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異世界と神と大罪と  作者: 新藤 縁
第一章 「神と意伝子」
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第二話「約束と神」

ー何分、いや何時間、俺らが死んでからたったんだろうか。この真っ白な世界はまるで時間の概念がないように経っている感覚がなかった。そう、経っている感覚がしないだけなのだ。ーーだから

もし先に異世界に送られたなら、待ってて欲しい。一緒にまた遊んだり、楽しいことをさせて欲しい。

そして、約束を…

そんな叶うかもわからない欲望を頭で考えたら、あの女神がまた話しかけてくれるかも、そう期待したのだがーーー

もう神の声は聞こえなかった。

その事実を改めて理解し、この白い空間が溶けるほどの憤怒の心で何もないはずの上に向かって、

「ぶっ潰す。だからそれまで、間違っても死ぬなよ、クソ野郎。」力強く、そう言った。

言葉への回答は無かった。

ーー熱はすぐに冷める。冷めてしまう。それは前の人生で得た。数少ない俺の教訓だ。だけど、だけどこの熱はなかなか冷めそうにない。冷めてたまるものか。

だからこそ今はやらないといけないことがある。

「意伝子、どうすっかな。」

やはり誰もいない白の空間で、そうポツリと意思を言ったのだった。

ー時は少し遡るー


なぁ神様、

なんでもいいってならそれこそ「時間を操る」とかでもいいんだろ?それにしてくれ。

流石に長く話しすぎたので今度は簡潔にまとめてこの神が多く喋らないようにそう言った。

『この神が多く喋らないように、まだ聞こえてるんだけどね!?』

、、、

『いやスルー!この子本当すごいな!、もう、まったく!じゃあ僕も簡潔にゆね!それは無理!』

なんで無理なんだ?こっちが決める権利があるって言ってたじゃないか。

『全く同じ人はいない。だから遺伝子も、意伝子も全く同じものはない。そんだけさ!』

つまり、もう時を操る能力を持つものはいて、同じ能力を持つものは二人存在できないってことか。

つまり最初に強い能力を持ったものの方が、、

待てよ?最初?おい神様この意伝子の取得方法ってまさか!?ーーー

『そうそう!早い者順!』

ーー。

完全にやられた。ここでこの神と話してるうちにも全世界八十億人が早い者順で能力を、いや意伝子を、取っていっているということだ。

『そうそう!そゆこと!でもこうやって僕と話した時間がこれからの人生の宝物にー!』

そんなことよりも意伝子の方が大事!本当それ先に言ってくれよ!

『そんなことよりもって!ひどいなー』

ー。ごめん。流石に強く言いすぎた。どうやったら、意伝子って貰える?

『うーん。正直いいたくないなぁー、もっと話したい!』子供っぽく言ったその言葉はなんだか少し、さっきとは雰囲気が違うような感じがした。

だけど、まぁ、俺も正直このまま話しているのも悪くないなと、心の穴を埋めたいだけかもしれないがそう思ってしまった。だから、

それをまるで待ってたと言わんばかりに、、『嬉しいこというねー!!そうゆう可愛いところも、あれ?どうして顔が赤いの!?』

怒りとは別の理由で赤くなった顔をそらせないのがいやだった。


ーーこの後、神様が言いたくなさそうだったので他の異世界についての情報を聞いた。

俺たちにはまず、選択肢があるらしく、完全な転生、赤ちゃんからのなんの情報もないところからスタートする方法と、今の情報を持ったままの、転移のような形で異世界に行く方法があるらしい。まぁ俺は年もいってないし、忘れたくないものが多すぎるので、転移の形でいくことにした。その他にも、俺たちが行く世界はほぼ壊滅寸前の剣と魔法の世界だということ、魔物なども出るということ、など色々聞けるだけ聞いたところで、

空気が変わった。

『そろそろ、ききたいよね、。!』

ー最初とはやはり少し変わった様子でそう言った。だからこちらも、ありがとうを込めて、、

そうだな。ここでの宝物もいっぱい貰った。

俺には進まないといけない理由がある、地球では出来なかったけど、異世界で家族とか友達とかにやらないといけないことがたくさんあるんだ。だから、教えてくれ、神様。

どうしたら次に進める?、そう聞いた。

その問いだけはやはり少しだけ間があって、

『君が次に進みたい。そう言えば、次に進むよ。』

ーーそして悲しそうにそう言った。

適切に言葉を使うと、悲しそうに言ったのではない。そこには先程までと同様に、ロボットのような調子で喋る神がいた。しかし、その顔は今までとは違う我慢するような笑顔だった。その顔が、君も、同じでまた行ってしまうんだね、そう言ってるような気がしてーー。

