神様のお願い
突然ブラックアウトしたと思ったらいきなり神を名乗る光の玉から
「世界を救ってはくれぬか?」
なんて言われても混乱するだけだ。
とりあえず世間話でもしてみるか?
「で、あなたは神様?」
「左様、神である」
「……」
自分で神様とかいう人初めてみた。
世界を救えって言っていたよな?
「何かその…神様はやらかしたの?」
さっきとは裏腹に光の玉がしょんぼりしたような気がした。
「実は我の住んでいる世界で戦争が起きようとしている。それを止めて欲しいのが我の願いなのだ」
戦争?あいにく俺は日本生まれの日本育ち、平成生まれと来たもんだ。ピンと来ない。
神は続ける
「ここ数年、平穏に世界が回っていた。それはそれ以前に我ら神が魔物を我の世界に放ったからだ。」
魔物を放つ……なんの事?
「人類に共通の敵を作ることで人々は団結し、ひとつの目標に立ち向かう、そのように差し向ければ人々同士の争いは起きないと考えたからである。」
確かに考えはわかった。
「で、神様さんよ、そしたらまた魔物を放てば解決するんじゃないのかな」
俺には関係の無い異世界の話だ、適当に流しておこう。
神様は少し考えて答えた。
「魔物を放つという事で人々の命もまた消えてゆく…」
悲しそうな声。
「そして我ら神の種族はまた同じ選択をしようとするやもしれん。そして神の行いは戦争をすることによっての利益がある、酒池肉林そんな外道な連中を我は止めたいのだ。」
「神様…あんたにとっては別にメリットしかないんじゃないの?止めたければ止めればいいんじゃないの?って言うだけなら簡単か。」
「……」
神様は迷っているように見えた。
「人間の習性、誰かに同意を求め、見もしない、直接聞いたわけでもないのに思い込み、それを信じ、流される。集団もとい同意がないと行動できない、否定を恐れ、うなずき、勝手にモチベーションを上げる。少なくとも神様…あんたはこれには当てはまらないよな」
ホント人間社会渡り歩くのも大変だよな。
人の言ったこと信じてばかりで自分の意見は無いのかよ。量産型乙。
「やはり我の見込んだとおりの人間。もう一度聞こう、我ら神の種族が犯した世界を救ってはくれぬか」
考えもなしに俺は
「いいぜ、退屈してたところだし。」
直感で答えた。
人生に退屈していたのは本当だ。
「感謝する。」
感謝されても事の大きさも世界も何も知らない、だからこそ面白いのかもしれないと心がソワソワした。
「で、神様さんよ、あんたの名は?」
「うーん、フォールアウトゴッドとでも名乗っておこう。」
「……フォルゴでいいか?」
「好きに呼ぶが良い」
気持ち分嬉しそうだった。
「了解」
光の玉が上に上がる
「して悠太の転移先だが…」
名前で呼ばれるなんて心の距離が一気に近づいた気がした。
「1、お姉ちゃんのお店 2、ロリっ子のお店 3、お年を召した貴婦人の店 4、ランジェリーショップ!これオススメ! どれが良いか?」
まともなところがない気がする。
違う、ただのおっさん脳か?
というか女癖の悪そうな神様だな…
ここは突っ込まなくていいだろう。
「自宅とかは無いのか?」
「…あるぞ」
悲しそうなフォルゴ。
「じゃ、自宅でおなしゃす。」
光の玉がしょうがないと言わんばかりに輝きが曇った。
「自宅はないぞよ!」
「じゃ帰る。」
「すまぬすまぬ、では自宅で決定ぞ!」
いきなり光の玉が強く輝き出した。
まるで魂だけが飛び立つかのように身体が消えてゆく。
「悠太よ、おぬしの魔力は強すぎるものがあるから扱いには気をつけるのだぞ!そして…」
最後に何か言いかけていたが聞き取れなかった。意識はまたブラックアウトして行った。