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蒼天夏草・夜光虫
『蒼天夏草』
肌に触れる音と光の波
風と共に流れる川の如く
夏の香を運ぶ
サラサラと揺れ目の端に映る
民家の夏草が香り立つ
見上げれば遠く
延々と続く澄んだ青
ビー玉を覗くような世界
幻想は未だ空にあり
蒼天夏草、我を焼く
灼熱地獄に大差なく
だけれどどこか涼しげで
またその硝子に吸い込まれる
『夜光虫』
暗い暗い水面
渦を巻く夜光虫
星空を写す水盆は鏡
空も海も黒く
足音だけが聞こえる
港町の街灯は果てた
今はただ、歌だけが聞こえる
薄い青に光る水面の歌
その青で、夜空は照らせぬが
帰りの道標にはなるだろう