とりあえず七話目
オレは手に持ってる剣を高々と掲げてみせた。
亀は事態がよく理解出来なかったらしく、亀なりに顔をしかめて見せている。
「お主は何を言ってるんだ? それはさっき町の武器屋で、ゴミ同然の価格で買い取った物じゃないか」
「ふ……所詮亀に堕ちたお前には解らんか。これが伝説の剣だ、そう……エクスカリバーだ!」
亀はオレの遠大な計画をようやく理解出来たのか、その表情からは驚きと尊敬の念があふれ出ていた。……表情なんて分からんが。
「お、お主まさか……そのクソ錆びれたボロ剣を伝説の剣だと言い張ろうと言うつもりか!」
「錆びれたなどと……趣がある、と言って欲しいな」
「ちょっと待て、それはお主、詐欺というものじゃないのか」
勇者を……いや、宝剣授かりし勇者を指して詐欺師呼ばわりとは、まずはこの亀を叩き斬って伝説の幕開けとしてやろうか。
「そもそもこの作品自体が詐欺みたいなもんなんだから良いだろ。要は結果だよ結果!」
「最終結果は牢獄行きになるぞお主……」
とりあえず町に戻り、魔王がいる場所の情報を得るため聞き込みを開始することにした。
まず一人目は顔見知りのチドリに、何でも良いから手掛かりになればと尋ねてみる。
これまで何人もの冒険者たちが旅立って行ったんだ、何か少しぐらいは聞いたことがあるだろう。
「あぁ魔王城ですか? それならすぐそこを流れる大河の対岸にありますよ。晴れた日はよく見えるんですよねぇ」
「…………は?」
ちょっと良く理解出来なかったオレは、町を囲む城壁の上から外側を見晴らした。
のどかな草原が広がる先には大河が悠々と流れ、その向こう岸には蒼天を泳ぐ雲を掴もうとするかのように山々がそびえ立つ。
その山間には歴史を感じさせる趣深い古城が……。
「――あれか!」
何なんだ……普通魔王の住む城なんて言ったらずっと遠くにあるもんだろ。
勇者パーティーが長い旅を経て仲間を増やし、経験を積んでようやく辿り着く場所じゃないのか。
なのに何だこの設定は、一体どこのドラゴ○クエストだよ。竜王か? ラスボスは竜王なのか?
ふとオレの脳裏に疑問が浮かんだ。オレはもう一度チドリに会うため城壁を後にした。
「どうでした? 見えましたか?」
疲れてるようにでも見えたのか、チドリはオレに気を使うように声をかけてきた。
「あぁ、確かに見えはしたが……」
オレは気になったことを素直に口にした――あぁ……告白した時もこれぐらい自然と言葉に出来てたらなぁ。
「今までにどれだけの者達が魔王の城に挑んでいるんだ?」
一瞬チドリはキョトンとした表情になり、オレの質問を噛みしめるように繰り返し確認してきた。
「どれだけ挑んで……とは、人数のことですか?」
「ああそうだ。まだ魔王がいると言うことは勝利した者はいないんだろうけど、何人ぐらいの冒険者が魔王と戦って来たんだろうと思ってな」
「……戦うどころか、あの城まで辿り着いた人はいませんよ」
オレは戦慄を覚えた。
あれだけ近くに城が見えるのに未だ辿り着いた者がいないとは……。
きっと河に強力な魔物がいて渡れないのか、あそこに見える城は幻覚で実はものすごく遠くにあるのか……。
だがチドリが続けて言葉にした事実はオレの想像を遥かに越えていた…………ナナメに。
「あの城に向かうには、まずここから北にある死の森を通らないとなりませんが、そこを無事に抜けられたとしても、次に待っているのが……」
「ちょ……ちょっと待て、河を渡るんじゃないのか?」
「え……? 皆さん徒歩か馬ですので、河からは行きませんが……」