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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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やるべきこと

 その後、電車は何事も無く西九条駅に着いた。例のアナウンス以降、皆大人しく行動していた。

 …と言うより、重い空気の中でそれぞれに思い当たる節があったのか、誰1人として言葉を発することすらできなかった。






 野田駅でも西九条駅でも、多くのお客様が口を(つぐ)んでいた。そんな中、

「やるべきことをやろう」

この状況で自分たちにできることはこれしかない―、そう思った永田が、口を開いた。





 まず、自分の足元にゴミがあったら、それを拾う。


 次に、持って来た荷物は、他のお客様の邪魔にならない様にしながら纏める。


 電車を降りる時は、この駅では降りないと思われるお客様に時折断りを入れつつできるだけ速やかにドア前に整列する。


 駅に到着してドアが開いたら、足元に気を付けつつ速やかに降りて乗る人にできるだけ長く時間を取って、広く道を開ける。





 極当たり前のことだが、こういうことを実行してこそ何かムードが変わるのでは…、そして、恐らくは運転手さんが我々乗客に訴えたかったこと、して欲しかったことが頭で理解するだけで無く、体でもわかるのではないか…、そんな気がした。


 自分たちは既にアナウンス直後からわかっていたメンバーも多かったが、こうすることで他のお客様にも伝わるのではないか…、と考えていたらドアが開いた。





 運転手さんはアナウンス後も尚、客のマナーが気掛かりだった…、と言うより、神経を尖らせていた。またマナーが悪い、下手したら鉄道の業務妨害する程アカン奴出て来るんちゃうかな…、と。その為か、本能では乗務内容を遂行しつつも、気持ちは線路右側のプラットホームに注意が行っていた。体と心が全然違う方向を向いていたのである。



 況してこの西九条駅、N`Carsがこれから乗り換えるJRゆめ咲線と、JR線のホームから少し歩いて阪神戦とも乗り換えできるので、その分シェアが広い。…となれば尚更気掛かりである。





 発車直前、1組の団体客に目が止まった。

―あれ? あのお客様…、

 しかしそれも極一瞬。すぐに後方から車掌さんの笛が聞こえて、殆ど間を置かずにドアが閉まった。

―嗚呼…、考える余裕も無かったか…。



 そのままここもノートラブルで無事に定刻通り発車。幸い邪魔者とも言うべき悪しきマナーを持った人間は()()()()()いなかったものの、運転手さんの脳裏には一瞬見えたあの団体客が映っていた。





―少数の人間が他の大多数を牽引してはった…、で皆同じ方向に行ってはったな…。荷物持ってたから明らかにどっか遠方から来たお客さんやんな…。




―その少数は明らかに手慣れた動きで誘導してて…、他は少なくともこの路線は初めてやったんかな、ぎこちない動きで彼らに誘導されてやっと同じほうへ動けてた。




―あれか…? 今度全国草野球選手権大会に出場するチームで…、何ちぅたっけな…? N`Carsやったかな確か…、登録1年目で山形から初出場決めはったいうチーム…。オレあんま野球詳し無いけど、この間のスポーツニュースでそんなこと言うてはった気がするな。でも…、




―まさかな…。全国から188チームも来るんやからこのちょっと話題になっとるチームがこの電車に乗ってはったとも限らへんやろな。


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