アトリエアジェンダ
……ゆっくりと意識が覚醒していく。
目を開けるとそこには知らない天井があった。
ここがフォルゴの言っていた自宅なのか?
とりあえず状況確認が鉄則か。
窓からの景色を見る感じ時刻は昼頃、地面が見えないあたり2階あたり、天井までは250cmといったところか。圧迫感は不思議と無い。
木の床が広がっていて部屋の片隅にハシゴ、そして反対側には不思議な模様が浮いている。転送装着?よくわからん。
少し埃っぽい、屋根裏を無理やり部屋にした感じというのが第一印象だ。屋根裏部屋か。
それにしても殺風景な部屋だ、なんて思っていたら下から声が聞こえてきた。
「レナ、札持ってきて10枚位」
「はーい」
なんだか騒がしい。
下に降りてみるか。
ハシゴから下へと降り立った。そこはラボのような所で木の札から電気、火、水などが入った瓶がたくさんあった。ラボと言うには少し綺麗に整頓されているな、なんて関心していると
「よ!」
低音の可愛らしい声で話しかけられた。目線を下に向けると小学生位の身長の子がいた。
「よ!」
とりあえず返事をしてみた。情景反射だ。
「うち蓮奈、豊姫に頼まれて札取りに来た。」
「俺は神山」
「知ってる、悠太」
なんだこの子、グイグイパーソナルスペース詰めてくるな、子供だからか?いやいや最近の子は知らないおじさんに近づいちゃダメとか教わってなかったか?
「悠太、豊姫待ってる。あっち行こう。」
引っ張られるままラボを後にして雑貨屋のような場所へと連れてこられた。
「ずいぶんと寝ていたのね悠太さん」
目線をあげると落ち着いた綺麗な女性がいた。
「どうも、ええと、神山悠太です。何故俺の名を?」
「フフフフフ、ひ み つ で す。 」
怖いな、この人たちに心許していいのだろうか。
豊姫が慌てて手をバタバタさせながら
「悠太さん大丈夫よ、自称神から話は聞いていただけよ。」
納得。まあ転送先に自宅って選んだんだし、フォルゴの自宅なのだろうとは思っていた。
「それで、豊姫さん、なんて呼べばいい?」
「なんでもいいわよ、…まあさん付けは他人行儀だからやめましようかお互いに。」
やけに心の距離が近いな、俺自身この距離の詰め方は嫌いじゃないが好きでもない。このケースの場合はどちらかと言えば好きな方か。
「じゃ豊姫、これからよろしく。」
「こちらこそよろしくお願いします、悠太」
「この可愛らしい子が蓮奈でいいのかな?」
「蓮奈、聖天子 蓮奈、種族で言うところの神ね、そして鳳凰なの。」
「鳳凰?」
「そうね、鳳凰!それと種族のことは触れてはダメよ、ケンカになるからね。」
「よくわからないがわかった、口にしないでおくよ。」
気まずそうに当たりを見回した。アトリエアジェンダが店の名かな。
生活するための小道具が並べられる所を見ると
「ここは雑貨屋?」
「半分正解かな。」
「半分?」
「そうね、表向きは生活雑貨兼カフェ!まあ、カフェと言っても椅子とテーブル準備して自動販売装置置いただけだけどね。」
「表向き?」
「本業というか主な収入源はさっき蓮奈に持ってきてもらった木の札を売ることかな。」
「ただの札を売るだけ?」
「ただの札じゃない、わかりやすく言うと魔法の札ね。」
「魔法の札……」
1枚貰ってみたがよくわからない絵が書いてあった。
「説明したいのだけれども、これの絵のセンスは蓮奈の気分ね。」
そこじゃない、気になるのは魔法の札のことなんだけどな……
「あ、そうそう悠太、蓮奈と一緒にこの木の札の材料を調達してほしいんだけれども一緒につきあってくれないかしら?」
「まあいいけど、ついでに蓮奈に道案内と街の案内頼んでもいいか?」
「もちろんいいわよね?蓮奈?」
「お散歩行くー!」
蓮奈は乗り気だ。
「じゃあ出発するか、蓮奈頼む。」
「おー!」
「豊姫、行ってきます。」
「あ、そうそう、蓮奈のそばを離れないでね!特に森に入ってからはね。」
ハイハイ了解、と手を振りながら蓮奈の後を追って店を出た。