「また来るよ、また、絶対戻ってくる。だから、」

『、、、』

「それまで、俺を、俺らを見守ってくれ。そしたら必ずお前をここから連れてく。」

この白い空間にずっと一人で、話し相手もいなければ、楽しいこともない、それがこの黒曜石のように黒い目と、仮面のような笑顔を作ったのだとしたら、それはあまりに、酷すぎる。

だから気づけばそう『言って』いた。

そして、俺には神が、可憐な少女のように見えた。

ーーそれはこの神の本来の姿だった。神となり、時と共に失われていった、心と自我。それが千里により再び呼び起こされたのだった。

そして初めてこの神、女神は、本当の、心からの笑みと涙で、

「約束。ね、!」そう言った。

やっと動かせるようになった体を使い、今の顔を見られないように思いっきり顔を逸らした。正直今のは反則だ。可愛い。ちくしょう、もっと話したい。だけど約束とやらなければならないことを思い出し、こちらも笑顔で、

「じゃあ、行ってくる。あと、大切なこと聞き忘れてた。神様の名前ってーーー、」

そう聞こうとした瞬間だった。目の前で電池が切れたロボットのように、女神が倒れた。

「ーっ!」

倒れる体をなんとか受け止め、綺麗な体に傷がつかないよう、そっと床に寝かした。

「おい!どうした!どこか悪いとこでも、」

そして、その言葉がいい終わる前に、

『ダメだよー!、個人的にそうゆう約束しちゃあさ!人類は、平等にしなきゃさ!』と、上からの音が聞こえた。まるで今の状況と合っていない音だった。そしてその音は一番最初に会った時の女神と同じような幼く、楽しそうな、音だった。

「おい!誰かいるのか!女神が倒れたんだ!助けてくれ!」どうかしている、今さっきまで話していたんだ。どこも悪いはずがない、悪くなる方がおかしい、ここはそうゆう概念がないはずだからだ。だから、、どうして、、

『簡単簡単!変な動きをしたおもちゃがあったら、それを電池を一回抜いてでも止める。そんだけ!』

何を言ってるのかわからなかった。

だって今は女神の話をしているんだ。ロボットなんでどっから出てきた?そもそも、なぜ笑っていられるんだ?笑う要素なんて何もないじゃないか、話が通じない。他に話せる奴はいないのか、?

『いないよー、だって僕が一番上で、この子の魂を抜いたのはーー、なんと!なんと!なななんと!僕だからー!』

、、何を言っているのか解らなかった。

解りたいとも思わなかったが、今一つだけわかってしまったことがある。こいつはクソ野郎だ。人が苦しんでる時も、神が苦しんでるときも、何も感じない、ただ全てを楽しんでいる。クソ野郎。

ーいや、、ある意味、もしかしたら、人間が目指すべきところなのかもしれない。全てを楽しめたらいいなと、そう思っていたから、、だけど、

『君は!天宮、千里君!だね!前世ではー、あー!すごいね!色々ゴミ拾いとか!他の人のために行動をして!うんうん!すごいよ!いい子だったんだね!ごめんね!こっちの手違いで異世界に行くのが遅れちゃったよね!なんかお詫びしようか!?時間を操る意伝子?が欲しいんだっけ?あげよっか!?』

「もうお前、喋んなよ。」

『、、どうしたのかな!?そんなにー』

「意伝子なんていらねぇ、女神を元に戻してやってくれ。それが俺が今欲しいものだ。」

もうこれ以上、音を聞きたく無かった。これが人間の一番いい姿なんて、思いたくなかった。これ以上、あの子、あの女神を悪く言われたくなかった。俺を助けて来れたのは、あの子だから。だから!

『うーん、そうかー、そこまでかー、人類は平等に、だからなー、、しょうがないよね!』

ガタン、 不意に聞いたその音は嫌な予感がした。

こういう時に限って予感は的中する。

寝かしておいた女神の体が、白い床に吸い込まれていった。それを見た瞬間体を動かして、どうにか体をつかもうとーー

『ダメダメ!君はこっち!こっち!異世界!頑張ってね!』

いつもそうだ、足りない、届かない、変われない。

身体が白い床に吸い込まれていった。

せめて最後は彼女を目に焼き付けてーー。

その願いは叶わなかった。叶わないことばかりだ。

 全てを取りたいと思うことを、そんな欲望を、まるで傲慢と、大罪だと言わんばかりに、叶えられない、そんな自分に神に、憤怒した。

そのまま落ちて、落ちて、落ちてーー。


ーーそして俺は次に進んだ。ーー



『さーて、また1人面白い子が生まれたね。人類の物語の最後が楽しみでしかたないよね!そう思わない!?ルシファーちゃん?』

ーその答えが返ってこないことを知っていながら聞いたその質問は、少し、悲しみという異物が混ざった音だった。ーー


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