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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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126/137

名の知れた強豪揃い

『Bブロックのチームの主将の皆様、ありがとうございました。席にお戻りください』




 Bブロックのチームの主将47人が、一斉にパイプ椅子から立ち上がった。




―あ~~~…。やっと無限時間が終わった…。


 両腕を斜め後方下に伸ばして、背筋をやや後ろに反らせて背伸びをしてから、席に戻ろうと歩み始めた。と、




「オレら3人、違うとこに入りましたけど、お互い頑張りましょ」

「皆全然違うとこやねんけど、お互い勝ち進みましょ」


深川と東山が、永田に声を掛けた。最後まで気持ちの面で支えてくださるのか…。すると2人は右手でグーを作って永田の前に差し出した。これに気付いた永田も、右手でグーを作って2人の前に差し出して、移動中ではあるが3人でグータッチを交わす。


 そしてお互い会釈を交わしながら、それぞれの席へと戻っていった。






―あ、しまった…。あの2人に名前聞くの忘れた…。あっちゃ~。プログラムで確かめるか…。






「お疲れ」

「お疲れ様です」

―顔と声が疲れでるな。そりゃそうか、あんだけ緊張してだんだば…。


 座って永田を出迎えた徳山監督の横、つまり元いた席に、永田は徳山監督に挨拶をしてから座る。しかしその表情と声は、徳山監督が思っている通り疲れていた。




 プログラムを1部取って、パラパラと頁を(めく)る永田に、時間を置いてから徳山監督が訊ねる。




「…疲れた…、よな?」

「…はい」

―やはり。これは愚問だったか…。




「…しかし、どうだ? この並び見て」

「え?」


 また時間を置いてから訊いて来た徳山監督に、永田が思わずパラパラと捲っていたプログラムから目線を上げるが、




「あれ…」

既にBブロックのトーナメント表が書かれたホワイトボードは引き上げられて、新たにCの文字とトーナメント表が書かれたホワイトボードが設置されていた。そしてパイプ椅子にも、既にCブロックのチームの主将47人全員が着席している。


 しかし対戦相手は覚えている。山梨県代表・甲府チェッカーズ 対 島根県代表・江津アラフォーズの勝者だ。




「…そりゃ強いと思いますよ。皆凄いオーラしてたんで…」






『続きましてCブロックの抽選を行います。予備抽選の1番を引いたチームの主将から順次抽選籤を引いてください。ではまず群馬県代表・太田(おおた)コーポレーツの主将はこちらで籤を引いてください』




―平山はどこだ…。あっ、あそこか…? ということは予備抽選21番…。真ん中に近いな…。


 目線を上に上げた(つい)でに、山形スタイリーズの平山を探していた。平山は客席から見て右から3列目、手前から4番目の椅子に座っていた。座席の位置も予備抽選の番号も、永田の思っている通り真ん中に近い。






―てか、オレあの2人調べてたんじゃん…。何手ぇ止まってんだ、三重、三重と…。




 我に返って、再びプログラムで調べる永田。プログラムは都道府県別にチームの頁が纏められているので、まず三重県代表が載っている頁を探す。次にそこから、四日市インダストリアルズの頁を見つける。




―あった…。深川 信一さんっていうのか…。てか背番号1…!? エースピッチャーで主将(キャプテン)って凄いな…。




 主将登録されている選手の背番号には◎が、副主将(キャプテン)で登録されている選手の背番号には〇がそれぞれ表記されているのですぐにわかった。


 少し頁を飛ばして、次は京都府代表が載っている頁から、京都オールドシティズの頁を見つける。




―あった…。東山 師道(のりと)…。背番号2、捕手(キャッチャー)登録…。てか…、全員にルビがあるからわかったけど、知らない人がルビ無しで一発で見たら、多分「しどう」とかと読み間違えられそうだな…。大丈夫かな…。


