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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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125/137

ホンチャン

『Aブロックのチームの主将の皆様、ありがとうございました。席にお戻りください』




 Aブロックのチームの主将47人が、一斉にパイプ椅子から立ち上がってそれぞれ席へ戻る。その間、ステージ上ではAと書かれたホワイトボードが係員に引き上げられて、新たにBの文字とトーナメント表が書かれたホワイトボードが設置された。籤は全て再び抽選箱に戻してある。




『続いてBブロックのチームの主将は壇上のパイプ椅子に、予備抽選の番号順にこちらの左側の一番前の列からお掛けください』




―来てしまった…。何時まで続くかわからん無限時間が…。




 緊張状態の永田にとっては、1分は60秒だが、それ以上に長い様に思えた。緊張で重い体をどうにか立ち上がらせて、予備抽選の籤を握りしめたままステージに歩いて向かった。




 重い足をどうにか進めて梯子段を登って47脚もあるパイプ椅子の前に来た永田。偶然係員と目が合う。


「予備抽選何番ですか?」

「36番です」

「では、あちらの奥から4番目の椅子にお掛けください」




 奥から4番目…、殆ど真ん中である。横に8脚並ぶから、横列の4番目と5番目は必然的に真ん中にはなるが…。


 永田は今いる位置から見て右から縦5列目の奥から4番目の椅子に掛けた。しかしそこは、強豪という強豪に囲まれる席となった。


 端のほうの椅子に座りたかったなど、今更言える状況でも無かった。






「若しかして、緊張してはります?」

「はっ!?」


 左から聴こえて来た声に、緊張状態の永田は思わず我に返った様なアクションを取った。続けて、


「あんま気負わんでええですよ。どこ引いても皆一緒ですから」

「えっ…」


今度は右から声が聴こえた。両者ともリラックスできているのだろうか。緊張状態の自分にアドバイスを送れるって…。




 お互い自己紹介はまだしていないが、声を掛けて来た2人は、まず左側が京都府代表・京都(きょうと)オールドシティズの東山主将(ひがしやまキャプテン)。次に右側が、三重県代表・四日市(よっかいち)インダストリアルズの深川主将(ふかがわキャプテン)。2人とも、各府県大会ではそれぞれ主力選手として活躍した。




 しかし、この2人からアドバイスを頂いただけでは、とても永田はリラックスし切れなかった。自分を囲む様に座った他の6チームの主将たちも、かなりオーラが強く対処しきれなかったのである。その6チームというのが、まず前列から順に、






左側、予備抽選27番、栃木県代表・葛生(くずう)ジャンパーズ。全国大会では未勝利だが栃木県内や関東地区では強いと評されているチーム。

真ん中、予備抽選28番、徳島県代表・徳島(とくしま)ジャッカルズ。全国大会優勝経験チーム。

右側、予備抽選29番、山口県代表・下関(しものせき)グローブフィッシャーズ。全国大会優勝経験チーム。




続いて後列。




左側、予備抽選43番、青森県代表・青森(あおもり)フォレスト。全国大会最高成績ベスト8。

真ん中、予備抽選44番、東京都代表・八王子(はちおうじ)エイトプリンセス。全国大会初出場だが東京都内ではそこそこ強いと評されているチーム。

右側、予備抽選45番、大分県代表・日田(ひた)マネージメンツ。全国大会最高成績ベスト4。






 そして、自分に声を掛けてくださった京都オールドシティズと四日市インダストリアルズが、ともに全国大会優勝経験チーム。この8人に囲まれただけでも緊張するのに、その8チームを含めた46チームのうちの何れかと試合をするとなると…、緊張は解れ切れなかった。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






 片山と関川とは別の部屋で、萩原と小宮山も組み合わせ抽選会の様子をテレビで視聴していた。


「永田どこ?」

「いた…、けど後ろのほうだから組み合わせ抽選の順番は後ろのほうだな」




『続きましてBブロックの抽選を行います。予備抽選の1番を引いたチームの主将から順次抽選籤を引いてください。ではまず愛媛県代表・今治(いまばり)シップビルダーズの主将はこちらで籤を引いてください』




 自分たちのチームがこのブロックに入ったというのもあるが、萩原と小宮山にとっては、永田がどの籤を引くか、対戦相手はどこか、というすぐにわかり易い考えと、永田の緊張状態が大丈夫なのか、というすぐにはわかりにくい考えがどちらが優先されているかわからない程横に並んでいた。ただ、




―アイツ大丈夫か…?

―行く前と表情変わってないぞ…?




