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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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122/136

再び全員集合

「…凄いチームばかりですね…」

「どごど当たるにしても、いつも通りのことをやるだけだ。いつも言ってるべ? 練習でやってきたことを存分に見せで、常に勝つ、攻める気持ちを捨てねで思いっきりプレーしてこい、って。もし組み合わせ抽選会の時から凄い雰囲気を肌で受けだら、そういう時こそこの気持ちで籤を引いで来い」

「…はい」


 思わず息を呑む程の凄い顔触れに、顔も体も強張った。だが徳山監督の言葉に、ほんの僅かではあるが表情と気持ちが柔らかになった。永田は徳山監督におやすみなさいと挨拶をした後、部屋に戻った。


 組み合わせ抽選会は数日後、北海道代表の4チームが全て大阪に入ってから3日後だ。






数日後




―…、あぁ~…、来ちゃったよ…。

 組み合わせ抽選会の朝が来た。気持ちが重いまま、永田はゆっくりと体を起こした。


―組み合わせ抽選会何時からだっけ…。午前10時だっけか…。オレと監督が現地の会場に行って…? その前に朝ご飯食べなきゃじゃん…。


「大丈夫なんアイツ?」

「こういうの永田はしょっちゅうやからな…。心情考えたら無理も無いで」


 あまりにも力も気も入っていない動きで準備を進める永田を見て、片山と関川に心配されていた。だが組み合わせ抽選会のことで頭がいっぱいだった永田には、その心配すらも響いていなかった。




組み合わせ抽選会 抽選会場




 N`Carsのメンバー全員に口々に心配されながら徳山監督とともに見送られた永田は、宿舎からタクシーで15分程走った先にある抽選会場に到着した。

 出入り口近くのロータリーに入ったが、前後が詰まっていたこともあって出入り口の反対側で降りることにした、のだが…。


「では、こちらからどうぞ」

「お金払っどぐがら、先降りてろ」

「…はい。ありがとうございました」

 タクシーの運転手が自動で助手席側後方のドアを開けて、運転手さんに挨拶をしてから徳山監督に言われた通り先に降りた永田だが、相変わらず力が無かった。


「…大丈夫ですか彼…?」

「…多分、これから迎える大きなことに緊張しでるんだと思いますよ。そういう性格みでぇだがら、一応言ったんですけどね…」

「それやったら良いんですけど…。はい、丁度お預かりします。ありがとうございました」

「はい、こちらこそ。あと態々ご心配ありがとうございました」


 タクシーの運転手さんにまで心配される永田だが、先に降りていたこともあって気付かなかった。徳山監督はタクシー料金を丁度払うと、挨拶をしてから永田に続いて助手席側後方のドアから降りた。




 会場に入った2人。だが1人は、完全に心持ちが重かった。

―…やっぱりか~…。皆さんオーラのある人ばかりだよ~…。

 周りには、既に会場に入っていた多くのチームの監督や主将が、それぞれ幾つかのグループを作って談笑していた。

 何れも自然にできた少人数のグループの様だが、どれも強いオーラを放っていた。

―受付行かなきゃ…。

 その強いオーラのグループの間を縫う様に、永田は重い足をゆっくりと進めていた時だった。


「おーい、永田」


―ん?

 誰かが呼び止める。右後方かららしい。永田はその方向を向くと、呼び掛けたとみられる人物が手招きしていた。


―何…。

「監督、ちょっと呼ばれたんで行って来ます」

「ああ」

 緊張のあまり必要以上に動くのも気怠かったが、取り敢えず呼び主の元へ行くことにした。



「あれ…」

 そこにいたのは、酒田ブルティモアズ主将・荒瀬、山形スタイリーズ主将・平山、米沢ローリングス主将・情野だった。


「何やってんの?」

「そっちこそ、どこ行こうとしてんの?」

 情野の質問に少し言葉が詰まり気味だったが、永田は受付と答えた。

「まだ開いてないぞ」

「もうちょっとだな」

 平山が付けて来た腕時計で時間を見て確かめる。と、ここで荒瀬が口を開いた。


「皆揃ったから、またやりましょう」

「「「…?」」」


 何のこっちゃというアクションで一斉に荒瀬を見る3人。わかっていない様子だと見た荒瀬はわかる様に続けた。


「あの、閉会式終わった後に円陣組んだじゃん? あれをもう1回やろうと思うの。ブロックは4つに分かれるけど、皆同じ気持ちで頂点(テッペン)目指しましょうってことで」

「あーやるんだ…」

「戦いはもう始まっているからな。また気合を入れるという意味も込めて」


 真っ先に納得した平山に続き、情野、永田も円陣に加わる。しかし永田には、今の荒瀬の発言で若しかして…、という感覚に触れた。



「っしゃ…、皆で頂点(テッペン)とるぞ!!」

「おー!!」




 改めて気合を入れ直した山形県代表の主将4人。皆お互いに頑張れよ等と激励しながら、また散り散りになる。



 受付へ再び歩を進めながら、永田は先程から考え事をしていた。



―若しかして、あの強いオーラって…、只強いだけじゃない、戦いはもう始まっているから皆戦闘意欲MAXで籤を引こうとしているのかな…? だとしたら、



『どごど当たるにしても、いつも通りのことをやるだけだ。いつも言ってるべ? 練習でやってきたことを存分に見せで、常に勝つ、攻める気持ちを捨てねで思いっきりプレーしてこい、って。もし組み合わせ抽選会の時から凄い雰囲気を肌で受けだら、そういう時こそこの気持ちで籤を引いで来い』



っていう監督の発言、尚更今のオレに要るんだな…。




 もうすぐ午前10時。気づけば受付の前に立っていた。


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