 その点はルビがあるだけマシではある。




八戸(はちのへ)エイトエリアズ、30番です』

 永田がプログラムで2人を探している間、組み合わせ抽選は進んでいた。予備抽選9番、青森県代表・八戸エイトエリアズの湊主将(みなとキャプテン)が、30番籤を引いた。

―あれ、30番籤って…。


『八戸エイトエリアズ、大会第28日目第3試合三塁側』




 やはり、1回戦()()の籤だった。N`Cars同様、八戸エイトエリアズは2回戦からの登場となった。大会第28日目第3試合で、1回戦、大会第11日目第3試合、既にそこで試合をすることが決まっている群馬県代表・太田コーポレーツともう1チームの勝者と対戦する。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






 また別の部屋では、三池と高峰がテレビを視て…、いや、聴きながら、三池はゲームを、高峰はタオルを使ってシャドーピッチングをしていた。




「なあ京太、対戦相手決まったんだから、テレビ消して良くね? 通信プレイやろうぜ」

「嫌だ。対戦相手が決まったからこそ、こうしてやれる練習(こと)やってんのに」

「あっ、アイテム取れた」

―呑気なヤツだな。オレなんかランナー1・2塁で何をどこに投げるかの練習してんのに。


 三池は再びポータブルゲームに目線を戻して、高峰は頭の中でシミュレーションが決まったら再びタオルをひとスイング。






『続いて予備抽選19番、秋田県代表・秋田(あきた)ライスフィールズの主将はこちらで籤を引いてください』




 組み合わせ抽選は進み、ステージ上では秋田ライスフィールズの佐藤主将(さとうキャプテン)が籤を引いていた。




『秋田ライスフィールズ、22番です』

『秋田ライスフィールズ、大会第11日目第1試合一塁側』

「おお―――っ」


 相も変わらずそれぞれゲームとシャドーピッチングに明け暮れる2人。だが、




「やったじゃん」

「アイツら楽なとこと当たったな」

「先を見据えた戦いができそうだな。まだどのチームが入るか決まってないけど」




これらの言葉に、高峰がセットポジションからプレートを外す様に左足を開き、両腕の構えも解いた。






―アイツら…。さっきのN`Cars(ウチ)の時といい、今の秋田ライスフィールズさんの時といい…、東北地方のチームはあなたたち東北以外の皆様からしたら所詮は調整相手に過ぎないってことですか。






 高峰は軽く舌打ちをした後、テレビのリモコンを取って、リモコンだけをテレビ本体に向けて、電源を消した。






 というのも、佐藤が引いた籤の隣には、既に予備抽選5番、優勝候補でもある石川県代表・小松(こまつ)ビッグスターズが入っていた。この両者は大会第11日目第1試合で対戦するが、6県全てで優勝経験が無い東北地方のチームと、全国大会の優勝候補にも挙がっているチーム。どうしたって評判に差は出がちである。




 しかし、だからといって試合をする前に勝敗を決め付けたり、相手を舐める様な言動はあってはならない。況して集団でその様な行為を取る等、以ての外である。




 N`Carsの時も秋田ライスフィールズの時も、何れもそれらの声は複数、全て客席から聴こえて来たが、それらの声もテレビの音声が他の声や音に混じりながらも拾ってしまい、公共の場に放たれる結果となってしまったのである。とは言え聴こえて来た以上は、もう取り消せないのである。




 萩原と小宮山は、その憂さ晴らしも兼ねて都筑と梶原のキャッチボールの誘いに乗っかった。そしてこの人も…。






「和義、シャドーピッチングだけじゃ飽き足らんから投げ込むわ」

「え、視てたんじゃないの…?」

「あんな番組視てるより投げ込むほうがスッとするわ。浩介でも祐希でも良い、誰か受けてくれ」




 高峰はシャドーピッチングで使っていたタオルを首にかけて、グローブとボールを準備してから、タオルをもう1度手に取って、外へと向かった。






再び抽選会場






 宿舎で一連の行動が起きていることを知らない徳山監督と永田。2人は客席でステージ上にて着々と進む組み合わせ抽選を見ていた。




鎌倉(かまくら)シュラインズ、45番です』

『鎌倉シュラインズ、大会第29日目第4試合三塁側』




 予備抽選20番の神奈川県代表・鎌倉シュラインズが、45番籤を引いた。45番籤は、日程上各ブロックでそれぞれ最も遅く初戦を迎える籤である。つまり鎌倉シュラインズは、Cブロック47チームの中では一番最後に初戦を迎えることとなる。2回戦からの登場で、1回戦、大会第12日目第4試合の勝者を待つ籤でもある。




