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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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118/135

7時間の移動

 その団体客―N`Carsは隣の3番線ホームでゆめ咲線桜島駅行きの電車を待機していた。隣と言っても、今降りた4番線ホームとこれから乗る3番線ホームは2本の線路で1つのホームを挟む所謂島式ホームなので、数歩歩いただけで隣に行けるという、これまでの移動行程と比べればそれほど労せずに乗り換えられた。




 待つこと数分。桜島駅行きの電車が3番線ホームに入って来た。


 ドアが開いて降りる予定のお客さんが全員掃けるのを待つ間、永田は関川に訊いた。



「ここから桜島駅まで何分?」

「10分足らずかなあ…、でもホンマにもう一息やから」


 厳密には桜島駅に着いた後近くのホテルに徒歩で向かうのでもう少しかかるが、3駅の電車移動に10分足らずというのは長旅を続けて来たN`Carsにとっては、本当にもう一息というとこまで来ていた。



 降りるお客さんが全員掃けてからN`Cars含む乗車予定のお客さんも全員乗った後、電車は定刻通り無事発車。これだけの長旅ながら意外にも午後1時前と、まだ昼である。朝早~~~くに起きて何百kmもの道のりを移動して来た、という事情を知っていれば同乗してくださるお客さんもいらっしゃったかもしれないが、それを知らないお客さんが殆どなので、若者の集団が昼過ぎなのに何疲れとんねん…、という目で見て来たに違いない。




『ご乗車頂きありがとうございます。間も無く安治川口(あじかわぐち)、安治川口に着きます。お出口は右側です』






……






『…次は終点、桜島、桜島です』


―え、桜島…? 長かったぁ~…。

 長旅による疲労もあってか、誰1人として車内で殆ど語らなかったN`Cars。意識がボーッとしていた時に耳に入って来た「桜島」のアナウンス。皆、まるで寝起き直後の様な動きで降車準備に入った。


「できるだけ速やかにね」

「あと車内のゴミ拾いな。今回は範囲広げるで」




 永田と関川はいつも通り指示を送った。ゴミ拾いの範囲を広げた理由だが、桜島駅の1個前がテーマパークに程近い駅なのだが、そこで結構な人数が降りて行ったことでやり易くなった…、と言うだけならまだ良いかもしれない。



 降りた皆様がいたとみられる席周辺に、細かながら矢鱈とゴミが散見されていたのだ。



 勿論きっちり綺麗に片付けて行った方もいらっしゃる。が、それよりもこの細かながらとはいえ散らかっている様子を見て、N`Cars全員、黙ってられなかった。



―あー、これだから高揚してるヤツらはもう…。気持ちが高揚してる時って本当碌なこと無いのな。



 黙って作業を進めつつも内心は怒りに満ち溢れ、こんな考えまで持つ者も。片山に至っては、



―昔のオレやったら手ぇ挙げとるでホンマ。どっから来たのか知らんけど同じ大阪人として恥ずかしいわ。



と、本当に1歩間違えれば鉄拳制裁を下しかねない様な状況にまで来ていた。




 しかしここで全員ゴミを捨てた人間に対してカッとなったことで目が覚めたのだから何とも皮肉である。拾えるだけのゴミを拾って荷物を纏めたとほぼ同時に、電車は桜島駅に到着した。



 車両右側のドアが開く。N`Carsを含む乗客が続々と降りる。実に7時間にも及ぶ鉄道移動が、漸く終わった。乗って来た電車は、この後来た道を折り返すという。



「階段上がって…、あとはホテルまで行くで」

 N`Carsは徒歩で跨線橋から駅舎へと通じる階段へと向かった。あとはそのまま、徒歩移動のみだ。


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