とりあえず六話目
森で魔物共を狩っている間に思ったことがある……。
アニメや漫画であれば、ド派手な戦闘シーンで視聴者を魅了することが出来るが、小説の場合は文字に起こして伝えなければならない。
毎回戦闘が起こる度に細かい描写で伝えていては、書く方も読む方も疲れるんじゃないか。
そこでオレは考えた――必殺技だ。
この必殺技を使ったらとにかくすごい攻撃をしてるんだ……と言うことにしておけば、同じ言葉を使い回すこともできるし、読む方だって楽だろう。
後はネーミングだ。あまりに中二っぽい技名では読者が引いてしまうが、印象深い名前でないとインパクトが与えられない。
「そこでだ、読者に技名を考えてもらい感想欄に書き込んでもらう……つまり! 『読者巻き込み型ノベル』として新たなジャンルの確立を目指すんだ!」
「いやちょっと待て、誰も書き込んでくれなかったらどうするんだ? そこまで熱烈なファンがいると思ってるのか?」
「お前は神のクセにネガティブだな。この作品の人気が出ないとどのみちオレは帰れないんだろ。なら人気作品になる前提で考えるんだよ」
「お主はポジティブ過ぎるだろ。たがそれならば、ブックマークが増える度に技の威力が増していく、と言うのばどうだ?」
「お、乗って来たな。評価が上がるほど攻撃範囲が拡がるってか?」
「「あっはっはっはっはっ…………はぁ」」
夢が膨らむごとに、現実からは遠ざかっていく感覚がオレたちを覆った。
もう少し現実味のあることを考えてみよう。
たくさん存在する魔王討伐者の一人として魔王を倒しても、読者ウケはしないだろう。せっかくチート能力があるのだから、ブッチギリに飛び抜けて目立ったうえで魔王を倒してこそ、読者もスカッとすると言うものだ。
「ならばどうするのだ?」
「伝説の剣を手に入れる」
チドリから聞いた話によると、この世界の何処かには、人々の間に語り継がれる伝説の武具が眠っているらしい。
その伝説の武具を手に入れた者こそが、名実共に真の勇者として人々からの信望を集め、他の粋がった冒険者どもをざまぁし、読者からの評価も獲られると言うわけだ。
「で、お主の考えは分かったが、その伝説の武器とやらは何処にあるのか知ってるのか?」
オレはこの無知な亀に不敵な笑みを浴びせ、上京するためだけに選んだ三流大学合格者の至高なる遠謀深慮を説いて聞かせてやることにした。
「亀よ、お前の目は節穴か? 伝説の武器ならここにあるではないか」