作者の気持ちなんてわからなくていい
『クラスメイトにいじめられていた俺だけどクラス全体で異世界転生したので復讐します』
こんな作品があったとして(自分は見る気にもならないがそんな感じのはあるのだろう)、
刺さる人には刺さるだろうが、大衆は嫌悪感を抱くだろう。
作者が主人公に自己投影しまくっているのがわかりやすいからだ。
こんなものを好んで見るのは主人公と似たような境遇の人くらいなものだ。
自己投影だったり主張が強い作品は刺さる人には刺さる、ニッチな作品として一定の需要はあるが、
商業的にもっとヒットするためには同じ内容でも大衆向けになるように、
自己投影や主張を隠したり、自然な展開で肯定するなどしてマイルドにしなければいけない。
そこが作者だったり編集者だったりの力の見せ所さんなわけだ。
そうして作られた大衆向けの作品は世間で高い評価を得ているわけだが、
そんな世界で苦しんでいる人がいる。
『作者の気持ちがわかってしまう人』だ。
作者や編集者が大衆向けにするためにマイルドにした自己投影だったり主張を、
観察力だったり分析力だったりで見抜いてしまう。
そんな人からすれば、最初の一文で出てきたニッチな作品も、
商業的にヒットしているような作品も似たような作品になってしまう。
社会人経験を積んだ結果、
『編集や出版社の気持ちがわかってしまう人』もいる。
流行りのバトル漫画の人気キャラに対して可愛いだなんて感情を抱く人もいる中、
「このキャラは人気だから死なないんだろうなぁ」
なんて考えてしまい、想定できてしまう今後の展開に醒めてしまう人がいるのだ。
それは言い換えれば、大人になる、ということでもある。
子供の頃は無邪気に楽しめていたような作品も、
大人になってしまえば裏を読み取ってしまい楽しめなくなる。
その読みが正解か不正解かなんて大した問題ではない。
人はそうやって漫画だとかアニメだとかから卒業していくのだ。
勿論、いい年して裏を読み取る能力が全然無い人は社会でやっていくことは難しい。
私がこうして余裕ある生活を送れているのは、そういう能力が人一倍あったからだ。
それでも、フィクションはフィクションで純粋に楽しみたい。
だから最近は日常系漫画だとか、大した理由無くモテるハーレム物だとか、
あまり中身の無いモノを好んでいる。複雑な事なんて考えず、女の子可愛いなぁで終わるから。