カセットテープが切れた後には
なろうラジオ関係者の皆さん、これからなろうラジオをきく方へ
日本語は難しいとマヤは思う。留学先を日本に決めてから必死で勉強してきたはずなのに、いざ日本人と話してみると分からないことが後を絶たない。
「黄色い声」を初めて知ったときには「赤い声」や「青い声」もあるのかと思ったものだ。
日本人の色の世界は本当に厄介だ。「肌色」はマヤの肌の色じゃないし「水色」は水の色じゃない。日本人はいろんな水の色を知っているというのに。荒れた海の灰色も住宅街に押し寄せた茶色も爆弾の後に降った黒も。
水色は何色か。そんなことを毎日考えていたらマヤは夜眠れなくなってしまった。
日本人の友達に相談すると「ちょっと待ってて。」と言ってカセットテープを一つくれた。
「安眠用なんだって。リラックスできるよ。」
その夜から枕もとにラジカセを置いて眠るようになった。テープからはシトシトという雨の心地よい音とゆっくり話しかける人の声。普段みんなもこれくらいで話してくれたら緊張しないのにと思う。
「ねえ、先輩…。」
女子校だからこんなかわいい男の子がいるはずないのにうれしくなった。日本人はこの甘い声を何と表現するんだろう。桃色に近い薄紫色の声だと思った。
カチリ
テープが切れるとこのラジカセは自動的にラジオに切り替わる。
「…今週も一緒に、小説家になろうラジオを聞こう!」
明るいライトブルーの声がした。そこは空模様みたいに茜色や黄色、青や鉛色に変わる変幻自在な声の世界。雨が降る世界にいたはずなのに気が付くと笑っていた。
(そうか、空色だったんだ。)
日本人は知っている。空も海もいつかはライトブルーになることを。
このラジオで世界が広がった。
声色。