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幼馴染に脈あるとでも思った?  作者: イヌガミ
3/15

憤怒

 「あっ、起きましたか?」


 隣を見ると橘の姿があった。


 やっぱり夢じゃなかったらしい。


 ベッドの隣で俺の看病をしている橘。夢と割り切っていたが、やはり違ったらしい。


 ならさっきのキスも現実で起こったことだったのだろうか。


 考えれば考えるほど顔が紅潮していくのが分かる。


「もう大丈夫だよ。授業でなくていいの?」


 橘は少し訝る表情を浮かべたが、何かの疑問が解けたように晴れた表情を浮かべる。


「さぼりました。」


 いやいや、なんか考え込んでたから結構重い理由でもあるのかと思ったら割と軽いんすけど。


 ってか、俺の看病って言ってたっけな。なんか悪いな。


「ありがとう。わざわざ。」


「いえいえ。雄介くんの為ですから」


 俺の為だと……。


 まあ、さすがに聞き間違いだよな。


 こんな陰キャぼっちの為にわざわざ保健室来るわけないもんな。しかも四大美女が。


 ないない。


「雄介くんの為ならなんでもやりますよ。」


 ぶしゅゅぅぅぅう。


 鼻からナイアガラの滝のように鼻血が溢れ出る。


 やべっ。また意識もってかれるとこだった。


 聞き間違いじゃなかった。俺の為ならなんでもできるだと。


 天国かここは。ここまできたら撃退された藤原にお礼でも言いたいくらいだ。


 あんなことやこんなことも。いやいや。さすがにそんなことは無理だな。


 顔から少し目線を落として、胸に目線をついやってしまう。


 俺の目線を見て一瞬パッと目を開かせて驚くが、ニコッと微笑みの表情を浮かべる。


「雄介くんったら変態さんですね」


「待ってくれ。決して邪な考えじゃないんだ。男の本能的な行動なんだ。」


「分かってますよ」


 微笑みを浮かべる橘。


 なんていい人なんだ。すんなりと解釈してくれるこの優しさ。


 どこぞの野蛮な女王とは違ってほんとに優しい。見習って欲しいものだ。


 バンッ。


 保健室のドアが勢いよく開けられる音が部屋中に響き渡る。


 暗いシルエットの人影が段々露になっていく。


 スカート姿にロングヘアー、腰に巻きつけているジャージ。


 大体予想はつく。というか鮮明に脳裏に浮かぶ。


 今までに植え付けられたトラウマも浮かんでくる。


 まじふざけんなよ。


 やはり人影の正体は藤原莉未であった。息を荒ぶらせて憤怒のオーラを放出している。


 急いで俺の傍まで駆け寄ると胸ぐら掴んで尋問を始める。


「あんた、さっきのどういうことよ」


「……」


 耳元でキンキンとうるさいな。猿か。


 どうせ喋ったところで罵声と暴言のハーモニーなので、無視をしてやり過ごす。


 一番の良い選択。


「なんとか言いなさいよ。」


 あーはいはい。無視続行と。


 橘は申し訳なさそうな表情で下を向いて、自分の存在を抹消しようとまでしている様子である。


 今までに何をされたか、その一つの行動で大体把握できる。


 俺も今までに同じような体験をしてきた。


 友達は失うわ、みんなから痛い視線を送られるわ、居場所を無くされるわ、もう散々なんだよ。


「あんたもなんか言いなさいよっ!」


 俺に呆れて胸ぐら掴むのを止めたかと思いきや、次は何にも関係ない橘に怒りをぶつけている。


 理不尽なメス豚だ。


「おいっやめろよ。」


 橘の胸ぐら掴んでいる藤原の腕を必死に握る。


 今までの怒りがまたもや込み上げてきて行動に出してしまった。


 後悔はしていない。


「なんでよ。」


「なんで!こんな女がいいのよ。」


「私だって、ゆうに好かれたくて色々してきたのにゆうは私のこと振るし、意味分かんない!」


「あれが、好かれようとしていた態度なのか?」


 藤原は「は?」という表情を浮かべている。


 まさかいじめている自覚すらなかったのか。しかもあれで遊んでいるつもりだったのかよ。


 まじ脳外科行った方がいいんじゃないか?


 今までの怒りをぶつけてやる。


「お前のせいで俺の全てが台無しにされたんだぞ?お前に分かるか?俺の気持ちが。考えたことあるか?」


 藤原が何た言いたそうな表情をしているが、そんなことお構い無しに嵐のように言葉を並べる。


「もう償えとは言わない。ただ、もう俺に関わるな。近づくな。分かったか?」


「そんな言い方しなくて…も……。」


 俺の顔を見た瞬間に全てを察したのか、それから藤原は何も言わずに、保健室を飛び出していった。


 まさか、一日で二回も泣き顔見ることになるとはな。


 てか、泣き顔ブスすぎるだろ。


「また、助けられましたね。ありがとう。」


 先程の橘の怯えた表情は嘘かように吹き飛んでおり、お日様みたいに眩しい笑顔が照っていた。

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