クリエイターに社会人経験は必要か
私が小説を書き始めた理由は
『普通に就職なんて無理だから作家業になるしかない』
という非常にクソみたいな理由である。
しかし作家になることは出来ず、その結果どうなったかと言えば、
『大学院を出てエリート社会人となり、数年後に独立して金銭的にも時間的にも余裕が出来たので
小説を改めて書こうという気持ちになった』
なめてんのか?
とにかく書いてる内容がアレでも、しっかり国立理系の大学院を出て、
メンタルを病む事も無く懲戒免職を受ける事も無く数年間社会人経験を積んで、
しかも今は個人事業主として一人でやってるわけだから、意外と学や社会常識があったりするわけだ。
そういう立場から今回の例の事件に関する関係者の主張とかを眺めていたのだが、
『クリエイター(特に漫画家)が社会常識あんまり無い問題』がどうしても出てきてしまう。
一般的な仕事では無いし、小説ならともかく漫画は仕事しながら、も難しい。
学生デビューしてそのままクリエイターになった人なんて触れる機会もなかなか無い。
引きこもりやニートが一発逆転のために狙うような業種でもある。
ファンもいるし収入もある人達ではあるが、それとこれとは別問題だ。
ここではこうして趣味で物書きをやっているクリエイター側の人間ではあるが、
それ以外ではバリバリの社会人ではあるので、出版社側の事情だとかも理解できるし、
自分自身がレアケースであり、それを基準に世の中を変えることの愚かさも知っているので、
漫画家の主張に素直に賛同は出来ない。
一部の大ヒット作者を除けば不安定な仕事でもある。
シリーズで200万本、となればそれなりのヒット作者とはなるだろうが、
印税を考えたら作者の稼ぎは1億5千万くらい、
税金もそうだし漫画家の場合はアシスタント代もかかる。
原稿料とか他の収入もあるがこれくらいのヒットを出しても遊んで暮らせはしないだろう。
生活のためにも絵や小説以外の能力はある程度社会で身に着けた方がいい。
何より頭の悪い作者がファンとかに持て囃されているのを見ると、ちょっとイラっとする。
昔から先生と呼ばれる仕事の社会常識については問題視されていた。
教師だって基本的に大学を出てすぐに学校に勤める訳なので、
多くの学生が羽ばたいていく一般社会の事はあまり知らないのだ。
ただクリエイターにそういった常識を身に着けさせることが良いとも思えない。
我々は常識人の書く話にあまり興味を持たないからだ。
まともな人間に『追放された先で大活躍、追放した側は破滅してざまぁ』なんて作品は作れない。
・学校や会社で評価されていない
・それでいて自己評価は異常に高く、自分を評価しない周りを憎んでいる
こういったプライドが異常に肥大したゴミのような人間で無ければ、
例え流行っているからと書こうとしても、恥ずかしさが出てしまう。
異世界転生だのチートもそうだ。
大半の人間は現実世界で、与えられた能力を使ってそれなりにやっていけている。
それができない人間だからこそ、異世界やチートを本気で望む。
どうしようもない人間のルサンチマンは時として弱者の共感を呼び、
それ以外の人間にとってもエンタメとして受け入れられる。
社会常識を全く理解していない人間の描く社会は、
それまでの社会に慣れた人間からしたら奇妙なものであり、そこに魅力を感じる人もいるだろう。
私の小説だって人気なのは基本的に働く前の、
周囲からも変人として扱われ、精神もかなり病んでいた時期だ。
今ではそこら辺の人間よりも遥かに冷静な判断を下せるようになってしまった。
もう奇抜な発想なんて出来ない。
この時期に自殺というフレーズを出すのは良くないとは思っているが、
『自殺直前の頭おかしい人間がその頭の中を漫画や小説にして自殺した』
という作品があれば、
『エリート街道を歩んできた人間が今までの人生を漫画や小説にした』
なんかより遥かに読んでみたくなるだろう。
怖いもの見たさ、といった感じで、やはり非常識な頭のおかしい人間の書いた作品の方が興味が湧く。
そういう訳で純粋な読者の観点からは、クリエイターに社会常識なんて不要と考える。
頭の弱さから破滅してもそれはそれで刺さる話を作ってくれそうだ。
残念ながら大半の人にとっては、作者が好きじゃなくて作品が好きなんだよ。