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砂の国、砂の城 10

メリアが北の大陸に渡り、さらに首都の東地区まで赴き

国王もしくは外交担当者に宣戦布告する。

それを南の大陸西の国に報せなければ

レミーは騎士達を引き連れ進軍できない。

「すればいいじゃん。」

無礼なのは侵略行為をした相手だ。

「私は侵略者ではない。」

あからさまに不機嫌に答えたレミーに

赤堀サワは無礼な発言だと素直に侘びた。

「ごめんなさい王様。」

「いや。こちらこそ済まない。私もそうしたいのは事実だ。」

その歯痒さに苛立っている。

メリアからの連絡を待つのは予想以上に辛かった。

ただ待つ。

当初宣戦布告には自ら赴くつもりでいた。

メリアに随員を相談すると彼女は既に旅支度を済ませていた。

「王は兵の準備を。」

メリアは強く賢い。王としていの資質は自分よりあるだろう。

だがそれ以上に「交渉人」として秀でている。

屈託ない笑顔で相手の話を聞き入れる。

その上で歯に衣着せぬ物言い。

率直で実直。堅実で誠実。

「私はもっと頑固で過激だからな。」


副部長若宮アオバと仕立屋吉岡ハルナが帰国し

メリアが東の国で怪我を負い足留めと報告。

宣戦布告が成されそれを伝えに戻るまで

あと何日こうして待たなければならない?

電波やケーブルによる通信網の無い世界。

逐次進捗状況が届くはずもない。

ただひたすら待つだけ。

「過激」と自称した彼が

大人しくただ「待つ」だけなど有り得ない。

そこへ若宮アオバの王都残留。

「何か出来ることがあったら何でも申し付けてください。」

出来ること。

この少年は背格好が自分と似ている。

髪型と色さえ同じなら遠目では区別できないだろう。

独り言のように呟くレミーに

「あのー。」

仕立屋吉岡ハルナ。

彼女はレミーの衣装を仕立て直す。

レミーの髪の色に似た糸を使いウィッグを作る。

並び立つ二人。

「後ろから見たら似てる。」

「意味ねぇっ。」

「いや。意味はある。」

レミーは吉岡ハルナの手を取り感謝を伝える。

そして決意する。


出兵準備を進めていた騎士を王都の漁港に集めたのは

長老と執政官(新たに任命)の反対を押し切って兵を挙げるためではない。

集められた騎士達は国王の一言に驚きと期待を抱く。

「西の航路を拓こう。」

未開の海。

守護竜よりも大きな竜が住むと言われる海域。

冒険者達はただただ広がる深い青に心を折られ引き返す。

引き返さぬ者は、引き返せなくなった者。

漁師は陸地を目視で確認しながら漁をする。

商船も同様に常にどちらに陸があるのかを確認している。

方角が定められており「磁力」は発見済み。

方位磁石もあり船乗りは「およその方向」をそれで確認し最終的に「目視」によって操船する。

「あれって常に真北を差しているわけじゃ無いのよね。」

「そうなの?」

「水平に針が刺すのもオカシイって思わなかった?」

「はい?」

「日本から見た地球上の北って北極じゃない。そこ指すなら地面の中に行くよね。」

「ああまあ確かに。気にした事もなかった。」

「だから船乗りは基本的に天体を利用するのよ。」

「ブ、会計のくせにどうしてそんな事知ってる?」

「ぶって何だ。数学の時間にやったじゃん。」

「そんなのやったか?」

「三角関数よ。寝てたの?」


問題は海上で自分の居場所を求める方法だ。

北極星(勿論この世界では呼び名は違うだろう)と太陽があれば

緯度の確認はそれほど難問ではない。

しかし「海上」での経度の測定には「時間」が必要とされる。

「どうして海の上だと判らないの?」

「目標物が無いからよ。」

三角形が作れない。

自転によって星の位置が変化する。北極星があるなら目標物は動かない。

東や西の空に「動かない星」でもあるなら別だ。

「この世界に静止衛星なんて無いでしょ。」

「標準時どころかまともな時計すら存在しない。」

お城の庭園の時計塔は日時計。

衛兵が影を見て鐘を鳴らし時刻を知らせる。

緯度が測れても経度が判らない。

ガリレオは木星の衛星食を利用して「時間」を作り経度を測った。

この世界にも月がある。もしかしたら何処かで誰かが観測しているかも知れない。

天文台があって月や星の動きを表にまとめた者がいたならば。の話だが。


レミーはこの世界のコロンブスやマゼランになろうとしているのだろうか。

「男のロマン?」

倉渕ミサトが呆れるが吉岡ハルナはそれを否定する。

「違うと思います。王様はもっと現実的ですよ。」

レミーの想定の中には

「既に北大陸東の国によってその海路が確立されている可能性」

が含まれている。

先般西の国に現れた軍船は

北の大陸の「西地区」からの出立なのか確証はとれていない。

そんな事より。

倉渕ミサトは帰国してからの若宮アオバの変化に気付いていた。

ヘタレでビビリが演劇部での二年を経て

「好奇心」や「冒険心」を身に着け

イイ感じで笑うようになっていた。

倉渕ミサトはそれが嬉しくもあり心配でもあった。

帰国してからの彼は

ヘタレでビビリでも無く、イイ感じにも笑わない。

倉渕ミサトにとって国王の大航海なんて

「そんな事」でしかない。


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