迷子の青空 42
喧々囂々侃々諤々あってオリジナルファンタジー作成に取り掛かる。
「演劇部に入って役者したいって奴は元々目立ちたがり屋だから何演っても来る。」
だがそれでは偏りが生じてしまう。
召喚系異世界ファンタジーを演目に決めたのは
「役者になりたい奴以外」を演劇部に加えたいのであれば
それなりに流行りを取り入れないと見向きもされないからだ。と。
結構強引ではあったが月夜野アカリを説き伏せた
決まったからには本気で稽古に取り組む演劇部員達。
その日も遅くなりそうだったので
二年生二人に買い出しに行かせた。
「いくらリアリティ出したいからって本当に異世界に来るかね。」
「もしかしたら部長が私達をこの世界に連れてきたとか。」
「有り得なくないだけに怖い。」
話は逸れたが
吉岡ハルナの言いたい事は
「本当にこれでいいのか?」
仕立屋吉岡ハルナは赤堀サワの顔色を伺いながら
物語としての欠点を指摘する。
脚本や演劇については何も判らない。
ただ今まで読んだ本の面白い作品には必ず全編通した「芯のような何か」があった。
この物語にはそれがない。
「うまく伝えられないけど。そのーえっと。」
「判るよ。主題が無いんだ。」
副部長が指摘する。
赤堀サワの物語は時系列の説明でしかない。
ドキュメンタリーとして素晴らしい作品になるだろう。
「結構はっきり言うのね。」
赤堀サワは怒っているのではない。少々戸惑っているだけだ。
吉岡ハルナは言いたいことを言わない傾向が強い。
誰か(自分)の言うことに黙って頷いて後ろを歩いていた。
それでイラっとする事もあった。
何かの間違いで東の国へ行って、何もせず追い返されて
それから何かが変わった。
「皆どうやって作っているの?」
「何を?」
「物語よ。作品よ。」
赤堀サワは同室の吉岡ハルナに愚痴る。
「テーマって何?友情努力勝利?」
「いいじゃない。」
「いやいやいやいや。」
ハタオリキを主役にすると王子様が目立たない。
王子様を引き立てたいが実際特に何もしていない。
(竜の背中に乗って現れただけ)
「二人の友情物語にはできない?」
「お前と違ってBLは趣味じゃ無いんだよなぁ。」
「私の趣味でもないよ。」
吉岡ハルナの提案。
「それじゃキリ君とお姫様の恋物語は?」
「それも考えたけどあのお姫様とハタオリキがくっつくとは思えない。」
「どうして?」
「あのお姫様恋愛に興味あるとは思えない。それより。」
織機キリは動物と語れる設定にして
黒猫と恋仲にさせるのはどうかと言い出した。
「いや中の人だよ。」
「ツグミさん?んー。お姉さまと少年かー。」
二人の話は主題が逸れていると気付くまで一夜を要する。
「それでテーマは決まったの?」
「まだ。」
異世界からの少年にするのか。この国の王子様にするのか。
それともお姫様?
多すぎる視点は観客の注意力を散漫にしてしまう。
「テーマ先に決めると楽だって部長が言っていたよ。」
副部長若宮アオバの助言は具体性を持たせていない。
そのテーマが決まらない。
決められない。
「何でもいいんだよ。」
「なんでも?」
「友情努力勝利だっていい。」
全部扱う必要は無い。
「愛とか家族とかポジティブな印象を与える単語から選ぶって言ってたよ。」
そう言えば部長も「ハッピーエンドが好きだ」と言っていた。
「ちなみに勧誘式用のテーマって何だったんですか?」
「友情?協力だっけ?」
「団結よ。」
「簡単に言うと毛利ナントカの三本の矢のあれだよ。」
「あーあれか。そう言われるとそうですね。」
自分の書いたアウトラインでは「友情」も「団結」も無い。
個々が勝手に動いた結果としての「勝利」になっている。
「あれ?それじゃあコレ直さなくてもよくない?」
吉岡ハルナがそのシナリオを読み返しなから言った。
「いやだからテーマが。」
「うん。ここにテーマ足しちゃえばいいのよ。」
「は?」
突如村に現れた暗黒の竜。
人々の禍そのもの。
炎を吐き暴れ村を村人を襲う。
しかし守護竜は現れない。
この国の守護竜ピータンは病に伏せているのだった。
そこへ現れたのが異世界からの少年「キリ」と仲間達。
キリは仲間に助けられどうにか暗黒竜を倒す。
メリア王子はキリを城へ呼び
ピータンの治療を依頼する。
少年が竜の頬を撫でると生気を取り戻した。
少年は竜に再び青空を与えたのだ。
守護竜復活の喜びに湧くお城に異国の軍船が襲来したと告げられる。
メリアとキリとその仲間達は共に剣を取り戦う。
だが無数に放たれる矢の雨に苦戦を強いられてしまう。
その時、守護竜ピータンは
王子レミーを背に乗せ現れる。
怯んだ敵にメリアとキリ達は反撃し
ピータンとレミー、そしてメリアとキリ達の連携攻撃によって
敵船団を壊滅させた。
帰還した王子レミーはピータンの背から降りると
キリと仲間達の手を取り喜びを分かち合った。




