とりあえず十三話目
主物語の骨組みが出来上がりオレは上機嫌だったが、何か物言いたげに、恐る恐るとチドリが手を上げている。
「なんだチドリ、言いたいことがあるなら四百字詰め原稿用紙二枚程度でハッキリと言ってみろ」
「は、はい……お話はわかりましたが、これでは物語としてワンパターンなのでは……と」
「心配するな。ワンパターンな展開は人気の可否に影響は無い」
実際、売れている作品はほとんどの物が似たりよったりの物語だ。
肝要なのは“箱”ではなくその“中身”。
異世界、チート、ざまぁに婚約破棄など、呆れるほどのワンパターンではないか。
問題なのはそこではない。
同じ学生服を着て、個性を出そうと髪を染めたところでそれは皆すでにやっていることだ。
〇〇48だってオレには全く見分けがつかんが、それぞれに個性なり色の違いがあるらしい。
つまり、“入り”は逆にワンパターンのほうが客は安心して入ってこられる。
「おいお主、今客って……」
「黙れ亀、今大事な妄想をしているところだ」
餅は餅屋、看板はわかりやすく明示し、他との違いは店に入って来てもらってから黙示される。
どんなに美味しい食べ物でも、まずは食べてもらわなければ伝わらないのだ。
だから作る側は葛藤する。
食べてもらいたいものと、食べてもらえるものは違うのだと。
本当の実力者と言うのはその両方を手にしている。
自分の作りたいものが、そのまま求められるものである以上の幸せがあるだろうか。
だが多くの、特に初心者は流されてしまうんだ。
求められているものを作る力を培うために、その創造力に蓋をして、派生的作品創りに没頭してしまう。
だがそれは悪いことではないはずだ。
古来より人は常に先人の歩んだ道を倣いなぞらい、そこから分岐発展して成長してきたではないか。
「わかりました大魔王様、ボクやってみます」
「よし、こんなところでグズグズと話を留めておく暇は無いからな、サクサク行くぞ」
まずはチドリに亜空間を開かせてみた。これが出来ればほぼ無敵と思って良いだろう。
「うーん……難しいですねぇ」
「出来ないのか? なんかこう……違う世界を想像する感じで……亀は出来るよな? オレをこっちの世界に連れてくるときに使っただろ?」
「あぁ、私はあっちの世界の人間だからな」
「だよな。だったらやっぱり……え?」
この亀、オレと同じ現実世界の人間だったのか!