『続いて予備抽選21番、山形県代表・山形スタイリーズの主将はこちらで籤を引いてください』




 愈々平山の番だ。果たしてどこの籤を引くのか…。




『山形スタイリーズ、44番です』

『山形スタイリーズ、大会第12日目第4試合三塁側』




 その大会第12日目第4試合の、三塁側を引いた。勝ち上がれば先程の鎌倉シュラインズと対戦するが、隣の43番、一塁側に入るチームがまだ決まっていない。


―意外とあるあるのパターンで入ったな山形スタイリーズさん。前引いたチームの横とかすぐ近くを引くっていう…。




 永田はそう思うと、もう1度プログラムを手に取って、パラパラと頁を捲り始めた。特に探したいチームや選手がいるわけでは無いが、まだ籤を引いていないCブロックのチームで、対戦相手はどこかをぼや~ッとながら考えていた。




気比(けひ)パインウッズ、43番です』

『気比パインウッズ、大会第12日目第4試合一塁側』

―え?




 予備抽選24番、福井県代表・気比パインウッズが、43番を引いた。山形スタイリーズの対戦相手は気比パインウッズに、そして鎌倉シュラインズの対戦はこの両チームのどちらかとなった。が…。






―優勝経験チームじゃん…。






 永田は表情が変わって、青冷めていた。


 気比パインウッズ。福井県及び北陸地方3県に、初めて優勝旗を齎したチーム。そこに山形スタイリーズが対戦する。自分なら今の様に青冷めていそうではある。




 しかし、肝心なのは平山である。彼がどう思っているのか…。


 永田は客席から平山の様子を窺うが…、特に変わった様子は見られない。


―う~ん、わからんな…。


敢えて探らないでおいた。




宮城(みやぎ)ドルトムント、6番です』

『宮城ドルトムント、大会第26日目第2試合三塁側』




 予備抽選29番、宮城ドルトムントの遠藤主将(えんどうキャプテン)が、6番を引いた。大会第9日目第2試合の勝者を待つカードになるが、既にそのカードには、予備抽選25番、東京都代表・町田(まちだ)タウンフィールズが入っている。




―それでいくとこのカードはどうなんだ…?


 町田タウンフィールズ、宮城ドルトムント、ともに全国大会には何度も出場しては実績を上げ続けて来たチーム。町田タウンフィールズは優勝、宮城ドルトムントも準優勝の経験がそれぞれあることから、頂点(テッペン)を取れるだけの実力は両チームともある。町田タウンフィールズの対戦相手がどこかまだ決まっていないが、仮に町田タウンフィールズが勝ち上がった場合はこの両者のカードが実現するが、果たして心情的にどうなのか…。




―…名前も実績もある両チームだから、簡単には動じないか…。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






 キャッチボール等の練習に憂さ晴らしも兼ねて行くメンバーもいる中、片山と関川は引き続きテレビを視ていた。




『続いて予備抽選31番、長崎県代表・バンカラボーイズの主将はこちらで籤を引いてください』




―ん?


 テレビの音声が、会場の客席の音声をまたも拾う。それに片山がいち早く気付く。




「あれ、バンカラボーイズって…」

「雨男がいるって噂だよな…」

「また今大会も雨で翻弄すんのかな」




―そういう噂せんほうがええけどな…。

「ここにきてまた曲者か。特にCブロックは全体的に名前も実力も全国に通ってる、そういう意味で堅実な強豪揃いの印象やったけど…」






 片山が考えていた横に、関川が意見を言って来た。でも確かに関川の言う通り、Cブロックは先程の町田タウンフィールズといい、宮城ドルトムントといい、そして山形スタイリーズといい、名前も実力も全国に通っている、何なら上位進出も頻繁に経験している様なチームばかりで、堅実に勝てる強豪ばかりが揃ったブロックだ。