組み合わせ抽選が始まる前と後で、若干その順番は前後している様だった。






再び抽選会場






 組み合わせ抽選自体は予備抽選2番の岡山県代表・玉野(たまの)ビーズと、予備抽選3番の鹿児島県代表・出水(いずみ)フレシェッツが組み合わせ抽選でも続けて大会第6日目第4試合に入って、Bブロックでは早々に組み合わせを決めたが、それ以降はすぐに決まらずに進行していた。




『続いて予備抽選7番、秋田県代表・チームSTKの主将はこちらで籤を引いてください』




 チームSTKの佐竹主将(さたけキャプテン)がパイプ椅子から立ち上がる。少し進んで、抽選箱…、の前には行かずに、立ち止まってポケットから何か取り出した。


 棒…? いや、それを長く伸ばしている…。折り畳み式の釣り竿だろうか。




「あの、抽選箱の前まで行って引いてください」

「いや、これで引きます」

「引けるわけ無いでしょ」

「いや、引けますよ。これなら嫌でも抽選箱の中身を間違えて見ずに済みます」




 係員に促されても尚自分の意思を曲げない佐竹は、そのままリールを前方に回した。釣り竿であれば本来ルアーが付いている部分にはマジックハンドが付いていて、どうやらこれで籤を掴むらしい。




 釣り竿?の先から垂れている糸に付いているマジックハンドが、抽選箱の中に入った。良く見ると釣り竿のグリップから更に佐竹の手元の方向にマジックハンドのグリップが付いていて、これで掴んだかどうかの感覚を確かめるらしい。




―おっ、掴めたな。




 掴めたとわかると佐竹はリールを巻いて、マジックハンドを引き上げる。マジックハンドには籤が1個掴まれていて、糸に引っ張られて高く上がる。


 完全に巻いた後でそのままマジックハンドを手前に持って来る途中でグリップを握っていた手が緩んだのかマジックハンドが開いて籤が床に落ちたが、1個しか無かったので佐竹が引いた籤であることは確定した。




 佐竹はマジックハンド付きの釣り竿を折り畳んでポケットに閉まうと、歩いてその籤を拾ってスタンドマイクの前に立った。




『チームSTK、42番です』

『チームSTK、大会第25日目第3試合三塁側』




 独特な方法で籤を引いたチームSTKは、2回戦からの登場となった。大会第8日目第3試合の勝者を待つことになるが、まだそのカードにはどのチームも入っていない。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






「あんなやり方で籤引いても良いんだね…」

「まあちゃんと引けてたから良いんじゃない? 違反しているわけじゃないから」


 佐竹の独特な籤の引き方には、会場外でも話題となっていた。萩原と小宮山も、チームの、永田の行く末を心配する中でこの話題に触れていた。




甲府(こうふ)チェッカーズ、28番です』

『甲府チェッカーズ、大会第7日目第3試合一塁側』




 その後も組み合わせ抽選は続いていく。軒並み率いる強豪が次から次へと籤を引き、組み合わせカードが決まるチームもいる中…、






『続いて予備抽選18番、大阪府代表・岸和田(きしわだ)BBファイターズの主将はこちらで籤を引いてください』

「はい!!」


 矢鱈元気な返事をしてからパイプ椅子から立ち上がる岸和田BBファイターズの主将(キャプテン)。片山と関川には、この主将と何か関係があるらしい。




「あれ(しょう)ちゃうの?」

「タッパとあの言動ですぐにわかったわ。相変わらずいちいち目立つことばかり選んでたら誰かてわかるで…」






 少々呆れ気味なアクションを取った2人だが、岸和田BBファイターズの主将(キャプテン)山村(やまむら) 翔とは、幼稚園から高校までの幼馴染であった。それだけに彼の一挙手一投足も容易にわかったが、関川の言う通り誰が見てもわかり易い行動ばかりであった。その後も…。






