お願いします!」

「お願いします!」

永田の指示よりも前に、何人かは道具を積み終えるとマイクロバスの乗降口の扉が開くなり自分の荷物を持って挨拶をしてどんどん乗り始めていた。その途中でマイクロバスのエンジンがかかり、少し遅れてAMラジオの音声が聴こえ始める。


『現在3対1、今日の北前球場第2試合は酒田ブルティモアズが最上オールラインズを2点リードしたままこれから最終回、7回表へと入っていきます』


「3対…、1? あれ?」

「あれ? 意外にロースコア?」

―てか荒瀬さんは?


『7回表、2点を追う最上オールラインズは今日も好調の荒瀬を打てるか…。打っては今日2本のタイムリーヒットで全3打点、投げては被安打5、失点は先程6回表に取られた1点だけ。この大会ここまで2試合で13イニングを投げて被安打は7、失点は2と好調です。それだけに中々容易では無いと思いますが』

『はい、ただ6回に打てるような兆しも見えているので、そんなに怯むことは無いと思います』


―なんだ。良かったいつも通りで。

 他のメンバーが第1試合の上山グローアップズに続き、第2試合も最上オールラインズが何れも全国大会出場経験のある格上のチームを相手に善戦している試合展開に驚く中、松浪だけは高校時代までの1年上の先輩の活躍を気にしていた。

 全員が道具をトランクルームに積み込んでそれぞれ自分の荷物を持ってマイクロバスに乗ったのを見て、永田も道具を積み込んでトランクルームを確りと閉める。トランクルームのノブを引っ張って確り閉まっていることを確認すると、自分の荷物を持って挨拶をしてマイクロバスに乗った。その後徳山監督と井手マネージャーもマイクロバスに乗ったのを見て、永田は点呼を始めた。

「…17、17? オレら足して20…、あれ20?」

「オレらこっからだから」

「あ、はい」

―そういうことね。

 今朝のグラウンド集合まで別行動だった萩原、都筑、松浪の3人は、先程の練習から他の17人と合流して行動していたので、マイクロバスにもここから一緒に乗り込む。

「20人全員います」

「わがった。では、よろしくお願いします」

「はい、では安全運転で参りますのでよろしくお願いします」

 点呼を終えた永田が自分の席に座り、マイクロバスの運転手がシフトレバーをニュートラルから1速に入れ、サイドブレーキのレバーを下ろしてからクラッチペダルを緩めつつアクセルペダルを少しずつ踏み込み、半クラッチで少し進むと、右へ180度Uターンすると、そのまま出口の方向に進んだ。マイクロバスが少し発進した時点で、市役所の職員はマイクロバスが入ってくる時に入口に設置した伸縮できるロープが付いた2個一組のカラーコーン2組と、「貸切中」と大きく、その下に「10:00~12:30」と小さく書かれた立て看板を速やかに片付けて、市役所の車のトランクルームに閉まった。その後、職員は先程まで立っていた位置に戻って、N`Carsのメンバーが乗ったマイクロバスを見送る。

「ありがとうございました」

「ありがとうございました。またいつでもお気軽にお問い合わせください」

「はい、その時はよろしくお願いします」

 マイクロバスの運転手とS市役所の職員が挨拶を交わした後、これに続くようにN`Carsのメンバーも各自脱帽の上挨拶、一礼した。

 マイクロバスの運転手は運転席側の窓を閉めた後、右ウインカーを出してグラウンドに接している道路を右に曲がり、北前球場へと向かった。後れてS市役所の職員も、マイクロバスを確り見送ってから市役所の車に乗って右に曲がり、こちらはS市役所へと戻った。


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