バスコンはあげませんよ?
『さぁ、時間だ、次行くよー。まぁ、ダメでも始めるけど。近くにいる者は同じ場所に転移するよー。死んだ時に使ってた物や所持してた物は所持したまま転移するから、携帯電話やスマホは通話とメール機能のみだけど使える様にしたよ。携帯電話やスマホ、車やバイクなんかはアーティファクトにしたから魔力で動くからね。あぁ、所持してた現金や電子マネーは、こちらの世界の共通硬貨に両替してあるから、確認してねー。あと通帳、カード、印鑑の全て持っていた人は銀行口座の現金も異世界通貨にして持っていけるからね。カードだけ、通帳だけ、の人は残念ながら銀行口座のお金は持っていけないよ』
「不公平だ!車や金を持ってる大人の方が、有利じゃないか!そこにあるバスはキャンピングカーじゃねーか!ズルイだろ!」
「そーだ、そーだ! 俺達にも車かバイク寄越せ!金寄越せ!」
先程から騒がしい高校生の2人が不公平と、声を荒げている。恐らく、余りお金を所持していないのだろう。
すると、それに賛同した人達からブーイングが飛びかい、車やバイクを持つ人を睨み付ける人や私達が乗るバスコンに近づく人が出てきた。
裕史さんは、ドアロックがかかっているか視線で確認している。
『不公平で結構!車もバイクもキャンピングカーもお金も僕が与えたんじゃないしー、元々、本人の持ち物だもん。文句言われる筋合いはない。そんなに欲しいなら、お金出して売ってもらったら?君たちにタダで車やらお金を上げたら、それこそ不公平でしょ?ワガママ聞いてたら際限がなくなるし。文句あるなら、面倒だし魂を消滅させるからでてきてくれる?………さてと、文句ないようだから次は身分証配るよー……、目の前にクレジットカードみたいなのが出たね?それが身分証のカードだよ。名前を変えたい人は今、念じてね!後からは変えられないから、 3才以下の子供は保護者が変えられるよ』
虹色玉ちゃんに舌打ちしつつ睨み据えていた2人が引き下がると、ブーイングしていた人達も渋々ひきさがった。
流石に魂を消滅させられたくないのだろう。
目の前にカードが現れた。
種族と名前以外は何も書かれていない。
種族はハイヒューマンで名前はユカコ・オオブネって書いてあるけど、本名って教えていいのかな?
ラノベでは、ダメなヤツも多いんだよね。
「母さん、小説では本名バレると大変な事になるパターンが有るけど、どうする?」
「母さんも、今同じ事考えてた。どうしようかな、変えちゃう?」
「そんなパターンがあるのか。じゃあ、俺はヒロで、裕香子はユカ、裕星はセイ、裕陽はユウ、蓮叶と桐亜は身分証がないけど呼ぶときは蓮叶はレン、桐亜はキリにしよう。苗字は…どうする?オーブにでもするか?」
「父さん、苗字があると貴族だって思われるパターンもあるよ」
「なんだ、そんな事もあるのか。どうするかな……遠い国から来た設定で、その国では貴族じゃなくても苗字がある事にするとかは?」
「いいんじゃない?本当に異世界だから遠い国?から行く事になってるし苗字はオーブで決定ね。ユカ・オーブって念じればいいんだよね。……あ、本当にユカ・オーブに名前が変わってる」
「え!母さん、もう変えたの?早いなぁ。俺も変えよう」
「ユカは早いな。おっ…変わった。…ん?レンとキリは俺がテイムしてる事になってるぞ。レンとキリに名前を変えて……っと、できた」
丁度、家族全員の名前を変え終わると、虹色玉ちゃんのTime upがなされた。
『もう、良いかな?時間切れだよ。じゅあ、チュートリアルは向こうに着いたら発動するから、周りの人が巻き込まれない様に注意してねー。出来るだけ街か村が近い所に転送する努力はするけど、ランダム設定でどこに落ちるかわかんないんだよねー。遠い所や、山奥、ダンジョン内に転送しちゃったらごめんね。じゃあねー、良い人生を!』
虹色玉ちゃんは、言いたい事だけ言うと、消えた……いや、消えたのは私たちかな?
真白い空間にいたのに、今は車内から外を見ると森が広がっている様に見える。
『チュートリアルを始めます。出てきてください』
コンコンと外から燕尾服を着た執事風のおじ様が私たちを呼ぶ。
チュートリアルが始まるらしい。
頑張って覚えよう。