『他のチームの主将よりも大きなモーションで抽選箱に手を入れます』

―いちいち大きくせんでええねん…。

―何でそんな大きく腕を振り回すねん…。籤引くのにあんなモーション摂るのお前だけやぞ。




 箱から抽選籤を引き上げる時も、真っすぐ真上に豪快に上げていた。

―…あのなぁ、籤は引いたら手元に持ってるだけでええっちゅうねん。目星の物ゲットしたいうアクション取ったかて誰も注目せんて。

―そらおたくんとこは実力もあって優勝経験もあるからオレもアンタらに投げたい気持ちはあんねんけど…、周りにドン引かれんか心配になって来たわ。




『岸和田BBファイターズ、8番です。対戦相手の…、って、あれ?』


 山村は振り返ってトーナメント表を見たが、彼が引いた籤、大会第5日目第3試合の三塁側の隣には、まだ誰も入っていない。


―何やまだ居らんのかいな…。決まってたら握手と挨拶早速しにいこうと思たのに。決まったらこっちから動こう。






再び抽選会場






 同じ頃チームSTKの佐竹は、既に籤を引いて対戦相手―どことどこの勝者かを待機していたが、一向に決まらず、段々暇になって来た。




―オレが籤引いた時点であと40チームあるんだもんなあ…。そりゃ暇になるよ。


 ここまで先程の岸和田BBファイターズを含めて13チームが引いたが、まだどこも大会8日目第3試合のカードには入っていない。




『続いて予備抽選21番、岩手県代表・葛巻(くずまき)ピースフルズの主将はこちらで籤を引いてください』




―…暇だ~…。いつもなら暇な時って持ってるアイテム改造するかパチ打ちに行くかバッセン行ってバッティング1000本やるんだけどなぁ…。




 暇な表情で、ステージの中央を見ていた。そんな中、葛巻ピースフルズの川向主将(かわむかいキャプテン)が引いた籤は…。




『葛巻ピースフルズ、40番です』

『葛巻ピースフルズ、大会第8日目第3試合一塁側』




―…えっ?

 大会第8日目第3試合一塁側…、勝ち上がればチームSTKと対戦するカードの一方に、漸く1チームが入った。まだもう1チームはわからないが、チームSTKにとっては初戦で東北勢同士の対決、ということもあり得る。






 …同じ様に、暇な時間を過ごしていた人がいた。山村である。




―は~。早よ決まらんのかいな…。これやったら黙って練習しとったほうがマシやわ…。




 組み合わせ抽選会はBブロックの半分が過ぎていた。しかし30チームを経過しても、お隣さんは空いたままだった…。と、




近江八幡(おうみはちまん)セルコアズ、7番です』

―えっ、7番?

『近江八幡セルコアズ、大会第5日目第3試合一塁側』

―よっしゃよっしゃ。




 すると対戦相手が決まるなり山村は立ち上がって、近江八幡セルコアズの大杉主将(おおすぎキャプテン)に歩み寄った。




「どうも、岸和田BBファイターズの山村といいます」

「あ、あの、お気持ちはわかるんですけど…」

「いやいや、折角対戦相手が決まったんさかい、こうして挨拶しようと思いまして。何卒よろしゅう頼んます」


 何かと一方的に挨拶しようとする山村に対してたじろぐ大杉。と、



「あの、それは組み合わせ抽選会の一切が終わってからでお願いします」


係員に止められた。大杉にもえらい迷惑である。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






「…ウチは何でこんな曲者のブロックに入ってもうたんやろな…」

「さっきのチームSTKさんといい翔といい…、確かに傍から見たら曲者かもしれへんけど、その2人だけなんちゃうの? あと皆見た限り()()に引いてるで」


 それに、その曲者が意外と大会で活躍するということは良くあることだ。関川の言う通り他のチームは()()()()真面に引いているが、実はチームの中に曲者がいるかもしれない。そういう意味では、気を引き締めなければならないブロックに入った、ということでもある。






再び抽選会場






 宮城県代表の利府(りふ)アドバンテージズが大会第8日目を引いた…、と思ったら第2試合で、佐竹は1人内心で一瞬喜んで、一瞬で元に戻った。


―こりゃまだまだ決まらなさそうだな…。下手したら47番目まで決まらないんじゃね?




『続いて予備抽選35番、京都府代表・京都オールドシティズの主将はこちらで籤を引いてください』

「ほな、行って来ます」

―この人の次じゃん…。




 呼ばれた東山がそう言って籤を引きに行ったが、それは同時に次が永田であるという現実を突き付ける場面でもあった。




―大丈夫かオレ…。ヤバいとこは引けないぞ?




 緊張度合いもMAXになって来た。あの人はどこを引いたんだ…。




『京都オールドシティズ、36番です』

『京都オールドシティズ、大会第25日目第1試合三塁側』




 京都オールドシティズは2回戦からの登場となった。既に1回戦、大会第8日目第1試合で試合をすることが決まっている徳島県代表・徳島(とくしま)ジャッカルズともう1チームの勝者と対戦する。




『続いて予備抽選36番、山形県代表・N`Carsの主将はこちらで籤を引いてください』






―き、来ちゃったああ…。






 表情が硬いまま、ゆっくりと立ち上がった。籤を引いて戻ってくる途中の東山と偶然目が合った。




―だ、大丈夫なんか…? えらい硬い動きやで…?




