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第3話【入部】

 それから一週間後、勇斗は様々な友人を作っては僕に紹介してくれた。


 勇斗には友達を作る才能があるかも知れない。


 しかし、僕は勇斗の紹介してくれる友達はやっぱりと言うか、今時の子なのでゲームやスポーツ、アイドルなどの話で盛り上がっていて、僕にはついて行けない。


 彼等に言わせれば、僕の考えは爺臭いらしい。


 僕としてはそんなつもりもないんだけど、やっぱり、本に囲まれた学校生活を送っていたからなぁ。

 勿論、友達がいらないとまでは言わないけど、こうも考え方が違うと孤立し易くなる。


 勇斗は優しいから「言わせたい奴には言わせとけよ。春樹は春樹の良い所があるんだから」と言ってくれて、僕が孤立しない様に守ってくれる。


 本当に勇斗は良い奴だ。


 さて、一週間経って部活の勧誘も本格化して来たし、そろそろ文芸部を覗いて見ようと思い、部活のある図書室へと向かう。


 図書室と部活が両方あるのはありがたい。


「失礼します」


 僕が図書準備室に入ると数人の女子生徒が此方を見る。


 その中には生徒会長の姿もあった。


「何か用かしら?」

「えっと、文芸部に入りたいのですが……」


 そう僕が言うと生徒会長は眼鏡を掛け直し、レンズを光らせながら僕を品定めする様に見詰める。


 ……気分的にはまな板の上の魚だ。

 あれ?まな板の上の鯉だっけ?


 どっちでも良いけど、生きた心地がしない。


 生徒会長はしばらく僕をジロジロと見てからポツリと呟く。


「貴方、文芸部に入るって事は物書きに憧れているの?」

「あ、はい。絵本作家に将来なりたくて」


 僕がそう言うと生徒会長の眉がピクリと動く。


 ああ。何かしらの地雷でも踏んだのかな?


 あからさまにさっきよりも厳しい目を向けて来るけど……。


手塚てづかさん。久し振りの入部希望者だからって、そんなに嬉しそうに見ちゃダメだよ」


 そう言って僕と生徒会長の間に割って入ったのはおっとりした雰囲気のポニーテールの女子の先輩だった。


「すまない。つい嬉しくなってしまってね」


 生徒会長はそのポニーテールの先輩に謝ると僕から視線を外す。


 ……あれで嬉しそうにしていたのか。


「ゴメンね。知ってるかも知れないけど、手塚さんは生徒会長をしているせいか、厳しい印象があるかも知れないけど、本当は優しい子だから」

久慈川くじかわさん。余計な事を言わないで下さい。

 それに私は生徒会長として風紀が乱れない様に注意しているだけです」

「ふふっ。そう言う事にして置くわ」


 そう言うと久慈川先輩は生徒会長から此方に顔を向け、優しく微笑む。


「改めて、自己紹介するわね?

 私が部長の久慈川。そして、こっちが副部長で生徒会長の手塚さん。

 宜しくね。えっと……」

「白沢です」

「白沢君ね。ようこそ、文芸部へ。

 部長として貴方を歓迎するわ」


 久慈川先輩はそう言うと周りの女子の先輩達を見る。


「それじゃあ、部員を紹介するわね?

 まずはーー」


 そこまで久慈川先輩が言い掛けた時、図書準備室の扉がノックされ、あの子が入って来る。


 そう。今、話題のあの子だ。


「すみません。文芸部に入りたいのですが……」

「貴女は……」

「はい。綾倉と言います」


 これが僕の運命を狂わせる二回目の出会いだった。

 最も、彼女の方は僕の事なんて野次馬の一人ぐらいにしか思ってないだろうけども。


 この時の僕はただ、明るく笑う彼女ーー綾倉さんを見詰める事しか出来なかった。

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