底辺が底辺から搾取する
『庶民は上級国民に搾取されている』
そんな事を言っている人をたまに見かける。
税金とかそんな感じの観点から言えば、むしろ上級国民と言われている側が庶民に搾取されている側だ。
いわゆる所得税は収入が上がるほど税率も上がるようになり、
所得400万の人の所得税は40万程度だが、
所得4000万の人の所得税は1300万くらいだ。
やりたいことのために周囲の人の数倍頑張ったのに、税率があがるせいで収入は数倍にならない。
こんな酷い話が許されていいのだろうか? と収入が上がった今なら思う。
(ちなみに私のような個人事業主は法人化することで税率の上限が下がる。
実は来月には私も個人だが経営者になる予定だ。人生何があるかわからんね)
そんな愚痴はさておき、庶民が搾取されているとして、一体どんな酷いやつがそれをしているのか?
それを真面目に考えた結果、搾取しているのは庶民、というより底辺的思想という結論に至った。
『働いたら負けだ』とか、
『結婚や育児はコスパが悪い』とか、
たまに聞こえてくるそんな論調を言っている人に果たしてエリートや家庭持ちがいるか?
基本的にはいないだろう。金持ちによって生かされている無職や底辺の戯言だ。
だが、そんな底辺の戯言に同調してしまう人がいる。
人間は楽な方を、信じたいものを信じるからだ。
インターネットが普及したことで、底辺的思想はネットの世界では目立つようになる。
コミュニティによっては多数派にもなるだろう。
ただ、多数派になったからって正しいとは限らないし、
人間は年を取るので、今は良くても10年後は……というケースも珍しくない。
人付き合いなんて面倒なだけ、と言っていられるのは若い頃だけだ。
このコミュ障極まれりな私ですら、真面目に婚活を考えているくらいだ。
発達障害のいじめられっ子という社会的弱者であった自分が今こうしてやっていけているのは、
そういった心地よい底辺的思想に同調せずに現実的思想を、生きる術を身に着けたからだ。
そして問題なのは漫画やアニメや小説といった文化における底辺的思想の立ち位置だ。
例えば私の嫌いなジャンルで言うと、
『自分を追放した側が悲惨なことになり自分は新天地で評価される』
これはもううだつの上がらない社会人の妄想、と言っていい。
自分は上司よりも仕事が出来るという肥大した自尊心と、評価されない現実から周囲に責任を求める図々しさ。
実際に自分は上司よりも優秀だと会社を辞めて独り立ちした私だからこそ言う資格がある。
こんなものを好んでいては成長しない。
しかし悔しいことに、そういった妄想を形にした人達の中には、
漫画家や小説家として評価されて富も名誉も手に入れているのも存在する。
それは何故か? そういった思想に同調したり、普段から同僚や上司を憎んでる人達がいるからだ。
ただ口を酸っぱくして言うが、こんなものを好んでいては成長しない。
作者は豊かになっても、読者は豊かにならない。
これが私の主張する、『底辺が底辺から搾取する』、だ。
自分が日頃から考えていた社会だったり周囲だったりへの不満を表現してくれるお話を見つければ、
夢中になってしまうのも仕方がないかもしれない。
しかし大事なのはその不満が正当性のあるものかどうかだ。
同調ではそれを考えることはできない。
ましてやそれまでは特に同調していなかったのに、小説家を目指すあまり、
『人気のために流行りのこういうジャンルを書くぞ』なんて絶対にやってはいけない。
それをやったら人間性がどんどん変わっていく。ミイラ取りがミイラになる。やめろ。