(解説)
『埋め込まれた機器』
この地に生きる者は体に送信機と、受信機、認識改変回路を埋め込んでいる。
受信機はトンプライゴ型、コロトライゴ型、ミナミライゴ型に分類されており、この順であらゆる場所からの情報を受信する力が大きい。
それらの作用で、全ては単一で何も変わらず、自らの日々に疑問を持つこともなく、何をしているのかを理解できない状態となる。
徹底的に『世界』への好奇心、反抗心を抱かせない仕組みである。
『テンスシステム』
それが人か物は不明だが、テンスとされる存在、装置は、全ての認識改変回路へ接続されている。
朝昼晩と、定時に電子板と言われる調整機から、あらゆる事象に対する認識調整用のデータを飛ばす。
受信機がそれを受け、人々の疑問や思考を平らにする役割を果たしている。
なお、電子板で表示されているテンスは人型であるが、その全身像を見たものはいない、とされている。
『認識番号』
彼らにとっては名前だが、実体は個々人に割り当てられた番号に過ぎない。
なんらかの事由で番号に欠けが生じた場合、すぐさま代わりが調達される。外から調達されることもある。
番号の上限値、つまり民の数、そして年齢、性別の比率は決められている。
『補助者と裁定者』
認識改変回路等の故障や、埋め込んだ受信機を越えた感情等の発生を察知し、処置する一団。
彼らもまた、送受信機と回路を埋め込まれているが、受ける情報は異なる。
『異物』への強い認識改変を行う『処置』。それが不可能とされた時に行われる『処理』。これらに携わる。
このような大規模システムを長年続けた結果、外で何が起きようと彼らは日々変わらぬ暮らしをし、誰が欠けようと補充された人員を昨日と同じ人間だと認識し続ける。
仕事場と呼ばれる場所で作られている機械等も、毎日違うものであるが、彼らは毎日同じものを組み立てているという認識にいる。
体の不自由や感情の揺らぎなどはすぐさま治療され、日々を穏やかに過ごす。
悩むことなどない、全てが決められた運命。
多少の誤作動はあるものの、この世の一切に疑問を抱かず、抱けず、最期まで生きる。
実に素晴らしい取り組みではないだろうか。
そう。
それら全ての情報を流され続けている私以外にとっては。
ここまでの一読有難うございました。
次はただの後書きです。興味がない方は無視して下さい。