 東山が思わず立ち止まって、擦れ違うチームの主将のあまりにも硬い動きに、気を取られたのか目を丸くした。




 パイプ椅子の集団からゆっくりではあるが何とか抜けた永田。それからゆっくり数歩進むと、何かを思い出した。






『どごど当たるにしても、いつも通りのことをやるだけだ。いつも言ってるべ? 練習でやってきたことを存分に見せで、常に勝つ、攻める気持ちを捨てねで思いっきりプレーしてこい、って。もし組み合わせ抽選会の時から凄い雰囲気を肌で受けだら、そういう時こそこの気持ちで籤を引いで来い』






―そうだった…。そうだ…。その通りにしよう…。いつも通りのことを、やるだけだ…。




 徳山監督の言葉に、若干ながら気持ちが支えられた永田は、抽選箱に視点を集中させて、ゆっくり歩み寄った…。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






「愈々ホンチャンが来たな…」

「これでどこ引くかやな…。オレらはどこでも大歓迎やねんけど、日程に合わせて調整せなアカンからな…」


「いきなりまずいとこ引いたらな…」

「でもそういうのに勝ってかないと…」




 関川、片山、萩原、小宮山が、部屋が違うとはいえ皆一斉にテレビを食い入る様に観る。






「…ふぅ~…」

 立ち止まって一息吐いてから、ゆっくりと右腕を抽選箱の中に入れる。




 顔は上げたまま、右手の感覚だけを頼りに籤を探る。これだ、と思った籤を掴むと右手をゆっくりと引き上げる。






―さあどこだ…。

―どこや…。






 会場内からも外からも視線が集中する中、永田は籤を持ってスタンドマイクの前に立つ。






『N`Cars、30番です』

『N`Cars、大会第24日目第3試合三塁側』






「24日目…? ってことは2回戦からか」

「こらえらく開くな…。それまで状態維持せな…」




 関川と片山の言う通り、N`Carsは大会第24日目と、かなり間隔が開いての登場となった。その第3試合で、大会第7日目第3試合の勝者、既に入っている山梨県代表・甲府チェッカーズともう1チームの勝者と対戦するが、そのもう1チームはまだ決まっていない。




『続いて予備抽選37番、三重県代表・四日市インダストリアルズの主将はこちらで籤を引いてください』




「すぐ決まるんかな…」

「そんなすぐとも限らんやろ。でもあと1/11やから、無いことも無いか…」




 関川の言う通り、抽選を控えているチームは、Bブロックでは今籤を引いている四日市インダストリアルズを含めてあと11チームとなった。確かに始まった時と比べれば、確率上では決まり易い。




「…そういやあれ、良う見たら信一(しんいち)さんちゃう?」

「…あっ。昔泉州ナイツに居った人な。確か仕事の都合で大阪から四日市(そっち)に引っ越したんやったっけ…。チームも移籍して主将(キャプテン)に就任してたか…」

「そら移籍はするやろ。距離にして180kmはあるで?」




 2人の話題は、テレビ越しに籤を持ってスタンドマイクの前に立とうとしている四日市インダストリアルズの深川 信一主将だった。かつていた泉州ナイツとはブロックが違うので遠い、でもN`Carsとの対戦は可能性があるが、果たして。




『四日市インダストリアルズ、22番です』

『四日市インダストリアルズ、大会第7日目第1試合一塁側』




「うちちゃうかったか…」

「そこやったら暫く対戦は無いな…」


 片山と関川の言う通り、N`Carsとは暫く対戦の無いカードに入った。対戦相手は奈良県代表・五條(ごじょう)インポータンツで、勝ち上がれば2回戦、大会第24日目第1試合で佐賀県代表・鹿島(かしま)ディアーリバースと対戦する。






再び抽選会場






―…一先ず、両隣のお二方との対戦は無いか…。




 これでもし対戦が決まっていたら、直前までお互い支えあっていた仲の良い関係が、一瞬にしてお互いに正面を向き合って火花を散らす様な関係になっていただろう。折角心理面でアドバイスをくださったお二方だけに、対戦ともなればお互い気まずくなる場面だった。


 そういう意味では永田は少し安堵した…。と、




江津(ごうつ)アラフォーズ、29番です』

―えっ? 29番?

