序章-出会い
はじめてラノベのような文章を書きます。
お手柔らかにお願いします。
更新速度はかなり遅めです。
「お疲れ様でした…」
俺はそう呟きながらパソコンの画面に表示されるチャットに
【おつですー】と送信して、システムコマンドを開きログアウトボタンを探す----
このMMORPGを始めたのはつい数時間前のことだ。
社会人なって2年目、仕事にも慣れて余裕が出てきたので、
疲れ果てて帰宅後にすぐ寝る生活から、抜け出そうと考えていた。
だけど家から出る気にはなれず、惰性でスイッチを入れたパソコンで、まとめ系サイトを渡り読んでいた。
そんなとき、ふと目に留まったブラウザの端の広告を、
とくに何も考えずインストールして始めたのが、このゲームだった。
舞台は一般的な冒険ファンタシーで、所謂クリックゲー。
クリックでキャラクターを動かして、キーボードの特定のボタンでスキルを発動する。
なにも考えずに始められる、社畜にはあつらえ向きのシステムだ。
チュートリアルが終了して間もなく、すぐパーティ申請が来たのには驚いた。
【遊ぼ?】
短くチャットを送ってきたのは、見るからに強そうな剣士っぽい装備の女の子キャラで、名前は[0時0分]という奴だ。
髪は深い青色のボブカットのように見えるが、帽子を装備している為それが素のアバターかは不明だ。
過疎が進んでいるのか、自分の周りに新規は居なさそうだった。
新規を手厚く囲い込む古参か、俺TUEEEしたい古参か、
どちらにしろWIKIもチェックせずに始めたゲームだ。
素直に効率の良いキャラ育成について教えてもらおうと、パーティ申請を快諾した。
【よろしく】【名前なんて読むの?】
初対面で【遊ぼ】と言ってくる奴だ、とくに敬語はいらないだろう。
世の中ではキラキラネームがなんだとか言うが、ネットゲームに比べれば可愛いもんだ。そのままレイジか?日付変更線か?
俺はとくに今作ったこのキャラクターに愛着はない。
育成に失敗したらキャラリセットしようと考えているからだ。
だから本名の袴田吉彦をただアナグラムにして、
適当に[ひよこ裸魔氏]と名付けた。
【よろしくひよこくん!】
【みんなはボクのことロンって呼んでる】
【グリニッジ天文台?のあるロンドン?のロン!】
日付変更線さんなんて呼ばなくてよかった。
俺のセンスの無さが露呈するところだった。
まぁ、自分のキャラネームでとっくに晒してる訳だが。
そしてボクっ子か。ネカマ説あるな。
二人だけのパーティーでその想像はキツイ。
本人が楽しければそれでいいんだ、気にしないようにしよう。
【ロンさんね、素敵な由来の呼び名だね。】
【チュートリアル終えたばかりの初心者だけど、なにをすればいいかな?】
【ひよっこくん!よくぞ聞いてくれた!】
【今お祭り中なのさ!最弱モンスターをひたすら狩って狩って狩りまくるよ!】
どうやら最弱モンスターが稀にドロップするアイテムが、イベントで期間限定のガチャを引くチケットになるらしい。
乱獲で初心者に迷惑をかけないように、一応パーティーに入れて経験値配分と償いレベリングしてるのか…
なんとなくアテが外れた気分だが、とりあえずおこぼれに預かるとしよう。
【これいらないからあげる!】
そう言って低レベル用の装備やら回復アイテムやらを、まとめて渡してくる。
親切心と荷物整理が半々な気持ちだろう。
【ありがとう、どんどん強くなれるよ】
ひたすらモンスターを狩って、時間はそろそろ0時を過ぎそうだ。
【あ、ボクの時間がくる!寝なきゃ!】
【フレンド申請しとくよーまた遊ぼうね~】
申請を拒否する理由は今のところないだろう。
明日は土曜日で休みだが、今日の仕事疲れと日頃のつけが回って流石に眠い。
【今日はありがとう、初フレンドよろしく】
【んじゃあおつでーす】
「お疲れ様でした…」
俺はそう呟きながらパソコンの画面に表示されるチャットに
【おつですー】と送信して、システムコマンドを開きログアウトボタンを探す。
あれ、ログアウトない…?
最近のはオートセーブだからそういうボタンを作ってないのかな。
【あああああああああ】
【インターフェースのログアウトなくなってる!!!】
【えええええええええ】
ロンがチャットで騒ぎだした。
どうやら通常はログアウトボタンがあるらしい。
ただ…SAOじゃあるまいし、閉じ込められるのはキャラクターだけなんだし、実害ないからただのバグなのだろう。
【おうちに帰れないよ。どうしよ…。】
【えええ、やっぱり何度みてもないよおお】
おまえは何を言ってるんだ。ゲームにのめり込みすぎだろう。
現実との区別が曖昧になったヤバい奴なのか?
【mmoならサーバーにデータがあるから、オートセーブなんじゃないかな?】
【画面を閉じるか、シャットダウンすれば、次に起動しても問題ないんじゃないかな】
【画面??なにそれ…】
【シャットダウンはログアウトしないとできないじゃん…】
【あーもーわかんない。どーしよおおおお。】
本格的にヤバいやつなのか?演じてる?釣り?
にしても混乱してる感じがなんだかもやもやする。
【近くに詳しい人居ないの?】
俺はそう聞きながら、今更ながらWIKIを探し始めた。
なかなかタイトルでヒットしない。
過疎り具合からしてまだWIKIが無いような最新のゲームじゃないだろう。このご時世アフィリエイト目当てで公開前にWIKI開いてたりするし。
だけど全然引っ掛からないな。
【最近じゃボクがいちばん詳しいと思う。プレイ歴2年だから…。】
【プレイする層は高等部の子が多いから入れ替わり激しいよ。】
【正式サービスが始まって30年くらい経つらしいけど、こんな症状は初めて聞くよ。】
30年…?まだADSLでもISDNですらないピーガガーの時代??
それが本当ならいよいよSFの世界だぞ。ただの電波ちゃんか?
【とにかく落ち着いて、ログインの環境を教えてくれないか?】
【ひよこくんは逆にすごい落ち着いてるね。】
【キミも困ってるだろうに。ボクもそのメンタルが欲しいよ。】
【そうそう、ログインの環境はね学校のライブラリー】
【普段は特別学習プログラムに使う機材をなんだけど】
【二期休業の間、ボクの立ち上げたVR研究会が特別に借りてるんだ】
【……コッソリ…とね。】
頭がクラクラしてきた。設定が作り込まれていると言うか。
俺が眠いのをいいことに、簡単に騙せると思っているのだろうか。
突拍子もなさすぎる。
しかし、ゲームに関してネット上に全く情報がないのが気になる。
おれはもう今、夢を見ているのだろうか。
とりあえず…仮眠をして……また明日考えよう………。
明日は土曜日、休みなんだから…zzz。
更新速度はかなり遅めです。
(大事な事なので二回言いました。)