逆ペアレンタルコントロールは必要か
前回の話で、
『賢い人間は〇〇を使っている!』と宣伝すれば、
賢い人間はそれが宣伝文句であると理解するが、
自分を賢いと思っている馬鹿は自分に相応しいと買ってしまう、という話をした。
そういう目線で一度社会を見てみれば、
『社会人のマストアイテム』だとか、『エリートが読んでる新聞』だとか、
驚くほどそういう煽り文句がある事に気づくはずだ。
そういった煽り文句に惑わされず、本当に自分に必要なモノは何なのか?
社会人に必要なのはマストアイテムでは無くそういった判断力なのである。
さて、漫画やアニメ、ラノベの世界でも勿論この手の煽り文句はある。
『大人も楽しめる』だ。
特に子供向けのヒットした作品の宣伝文句に多い。
基本は子供、中高生向けに宣伝してついでに大人も巻き込もう、というケースが多いからだろう。
一昔前はそういうのは子供が嗜むものであり、大人になったら卒業するものだった。
しかし出版社だって、アニメ制作会社だって商売だ。なるべくたくさん売り上げは欲しい。
テレビ局だって自分のところでアニメを流しているし、お金を積まれれば番組で宣伝だってする。
だからそういった宣伝文句を使って、漫画やアニメ、ラノベは子供だけのものでは無い、
大人も嗜むべきモノであると主張する。
ただ、そんな宣伝文句をつけただけで子供向けの漫画やアニメ、ラノベが
大人も楽しめるように進化するなら苦労はしない。
子供が楽しむ要素と、大人が楽しむ要素は基本的に別だ。
子供向けに特化すれば大人が楽しめ無くなる。
大人向けに特化すれば子供が楽しめ無くなる。
子供向けも大人向けも狙おうとすれば中途半端になる。
本当に『大人も楽しめる』作品は非常に少ないと言えよう。
何を以て大人なのかという部分はあるが。
最近の作品で言えば、鬼滅やスパイファミリーの映画なんかは
親子連れで見るパターンが多かっただろう。子供は勿論喜ぶし、
親も楽しかった、見れたなんて感想をその場では述べるかもしれないが、
その後原作の漫画を買うだとかアニメを視聴するだとかに発展するケースは少ないだろう。
1週間後には基本的に頭の中から消え去っているはずである。
この場合『大人も楽しめる』という扱いでいいのかは疑問が残る。
思い出補正があれば話は別だ。
子供の頃に読んで楽しかった作品は印象が強く残るため、
大人になって読んでも当時を思い返したりして楽しめる。
私が定期的に北斗の拳の話をしているのは子供の頃に読んだからだ。
ちなみにドラゴンボールは読んだことが無いし、今読んでも楽しめないだろう。
悲しい事を言うが、大人の中でも基本的に成功者やエリートはそういうのを見ない。
結構前に某政治家がローゼンメイデンを手に取ったという理由で持ち上げられていたが、
それが話題になるくらい珍しい現象なのだ。
どう取り繕ったところで漫画もアニメもラノベもフィクションであり、
現実世界で成功してやるぜ、なんてマインドの人間はあまり触れないのだ。
ある意味私がわかりやすい例だ。学生時代は典型的なキモオタであり弱者だった私が、
社会に出て結果を出して独立して今では個人ではあるが社長にまでなっているのは、
それまで愛していた漫画だとかアニメだとかを切り捨てて、
社会で生き抜くために必要な能力を身に着ける事を優先したからである。
大企業が漫画とかとタイアップするのも子供に買わせて売上を増やすためであり、
上層部が作品のファンだからでは無い。
別に大半の人間は成功者やエリートを目指している訳では無いからいいだろ、
という意見もごもっともだが、社会はそれでは困る。
最初から平均レベルを目指していても基本的には平均レベルになれない。
最初から上のレベルを目指す人がたくさんいて、その中で一部は上のレベルになれて、
多くの人は中の上とか平均レベルに落ち着くのだ。
最初から『自分は平均レベルでいいし』なんて人間には基本的に落ちぶれる。
世の中は競争社会なのだから。
落ちぶれた人間がニートだったり引きこもりだったり
社会的弱者になってしまえば、社会としては負担だ。
だから社会に出た大人は成功者になるぜ、エリートになるぜ、
というマインドを持つのが望ましいのだ。
そういうマインドの人間が増えた結果競争が激化して、
結局平均レベルや落ちぶれる人間の数が変わらないとしても、
それは相対的な話であり絶対的なレベルは確実に上がっている。社会の負担は減る。
出版社だったりが『大人も楽しめますよ』と漫画やアニメやラノベを勧めている現状は、
どうにもそれを邪魔しているように思えてならないのだ。
子供の頃はバトル物だったりスポーツ物にハマって闘争心を持つようになり、
勉強に運動に真面目に取り組むようになって、
そのうち現実と同様に恋愛物にも興味を持ち始めて、人に好かれる人間になろうとして、
大人になって社会に出たら段々とそういうのから卒業して、
目の前の仕事だとか、子育てだとかにリソースを割くようになる。
私の理想はこういったシナリオだ。
大人になって、社会人になって漫画やアニメ、ラノベを見るなとは言わない。
そもそも私はあまり見ることはないが自分で小説を書いているのだから。
ただそれは自分で考えて探して見るのが望ましい。
周りが『漫画やアニメは大人でも楽しめるんだ!』と煽って、
子供に人気の作品を勧めるような環境は反対だよ。
そういう意味では、大人になったら一度漫画やアニメを取り上げて、
そこからしばらく社会で経験積ませて、自分で判断する能力を身に着けた上で、
改めて漫画やアニメに触れさせたい。
その方が本当に自分に合った、本当に大人向けの作品が見つかるだろう。




