乙
「あんたまさか私に恋でもしてるんでしょ?まじきもいんですけどw」
「まあ、でも付き合ってあげてもいいけど」
「は?何言ってんの?お前みたいなくそと付き合えるわけないじゃん、自意識過剰乙。」
俺が放った一言で藤原莉未の表情は凍りついた。
その会話が最後の接点を持った瞬間だった。
藤原莉未は俺の幼馴染であり、また、学校のアイドル的存在である。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。どこを取っても完璧と呼べるものかもしれないが、
一つだけ欠点がある。それは性格が悪く、また、毒舌だということだ。
幼馴染でもあり、邪魔者でもあった。
女子と話せば、介入してきて邪魔をする。おまけにデマまで流して俺の学園ライフを滅茶苦茶にするわ。
まじでクソみたいな女だ。
その癖して、自分の囲いの男子と女子は多い。どうせ金で釣られているのだろうと思っていたが、洗脳の方だったようだ。
綺麗ってだけで雄餓鬼が群がる。劣情に駈られた単調な行動。
美人と言えば、性格がいいと思うだろうが、その真反対。
学園ライフまで潰され、どこに行ったって着いてきて邪魔をして、自分の糧になるなら誰でも潰すカス。
だから、俺は決めた。一発痛い目に合わせてやろうと。
小五から高一まで五年間ずっと我慢していた。
ただ、一回痛い目を見せるためだけに。だが、それだけの価値があると思っていた。
今、それが全て報われた。十六年間の付き合いもこれで終わり。終焉を迎えた。
もう終わりだ。すべて。こいつとの縁も何もかも。
清々しい気分だ。景色が違って見える。
今までの呪縛から解かれ、身も心も軽くなった。
周りの視線が刺さるように向けられる。当然のことだ。奴はクラスでも人気者であるからな。
この痛い視線も今ではどうでもいい。嬉しい気持ちの方が勝ってどうしても口角が上がってしまう。
しかし、クラスでも藤原のことを悪く思う奴も居ないわけではない。
その証拠にくすくすと影笑いをする者もいた。よくやったぞと言わんばかりの瞳をしている者もいた。
そいつらからすると俺は勇者である。
我、藤原を討ち取ったなり。
藤原はうるうるとした今にも泣き出しそうな目を腕で抑えて、教室の外に全速力で駆けていった。
その姿を目で追い終わると、席に戻り、読みかけのラノベに手を伸ばす。
ボコッ。右頬に衝動が加えられる。
大きな衝撃に耐えきれず、椅子から転げ落ち地面に体を接触させる。
右頬を抑えていると、腹部に蹴りを入れられる。
「お前、藤原になんてことしてくれてる訳?」
数人の男子生徒が俺を囲ってリンチを始めてきた。
頭が湧いてやがる。俺が今までされたことも知らずにのうのうと生きて、ただ楽しんでそいつらに俺の今の気持ちが分かるか?
否。
分かるはずもない。てか、理解すらして欲しくない。
最初から勝ち組の奴らに俺の何が分かる?何をされてきたか分かる?ちやほやされてきたお前らとは訳が違うんだよ。
あいつと離れたいが為にわざと割と距離がある中学を志望したのに、着いてきてまた潰されて。高校もそうだ。
嫌気がさして、殺気すら芽生えたこともある。
もう頭が狂いそうだ。狂騒でも巻き起こしてやる。
「お前らに何が分かんだよ?」
「あぁん?」
「小五からあいつに付き纏われ、邪魔されて、人生すら台無しにされたんだぞ。お前らにこの気持ちが分かるか?」
「知ったこっちゃないね。」
既に洗脳済みですか。
何話しても、右耳から左耳に抜けるだけだろ。性欲おばけ共が。
忍耐袋の限界だ。もう破裂してもおかしくはない。俺のポテンシャルは忍耐だったんだか、もう限界かな。
何か、それ以外のものもはち切れそうだ。
「止めて。」
俺のりんちを止めに入ったのは一人の女性。橘花凛だった。
四大美女と賞賛される顔立ちに、凛と咲き誇る紫陽花を思わせるような紫色の頭髪。雪原のように白い透き通る肌。
一目見た瞬間、安堵感が満ちると共に、苦痛に耐えれずそのまま視界が真っ暗になっていく。
意識が持ってかれる。必死に対抗するが、賭けに負けた。意識を失ってしまった。
星5付けて貰えるように頑張りやす