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とりあえず五話目


 町に戻るとまずオレは武器屋に立ち寄った。

 最悪の場合、防具は無くてもなんとかなる。まずは武器だ。


 壁に飾られている武器はどれも値打ち物で、支度金だけでは手が出せない。

 宿代や食費、移動にも金が必要になるかも知れない。抑えられるだけは抑えておかないとな。


 オレはカウンター横に置かれていた空き樽に、まとめて入れ込まれた剣の一本を手に取った。


「オヤジ、コレはいくらだ?」


 ゴミ同然の剣だったがおかげで安く済んだ。要は武器なら何でも良かったのだ。


「よし、とりあえず試し斬りに行ってみるか」




 王様はすでに何人もの冒険者たちに、魔王討伐の命を下していた。どうりでオレみたいな奴の言うことをすんなり受け入れたわけだ。


 魔王討伐の任についた者にはもれなく獅子の金バッチが与えられ、通行手形の代わりとしても認知されてるらしい。売ればそれなりの金にはなりそうだ。

 これならチドリにも魔王討伐を志願するように教えてやっとくのも良いかも知れないな。


 オレは城下町を出て近隣の森へ散策に出た。

 この辺りの魔物相手にこのボロ剣でどれだけ戦えるのかを判断し、場合によっては防具の購入も検討する必要が生じるかも知れない。




 魔物とはすぐに遭遇した。

 ゴブリンより遥かに大型の熊の魔物、バグベアーだ。


 バグベアーは素早く変則的な動きで突進して来ると、その鋭い爪で一息にオレの顔面を()き削りに来たが、オレの動体視力はその不規則な動きを完全に捉え、奴の鋭利な爪を唯一の防具で受け止めた。

 オレはバグベアーに聞かせるように防具の名を声高らかに叫んだ。


「ゴッドシイィィィールド!」


 静寂に包まれた森の中に、甲高い衝突音が鳴り響く。


「ちょぉっと待てえぇぇぇーい!」


「なんだ? どうしたゴッドシールド?」


「なんだじゃない! 何がゴッドシールドだ、何が衝突音が鳴り響くだ! 私を盾代わりに使うとか阿呆かぁっ!!」


 何なんだコイツは、ただでさえお荷物なのに、戦闘の役に立つことも嫌なのか。

 それならいっそのこと、ココで捨ててしまおうか、城の向こう側に河があったな、せめてそこに放してやるか、“勇者パーティーを追放された亀”――でスピンオフが出せるかも知れんな。


「おい! 聞こえているぞ!」


「なんだよ、ちょっとバグベアーやっつけるから待ってろ」




 その後、バグベアーの他にも何体か魔物を狩ったが、ボロ剣の性能には特に問題は無かった。要は力ずくで斬り裂いてしまえば良いのだ。

 亀はずっと不機嫌そうだったが……。


「おい、いつまで怒ってるんだよ。悪かったよ。ちょっと相談したいことがあるんだよ機嫌直せよ」


 オレが謝ってからもしばらくの間は首を引っ込め素知らぬフリを決め込んでいたが、大蜘蛛の巣に放置したまま立ち去ろうとしたら、ようやく口を聞いてくれた。話し合えば分かり合えないことなどないのだ。


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