失恋ですよ?
「オーブ家の方々、キャロル様、お待ちしておりました。此方へどうぞ」
セバスさんに促されアケルナー公爵家の城に足を踏み入れました。
圧巻だよ!
ヨーロッパ風の城で素敵。
庭?通路?いや…馬車道?なのか?から見た城の外観も神秘的で綺麗だったけど、中も素敵だわ。
所々に飾られた絵や焼き物、ガラス細工も場所に合った物がセンス良く置かれていた。
こんだけ飾られているのに、下品や成金に見えないのがまた凄いわ。
昨日はあれから直ぐ、アケルナー公爵様は帰って行きました。
キャロルも一緒に行くのかと思ったら、プリンが食べたいからという理由で、昨日は私達の居る宿に泊まるってききませんでした。
キャロルは意外と頑固でブレません。
しばらく歩くとキャロルとセイ、ユウ、ロウ、トモ、レン達は別の部屋に案内されていった。
まぁ、お茶でも飲んでゆっくり寛いでいてくださいな。
私、ヒロ、シロ、モギじぃは遺体や馬車を出す為に広い場所、私兵の訓練場に案内されました。
「昨日は、ありがとう。今日は態々来てくれて助かった。すまないが、ここに出してもらっていいかね?」
訓練場には既にアケルナー公爵様の他にも十数人の人達がいた。
「はい、わかりました。……気をしっかり持ってくださいね?」
私は忠告をしてから、指示された場所に遺体と馬車を出す。
「ゔうっ、酷い…ここまで……ここまでするなんて酷い事をする…キャスリーナ辛かっただろう?痛かっただろ?苦しかっただろう?お前の仇はキッチリとる。キャロルの事も任せておくれ、立派なガルシア女伯爵に育て上げる事を誓うよ。だからローラン君と安らかに眠ってくれ」
アケルナー公爵が、身なりの良いご遺体の脇に膝立ちになり語りかける。
キャロルの両親であり、妹夫婦でもある。
またアケルナー公爵様の目から汗が出ているが、此処にいた他の人達も汗を流しているので気にしない。
よくよく見るとアケルナー公爵様と一緒に訓練場に居たのは、亡くなった方達の身内のようだ。
皆があまりの惨状に絶句し涙した。
それ程に酷い殺され方なのだ。
特に酷いキャロルの両親の惨状は目を背けてしまいそうになる。
「ヒロ殿ユカ殿、この姿はキャロルには見せられないと言っていたが、私の判断もそうなる。キャロルには私から言うよ。あの子にはとても見せられるものではない」
「そうですか。その辺はお任せします」
アケルナー公爵様は、ああ、と返事はするものの心ここに在らずで放心している。
私とヒロは邪魔にならないように端っこの方で待たせてもらう事にした。
心の整理整頓にそれぞれ、時間が必要だろう。
30分くらい待っただろう頃、アケルナー公爵が立ち上がり動き出した。
まずは馬車の中身をより分け始めた。
次に遺体を1箇所に集めその周りに、壊れた馬車の木材や用意していた木材を置き、魔法使いに命じ火をかけ始めた。
キャンプファイアーの様に火が上がる。
普通の火ではなく魔法の火だから、あっという間に骨だけになるだろう。
アケルナー公爵領では基本的に火葬を推進している。
急を要する時以外は全て火葬にしているのだ。
昔は土葬だったみたいだが、墓地からアンデットが大量に出る事件が隣のアルカイド国で起きたそう。
その教訓で土葬はやめて火葬をするようになったようだ。
私達は、そっと訓練場を抜け出しセバスさんに言って、子供達の部屋へと向かった。
あそこ(訓練場)にいつまでも居ても仕方ないし、はっきり言って私達は部外者だからね。
見られたく無い事や見せたく無いものも、あるかもしれないし、でてくるかもしれないし。
子供達がいる部屋に行くと、ユウが嬉しそうに歩いてくる。
両手伸ばして、走ってんだか早歩きなんだか微妙に分からん速度で突進してくる。
可愛いヤツよのう。
抱っこしてあげるよ!……生意気言いました。抱っこさせて下さい。
ユウを抱っこし、ほっぺたにチュー攻撃をしつつソファーに座る。
やんやー!って、言いながら私の顔をグイッと腕を突っ張って引き離すのが可愛い!
たまらんね、ぐふふふふ。
ん?…セイがなんだか、辛いのを隠してるというか泣くのを我慢してる感じがする。
私達がいない間に何かあったのけ?
もしかして青春だべか?
キャロルがお花摘みで少し席を外している間に聞きました。
聞くところによると、セイくんは見事に失恋しました。
キャロルちゃんは侯爵家の次男さんと婚約しているもよう。
婿をとって、ガルシア女伯爵になるらしい。
告白の前に婚約者持ちと発覚とか、だいぶ落ち込むだろうな。
ドンマイ!
でも、女の子は他にもいっぱい居るからさ。
失恋の痛みは時間と新しい恋が解決してくれるよ。
母はいつでも応援してるから。




