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三日月・雨流れ
『三日月』
たとえば月
好きな女性を見るならば
そのすべてを愛そうとするように
私は月のすべてを愛した
なんでもない日の夜に、ギラギラと光る君
三日月は山吹の色で光る
周囲の雲を裏からじわりと照らしつつ
その瞳は私を睨むように
その真意は測りしれず
まさに深淵であった
そんな君も美しく、私は何度も魅入られる
惚れっぽいと自覚しながら
『雨流れ』
私の心は雨流れ
痛く滲んだ血でさえも
心傷に浸る愚かさも
雨は許してくれぬのだ
傷は傷たる前に消える
流された血によって証明を
流し流され排水溝
滲む匂いに咽び泣く
嗚呼、全て流してくれ
その許されない心が
私をより生かすのだから