『屈辱』
朝、目が覚めると時計の針が8時15分を示そうとしていた。
「遅刻だ・・・完全に遅刻だ・・・・」
高校生活初日ぐらいはまともに登校したかった。
「早くしないと授業にまで遅れるぞ?」
話しかけて来るのはゴーレムのマキシだ、普段は猫の形をしているが実際こいつは魔族。
口数の多い猫だと言う事を理解してほしい。
「うるさいなーだったらお前が起こせば良かったんだろ?」
この会話を何回した事か・・・
キッチンに置いてあったパンを食べつつ紅茶を一気飲み。
カバンを持って学校にダッシュ!
「遅刻だな絶対に遅刻だな初日から遅刻なんて幸先の悪いスタートだこと」
「さっきからうっせーぞ?ゴーレムの癖に黙りやがれ!」
完全に遅刻が確定している俺を見てマキシは嘲笑うかのようにこっちを見ていた。
「つーかなんで猫のお前と人間の俺が一緒に登校してるんだ?」
そうだ、コイツはゴーレムと言っても周りからはただの猫にしか見えない。
それなのにどうして人間の俺と一緒に・・・気に入らないな・・・・
「あぁ?だって学校にはアメリカンブルーのハスキーちゃんが居るんだぜ?」
その上この人間様を差し置いて恋愛感情なんて持ちやがって・・・・
ますます気に入らない奴だ。
「ハスキーちゃんってあの育ちが俺よりも良さそうな猫の?」
「あぁそうだけど?」
フッ・・・甘いな・・・可哀想に失恋だなこりゃ絶対に振られるに違いない。
「まぁがんばれよ!応援してるぜ」
「おう!がんばるよ!」
うぅ〜その気になりやがって、ムカつくけどコイツ振られたら落ち込むだろうな・・・・
「来週で付き合って3年になるんだ!!」
「あえ?3年?」
話が違うぞ・・・神様どういう事ですか?
3年って・・・・俺が未だ中1の時に既にコイツには彼女が居たって事か?
「そうか、それは良かったな!」
猫の癖に生意気な、だいたいいつの間に彼女なんて・・・・
「今度ダブルデートしようぜ?」
「アホか!!お前は猫だろ?どうして人間様とデートが出来るんだよ?」
フンッ馬鹿な猫だな、生意気でムカつく馬鹿なゴーレム猫だ・・・
「そっか慎には、彼女居ないモンね?」
動物虐待と言う言葉は動物にのみ適応されるものであってゴーレムには関係ありませんよね?
殺しても良いですか?
「まぁまぁそう怒るな、学校が見えてきたぞ?」
くそ・・・覚えてろよあのクソの猫・・・・
絶対に殺してやる・・・・
そんなこんなで学校についた。
「じゃな!マキシ彼女と末永く幸せに」
「おう」
マキシは学校の壁をスルっと登って屋根の上で待っていたアメリカンブルーのハスキーちゃんと何処かに行ってしまった。
「ヤベッ!?もうこんな時間?」
ホームルームは捨てたとしても授業までには教室に入らなければ・・・・
「えっと俺の教室は・・・」
「4階の一番奥ですよ?高津 慎君」
「え?」
俺の後ろに立っていたのは入学式の時に隣に座っていた夜月 馨だった。