とりあえず十四話目
この亀、こっちの世界の神じゃなかったのか。
「そうだ、私もフクツと同じ世界から来た人間だ。だから亜空間を開くことができるし、こっちの世界の人間には出来ない理由もそこにあるのかもな」
亀は実際に亜空間を開いて見せた……オレの直ぐ側で。
「あぶ……ちょ、吸い込まれ…………」
――吸い込まれなかった。
「おい危ないだろうが、吸い込まれてたらどうすんだよ!」
いつもくだらないツッコみばかりする亀の表情が重い。
オレは亜空間が開いたついでとばかりに魔王っぽい服を取り出した。まだユ○クロのままだったからな。
魔王っぽい服に着替えてる間にも、亀は深刻な顔つきで何やら語りかけてくる。
この時オレは気付いた――亀にも表情があることを。
今まではどうせ小説なんだから、幻想世界なんだからと流してきたが、事が大きくなれば無視も出来なくなる。
コミカライズ、果てはアニメ化にまでは対応出来るが、実写化となると難しいか……いや、今の時代はCGがある、デ○ノートの例もあるじゃないか。
……いつもなら亀がツッコみを入れてきても良さそうな流れだが、亀の表情は固いまま、その口から出てくる言葉も堅い話題が続いた。
「お主、今どこからその服を取ってきた……?」
まったくこの亀は何をほざいてるんだ、自分も今オレが亜空間から取り出したところを見ていただろうが。
「その服……どこの服か分かるか?」
「どこのってなんだよ、何のだろ」
オレだけじゃなく、チドリや魔王も話について来られず困惑している。
亀の視線はずっとオレに向いたまま、オレにだけ語りかけてくるように思えた。
「気になってはいたんだが、今お主がその服を取り出したことで確信した。私はその服を知っている」
ますますワケが分からなくなってきた。
知っているも何も見ればわかるだろ、魔王の服じゃないか。
亀はオレだけにわかる言葉で答えを示した。
「フクツよ……それはドン○ホーテで売っている服だ」
オレの全身に衝撃が走った――。