『江津アラフォーズ、大会第7日目第3試合三塁側』






 …N`Carsの、対戦相手が確定した。大会第7日目第3試合、山梨県代表・甲府チェッカーズ 対 島根県代表・江津アラフォーズの勝者と、大会第24日目の第3試合で対戦する。






再び大阪府O市K区  N`Cars宿舎のホテル






「甲府チェッカーズさんと、江津アラフォーズさんの勝者…!?」

「どっちも全国大会では最高成績ベスト4。県勢の全国大会最高成績ホルダーやで…」


 どっちが来ても大歓迎やねんけどなぁ~。真剣なトーンで会話を交わしはつつも、内に秘めた気持ちは2人とも前向きだった。と、




「アイツら勝ったら超ラッキーじゃん」

「勝ったら次ボーナスステージだもんな」

「N`Carsとか超楽勝だろ。東北だし山形だし初出場だし、弱っちい要素揃ってんじゃん」

「しかも主将(キャプテン)があんなビビりだから他のヤツらも相当弱いんだろうな」






ピクッ。






 眉間に、皴を寄せたくなるワードが、耳に入った。






―どこの誰かは知らんけど、超ラッキーとかボーナスステージとか言うてたな…。確り聴いたで。

―東北が山形が初出場が何やて…? その言葉、良う覚えときや。


―ちょっと聞き捨てならない言葉がありましたな…。

―コイツらに言ってもしょうがねぇから、結果で示すしか無いな…。




 片山と関川だけでは無かった。同じくテレビを視ていた萩原と小宮山も、内に秘めた気持ちを燃やしていた。


 そこに、都筑と梶原がグローブとボールを持って2人の部屋の前に来る。都筑がドアをノックする。




 小宮山が応対に行って、ドアを開ける。


「何?」

「これからキャッチボールしようかと…うっ」




 近づいてはいけない雰囲気と目付きをしている小宮山に、都筑は思わずたじろいだ。




「何で?」

「いや、対戦相手決まったから…。てかどうしたの2人とも?」

「ああ…」




 小宮山は一連の出来事を2人に説明した。




「チッ」

パーン。




 それを聞いた都筑は軽く舌打ちして、梶原はグローブの捕球面にボールを軽く叩きつけた。




「乗った。オレも行くから待ってろ」


 小宮山はそう言うと、玄関から中に戻った。




「何のお誘い?」

「キャッチボールだと」

 小宮山がグローブと守備用の手袋を準備しながら、萩原に返す。


「オレもやるわ」

 萩原もテレビを消してから、準備に取り掛かった。2人の準備ができた後、4人はキャッチボールに向かった。






再び抽選会場






 一連の動きがN`Cars宿舎のホテルで行われている中、抽選会場ではその後も着々と強豪チームの主将(キャプテン)が抽選籤を引いていった。


 まず、予備抽選39番、福島県代表・郡山(こおりやま)スクールズの富久山主将(ふくやまキャプテン)が、9番籤を引いた。大会第22日目第3試合で、大会第5日目第3試合の滋賀県代表・近江八幡セルコアズ 対 大阪府代表・岸和田BBファイターズの勝者と対戦する。




―近江八幡セルコアズはんに勝てば次は郡山スクールズはんか…。まあでもどこのどないチームが来ようと全力で挑むだけや。




 更に暇そうにし過ぎるあまり、寝てもおかしくない程集中力が切れかかっていた佐竹に、




七尾(ななお)セブンテールズ、41番です』

『七尾セブンテールズ、大会第8日目第3試合三塁側』




―んっ?

目の覚める様な一声が。チームSTKの対戦相手が、大会第8日目第3試合、岩手県代表・葛巻ピースフルズ 対 石川県代表・七尾セブンテールズの勝者に決まったのである。




―マジか~。このどっちかに決まったのか…。長かったな~…。




 そして、青森県代表・青森フォレストと、東京都代表・八王子エイトプリンセスが、続けて25番籤と26番籤、つまり大会第7日目第2試合の、それぞれ一塁側と三塁側を引いた。予備抽選でも43番、44番と隣同士だった2チームが、ここでも隣同士の籤を引いた。勝ち上がれば、大会第24日目第2試合で、岐阜県代表・(せき)チェックポインツと対戦する。






 気付けばBブロックの抽選も、残すはあと1チーム、鳥取県代表・鳥取(とっとり)ホワイトサンズのみとなった。既に大会第6日目第3試合で、北海道代表・稚内(わっかない)アイスバーンとの対戦が確定しているが、最後、17番籤を引いて、無事、Bブロック47チームの抽選が完了した。


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