話し合いですよ?
「昼間はすまん。少し用があり外していた。先程帰宅してセバスに妹夫婦の大事だと聞いて、いても立ってもいられず来てしまった。キャロル、いったい何があったか聞いても良いか?」
アケルナー公爵様よ、口元にきな粉ついてますが?
気がついたセバスさんが、さっさと拭いていました。
キャロルがわらび餅もどきのおかわりを要求してきて一回だけよってあげたら、アケルナー公爵様が、私にもくれと遠回しに要求してきた。
もちろん、献上しましたよ?
献上しながら、何しにこの人達きたの?って思ったけど別にいいよね?
頷いたキャロルは話し始めた。
何度か声に詰まり、何度か涙声になりながらも、キャロルに起きた事を、両親に何が起こった事を、何故キャロルがここに来られたかを話す。
アケルナー公爵はただ黙って静かに聴いていた。
妹の最後を、義理の弟の最後を、キャロルの悲しみをただただ、目を瞑り黙って聴いていた。
そんな、アケルナー公爵の前にキャロルがある物を出した。
・ガルシア紋章のレリーフの懐中時計
・ガルシア紋章の印章
本来なら両方ともガルシア伯爵の当主が持つものであり、当主以外が持つとしたら、時期当主だけが許される物だ。
「伯父様、私は、どうすれば良いのかわかりません。両親や侍女達を殺した叔父のフーザンを許せない。しかし、私には復讐する手立てがありません。まだ成人していない私は、お父様が命懸けで守ったこれらの品を使い、ガルシア伯爵家の当主にはなれない。当主ではないのでガルシア伯爵の私兵を動かす力も権力もございません。……伯父様、私を助けて下さい」
お願いします。どうか助けて下さい。
キャロルは、そう言ったまま頭を下げ続ける。
「キャロル、とても辛い思いをしたな、頭を上げなさい。キャスリーナは、私の妹だ。そしてキャロルは私の姪、助けるのは当たり前だろう。……私もキャスリーナをもうこの腕に抱きしめられぬのかと思うと辛い、辛くて辛くて胸が張り裂けそうだ」
すまんと一言言うと、アケルナー公爵の目から汗が流れてきた。
キャロルもつられて目から涙が溢れた。
我慢できなくて当たり前、早すぎる身内の死だもの。
私達は、出来るだけ空気に溶け込めるように気配を消した。
一応の気遣いというヤツである。
一通り目から汗を流したアケルナー公爵様は、何かを決心したように顔を上げた。
「みっともないところを見せたな。すまん」
「誰もが、汗をかくものです。汗をかかない人はいませんのでお気になさらず」
「汗?……フフッ、そうだな…誰しも汗はかくものだ。…ありがとう」
お礼を言われるほどじゃないよ?
大人としての気遣いってヤツですよ?
「まず、お礼を言わせてくれ。キャロルを見つけ、ここまで無事に連れてきてくれてありがとう。オーブ家が居なければ、キャロルはやがては魔物に見つかり無残な事になっていただろう」
すまん、最初私は見捨てる判断をしたのよ!
お礼を言われると微妙な気持ちになる。ヒロが遺体の処理をするって言ったから私もやり始めただけ。
ヒロが居なかったら素通りしてたと思う。
ヒロ!私罪悪感が半端ないので宜しく!
「冒険者としては、当然の事でございます。……あと、大変いい辛いのですが、キャロル様のご両親達のご遺体はどうしたらいいでしょうか?」
「……遺体?妹夫婦のあるのか?」
「はい。あります。アイテムリングにあの場にあった馬車から遺体まで全て入っています」
アケルナー公爵様が前のめりに聞いてくる。
グッチャグチャだけどありますよ。
「本当ですの?てっきりあの場所に置いてきたのかと思っておりましたわ。その……結構な数の遺体だったと記憶しておりますが、その他に馬車もですか?」
「はい。護衛が23人、侍女が4人とキャロルの両親、馬車が5台です。遺体の損傷が激しいので今までキャロル様にお知らせしませんでした。正直、12歳の女の子が見るものではありません。見せるつもりもありません」
「何故ですの?私の両親ですのに」
涙目でキャロルがヒロに詰め寄るがアケルナー公爵様がそれを止める。
「キャロル、落ち着きなさい。……そんなに酷いのかい?」
「はい。俺…私達は最初、魔物に襲われたのだと思ったほどです。正直、大人でも見るのはキツいです」
「それ程か…わかった。私が妹夫婦達の最後を見よう。キャロルに見せるかは、私がその時判断しよう。…キャロルいいね?」
「はい、わかりましたわ。伯父様」
明日、アケルナー公爵家の城に行き、キャロルの両親達の遺体や荷物を返す事となった。
キャロルは明日の朝、私達と共にアケルナー公爵家に行く予定だ。
明日の朝一にプリンをご所望だそうです。
本当にキャロルはブレないね。




