表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

喜びも束の間、邪神現る。








 ダンジョンの出現以降、

 バースデイを迎えた16歳の男女に、

 不思議な力は宿るようになった。


 力を得て『ステータス』を獲得できるのは、

 二人に一人。努力しても実らなかった、

 何者にもなれなかった僕に残されたラストチャンスだ。


 もう、運否天賦にすべてを賭けるしかない。


 (負けの込んでいるギャンブラーって、

  こういう心境なのかな・・・。)


 商店街の福引でも、テキ屋の祭りくじでも、

 ろくな物を当てたことはない。

 どれだけスクラッチを削っても200円も当たりはしなかった。


 才能に恵まれなかった僕は運にすら見放されていた。

 だからこそ、結果を知るのが怖くて仕方ないのだろう。


「僕のように眠れない夜を過ごしている人が、

 世界中にいるのかな・・・。」


 ………。


 ビービービー♪ 


 思い耽っていると――

 午前零時にセットしていたスマホのアラームが鳴った。


『貴方は選ばれました。

 ステータスを開いて、信仰する神を選んでください。』


 頭に人間味のない、無機質な声が語りかけてきた。


「うっ……うっ……うっ……。」


 僕は泣いていた。男泣きだ。

 張りつめた糸は切れ、滂沱の涙を流した。


 さもあらん。

 選ばれたことなど一度もなかった。

 誇れるモノなど一つも何もなかった。


 自分に自信を持つことできずに、

 持たざる者(弱者)として負け続けてきた。


 (うっ ここでもダメだったらって・・

  ずっと不安だった・・怖かった・・本当に良かった。

  これで僕も少しは変われるだろうか?)


 心は軽くなって、気持ちは前をむいた。

 そして、僕は涙を拭いてステータスを開いた。


「ステータスオープン!」


 声とともに、

 半透明の黄色いボードは出現して宙へ浮んだ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 【鈴木明】

 種族:人間  Lⅴ:0

 信仰:なし 

 経験値:1/5

 魔力:1/1

 攻撃力:5

 防御力:4

 速度:6

 感性:7

 知力:5

 魔法:なし

 スキル:なし

 称号:なし

 装備品:なし

 ―――――――――――――――――――――――――――――


 ステータス画面には、触れることができるようだ。


 タッチパネルように画面を操作して、下にスクロールした。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 火の神・アドラヌス    

 水の神・ネプトゥーヌス

 風の神・ウェンティ

 雷の神・フルゴラ

 大地の神・テルース

 月の神・ルナ   

 太陽の神・ソール 

 戦いの神・マルス 

 癒しの神・パナケア 

 信仰しない。

――――――――――――――――――――――――――――― 


「神か・・・。」


 子供の頃は神に祈っていたかもしれない。

 神社へ行ったとき、欲しいゲームがあったとき、

 幼馴染を羨んだとき、虐められていたとき。

 でも・・・今は祈っていない。気づいたからだ。


 どれだけ祈っても、どれほど願っても、

 神は助けてくれないし、何も与えてはくれないのだと。



「だから、僕は神には祈らない!」



 僕は意を決して『信仰しない』にタッチした。


 すると、さっきの無機質な声とは違う何者かの声が、頭に響いた。


「カッカッカッ 中々どうして面白い奴じゃのう。」

「え、誰ですか!? 僕の脳内で騒いでいるのは!?」

「わしの名はウルスマギナ。混沌を司る邪神じゃよ。」

「ええええええええええええええええええ、邪神!?」

 ………。


 僕は驚きの余り目を見開いた。

 それは自室にカサカサ動く黒い奴が、現れたときぐらいの衝撃だった。


「うむ。他の神を信仰した者には干渉できぬが、

 お主のような無神論者なら話は別じゃ!」

「で、でも、神の声が聞こえるのは加護持ちだけだと、

 聞きましたけど。」

 ………。


「ほう、知っておったか。

 確かにわしら神は見込んだ人間以外には、

 姿を見せたり、語りかけたりはせん。」

「ですよね、ニュースでやってました。

 神の加護持ちは百万人に一人だと・・・」

「そうかい? そりゃあ、めでたいことじゃのう!」

 ………。


 ジィーーー。


「ええ、まさか!?」

「お主は邪神に選ばれたのじゃ!」


 それは茶目っ気あふれるお爺さんの声だった。


 僕は友人たちと同じ学校を受験して、

 自分だけ落ちた受験生のような心境で「そんな・・・。」

 と膝をついて頭を抱えたのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