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砂の国、砂の城 03

宿を確保し情報収集を兼ねた夕食。

この国(地方)には酒場がある。アルコール飲料があるようだ。

ワインとビール(のような物)があるようだがキリにも月夜野アカリにも詳しくわからない。

所謂「醸造酒」だが原料は不明。飲む気も酔う気も無い。

「この先は今までのように呑気に観光とは行かなくなるからその対策をしよう。」

「対策?」

「その前に何に対しての策なのか教えて。」

北大陸砂漠地帯

かつてこの砂漠地区は独自の文化を形成する民族による「国」であった。

「砂漠の国。」

現在、北大陸を統治する東地区からの役人は常駐しているが

民族としての習慣や風習が変わることは無く

独自の文化が損なわれる事なく「砂漠地区」の「砂の民」であり続けている。

東の国の定めた法とは別の「秩序」が存在し、

「そのお陰でこの国にいる間は安全だ。」

問題は砂漠地区を抜けたその後の行程。

「東の国かその付近までの安全を買う必要がある。」

「だからその危険て何よ。」

「野盗だったり小さな竜だったり。それ以外だったり。」

「商人達はどうしているのでしょう。」

「通行料でも払っているとか?」

「いや、雇う。」

雇う?誰を?


護衛を雇う。

常に同行させる「専属契約」ではその経費が嵩む。

「アルバイト雇うって事ね。」

「傭兵ですかね。」

「用心棒?ボディガードとかSPとか?」

「SPは警視庁ですよ。セコムとかアルソックのが近いかも。」

「警備会社じゃん。グリーンベレーとか言えよ。」

「それもアメリカの陸軍ですから傭兵じゃないですね。」

「お前は世界の傭兵に詳しいのか?」

キリは月夜野アカリとの会話の途中で一つの不安を口にする。

その護衛が傭兵だとしたら、その者達の身元は?

「傭兵が野盗になる場合もありますね。」

雇われれば傭兵として働くが、それ以外は野盗を生業としている者達もいる。

国の統一以降、野盗同士の縄張り争いもあり治安はとても悪い。

その治安の悪さを商売にしているのが「傭兵」だ。

「マッチポンプみたい。」

「自分で火を付けて騒ぎを起こすくせに自分で水をかけて消すってあれね。」

「偽善的な自作自演。ですよね。」


宿に戻ると黒猫ノトも同じタイミングで戻った。

「おかえりなさいノトさん。」

「にゃ」

「身体拭くから。」

キリが両腕を広げるとノトは跳ねてその中に飛び込む。

抱きかかえて手で撫でると砂が零れる。

「無理に水洗いしない方がいいかな。」

「うぇっ私はとっととシャワー浴びたい。ガッツリ。」

「両足持って逆さにしながら振るとか。こう。」

ジェスチャーを交えながら勿論ツグミは冗談で言っているのだが

この人なら本当にしかねない的な雰囲気があり

キリも月夜野アカリも本気で笑えない。

「時々いなくなるけど何処へ行っているか知っているの?」

「地元の猫達と交流かな。」

「交流?違うよ。情報収集だ。」

「情報収集?猫が?」


部屋で黒猫ノトにタオルを巻くキリ。

月夜野アカリがTシャツとハーフパンツで浴室から戻る。

「湯船じゃなくてシャワーがいいっ。」

「上水道と言っても圧力かかっているわけではありませんからね。」

「発電所も無いしな。もしかしたらパッキンなんてのも無いかも。」

「この世界にあるかどうか知りませんが特許取って売るとか。」

「水があるにはあるが思ったより水量が少ない。あんなに大きな川があるのに。」

「多分川の水じゃありませんよ。あそこまで濁っていると排水にしか使えないかと。」

「そうなの?」

「シャワーとか飲料水は地下水じゃないかな。」

キリの予想は正解。

「それで。君はノトを(ちまき)にしてどうするつもり?」

「静電気防止です。湿らせたタオルで毛に水分与えてからでないとブラッシングできないので。」

「君は本当に見境がない。」

「なんですかそれ。」

「ジメっとしていないのは有り難いけど髪とか傷むわ。」

「オリーブオイルとかいいみたいですよ。」

「そうなの?ってさっきからこの感心の仕方は我ながら少し失礼ね。」

「失礼って?」

「疑っているように聞こえない?「嘘でしょ?」て同意の仕方と同じで。」

「あまり気にしたことありませんねぇ。」

「私は気にするのよ。」

本当に変な人だ。口にはしないが心底思う。

決して悪口ではない。だが褒めてもいない。

「お前今私の事「なんて面倒な女だ」とか考えていただろう。」

半分図星に動揺するキリに

「お前ほどじゃ無いからな。」


他人に面倒を掛けたくないから

自分の近くから他人を排除し続けている。

なのに面倒?

この部長さんよりも?

「君は一人じゃない。」

「臭い台詞のようだけど他人との関係を断ち切って生きるなんて無理なんだよ。」

「何処かで妥協して受け入れて受け入れられるのさ。」

「その幅が広いか狭いかってだけで全くの孤独なんて物理的にあり得ない。」

「量子力学的に不可能なんだ。」

よくわからない

芝居染みているのは演劇部の部長だからだろうな。

「孤独がどうとかは判りません。」

「でも必要最低限に抑えたいです。」

キリの言葉に月夜野アカリは呆れる。

「その最低限に私は入っていないのだろうな。」

「迷惑をかけたくないから。とか手間取らせたくないから。とか言うけど。」

「結局は君が他人を鬱陶しいと感じているだけだ。」

それは違う。

迷惑をかけたくないから。も違う。

鬱陶しから。でもない。

他人と関わり合いたくないのは

好かれなければ、嫌われる事もないから。


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