 しかしその中にあって、バンカラボーイズは全国でも噂になる程の雨男がいて、その人の影響か度々雨で翻弄しているらしいから、確かに曲者ではある。






 ただ…、片山の思っていることも尤もで、そういう話題や噂はしないほうがそのチームの為でもある。そういうのより、純粋に野球と野球で勝負すべきである。況して自分たちの目の前に話題や噂の対象となり得る人物がいるというのに、そういうのをやられては本人が傷付くかもしれない上、何より失礼である。





―バンカラボーイズやけん言うて全員が全員雨男やなか。雨男は()()()たい。それにオレは投手(ピッチャー)やなか、遊撃手(ショート)ばい。




 現に籤を引いているバンカラボーイズの金剛主将(こんごうキャプテン)も、そう思っていた。どうやら雨男=ピッチャーということまでは広まっていたが、そのピッチャー=金剛と勘違いしている人も数人いた模様。




『バンカラボーイズ、10番です』

『バンカラボーイズ、大会第10日目第1試合一塁側』




 立ち込める噂に呆れた感情を見せつつ、スタンドマイクでコールした。対戦相手は既に決まっていて、1回戦は鳥取県代表・鳥取(とっとり)キャッスルズと、勝ち上がれば2回戦で愛知県代表・名古屋(なごや)キャッスルズと対戦する。






再び抽選会場






 ある種のほとぼりがすぐに冷めて、元に戻っていた。




一関(いちのせき)フォーツ、40番です』

『一関フォーツ、大会第12日目第3試合一塁側』




 予備抽選34番、岩手県代表・一関フォーツが、40番を引いた。大会第12日目第3試合、つまり気比パインウッズ 対 山形スタイリーズの1個前に試合をする。対戦相手は既に決まっていて、宮崎県代表・都城(みやこのじょう)キャピタルズだ。




伊達(だて)センターズ、7番です』

『伊達センターズ、大会第9日目第3試合一塁側』




 予備抽選41番、福島県代表・伊達センターズが、7番を引いた。大会第9日目第3試合で、対戦相手はまだ決まっていないが、仮に勝ち上がれば大会第26日目第3試合で兵庫県代表・加古川(かこがわ)オールダーズと対戦するが…。




菊川(きくがわ)ダンデライオンズ、8番です』

『菊川ダンデライオンズ、大会第9日目第3試合三塁側』




 これまた優勝経験のあるチームが、横に並んだ。静岡県代表・菊川ダンデライオンズである。Cブロックは特に名前も実力もある、上位進出経験が多い強豪が揃ったブロックとは言え、山形スタイリーズ共々、いきなりハードブロックとなってしまった…。




 だがバンカラボーイズ以降、ある特定の噂や話題が持ち上がるようなことは起きなかった。Cブロックのトリである予備抽選47番、富山県代表・新湊(しんみなと)レアズの順番が来ても、いちいち噂はしていなかった。その新湊レアズは予備抽選も47番だが、残っている籤も47番だ。




 各ブロックの46番籤と47番籤を引いたカードから2回戦に入るが、この2回戦が初戦となるチーム同士の合計4試合を終えてから、1回戦の勝者陣と、2回戦で初戦を迎えるチームの試合が組まれる。その関係で、各チームの初戦の試合順は、




1回戦 対 1回戦

    ↓

2回戦 対 2回戦

    ↓

1回戦の勝者陣 対 2回戦




で、登場するチームの順番ということになる。


 それで言うと酒田ブルティモアズと山形スタイリーズは何れも1番上の組み合わせに充たる籤を引いたので早い日程で初戦を迎える。N`Carsは一番下、それも1回戦の結果を待つことになるので、日程が遅く組まれている。




『新湊レアズ、47番です』

『新湊レアズ、大会第17日目第3試合三塁側』




 もう残っている籤がこれしか無い上、既に対戦相手も茨城県代表・龍ヶ崎(りゅうがさき)ドラゴンズと決まっている。ただそれでもその籤を確り引いて、無事、Cブロック47チームの抽選が完了した。


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