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悲愴な者・春纏い
『悲愴な者』
鏡の中に不幸を見た
肌には擦り傷や切り傷が散乱する
瞳の奥に不幸を見た
私はその小さなナイフを握りしめる
そっとその境界線の奥へ
ただ動かぬ模倣品が視界をグラグラと揺らす
シャキシャキと頬に伝う鉄
ポツポツと這う痛みの中で私は人を呪う
その笑顔もその泣き顔も
全ては因果応報に落ちればいいと思う
罪の源は自分で
足りなければ私が注げばいいのだと
だが人の幸不幸は
望まぬ私を含めながら
塞翁が馬と釘を打つ
幸であることが私の不幸だというのなら
あなたの不幸が私の幸であるならば
ただ、そのしあわせを願うだけ
『春纏い』
薄いヴェールの下
そこには春がある
君を想うと日々苦しい
冬は白く濁り、またそれは春を隠す
ただ愛おしい、その思いだけが春を見せる
脳なしには韻など踏めず
あげる詩などないけれど
過ぎるのを許されるのならば
共に纏いて口づけを