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迷子の青空 31

引かず下がらない影四つ。

半円が縮まる。

騎士のような構えのその影が最初に斬りかかる。

騎士が受け払うと大きく鈍い金属音が街中に響いた。

間髪入れずの反撃は躱され再び構え直すと殆ど同時に残りの三つが襲いかかる。

一対一と一対三の構図。

異世界の少年少女を守ろうと一歩前に出る。

大きく剣を振るのは威嚇ではない。

「先ずは自分を倒せ」と相手に示している。

元よりそのつもりの三つの影。

「各個撃破」の好機として捉えたのだろう。

騎士とは滑稽な存在だと。

一人目の太刀を受ける。横からの二人目の太刀を体を引き避ける。

三人目。

騎士の背後を狙ったその剣を若宮アオバが受け止めた。

完全には吸収しきれてはいないがそれでも速度は鈍る。

その一瞬に騎士は身体を撚る。

二人目の剣を完全には躱しきれず、左の肩越しから斜めに袈裟状に斬られてしまう。

深手ではない。

血が滲む。

膝も落とさず剣を構える。


震えて涙が止まらない吉岡ハルナ。

「すまない。謝って済むような事ではないのは判っている。」

月夜野アカリは彼女の前に立ち塞がるように剣を構える。

目の前の出来事を現実として受け止められない吉岡ハルナ。

「お母さん。お母さん。ごめんなさい。

どうしてこんな事に。

「うにゃ」

足元から声。足に摺りあたる何か。

落とした目線の先に光る小さな青い目。

「黒猫?」

ドガッと鈍い音がして目線を上げると影が一つ飛んでいった。

ゆっくりと、スローモーションを見ているようだった。

それを遮る小さな背中。

「部長さん副部長さん下がってください。」

織機キリ。

何が起きているの?

一対一と一対三から

一対一と四対三へ。

騎士団長が近くの一人を素手(!)で殴り倒すと

相手の影達が二歩引いた。

ルメニーは傷付いた騎士に駆け寄り手当を施す。

「どうします?」

魔女のツグミがメリアに尋ねたのは

この影達の処遇。

「ボクと知っての事らしいからな。一人生きていればいい。」

これは脅しではない。


それで怯む者達なら騎士一人軽症で話は終わり

手当を済ませ全員で旅を続けけていただろう。

しかし隣で続いていた一対一の勝負で倒れたのは西の国の騎士。

完全に油断していた。

自分の騎士がよもや倒されるなんて。

素性も判らぬ黒ずくめの者に遅れを取るなんて。

誇りを傷付けられ国王の妹。

騎士団長が止める間もなくメリアはその影に飛ぶ。

相性はメリアに分があった筈。

一対一で戦っていればその速度に相手は翻弄されていただろう。

だがこれは訓練ではない。

魔女に吹き飛ばされた影。

騎士団長に殴り倒された影。

メリアはもう一つの影を見失っていた。

突如脇に現れた影の、さらに下から振り上げられた剣。

メリアは脚を斬られる。

動けない少女に次の太刀。

騎士団長の剣は届かず、

魔女は倒れている騎士を踏み動きを封じている。

振り下ろされたた剣を弾いたのは見慣れた短剣だった。


乾いた金属音。

剣を使うことを拒否し続けていた少年。

「メリア様っ」

騎士の手当を途中で投げ出したルメニーが

細身の剣を抜き彼女を傷付けた影に斬りかかる。

ルメニーの攻撃は一方的に相手を押す。

怒りに身を任せてはいるが力任せではない。

冷静に、冷酷に「相手を殺す」事だけを目的とした剣術。

急所を突くようなその動きに相手は翻弄され

剣を振り上げたその腕を突かれ剣を落とす。

ルメニーは躊躇する事なく胸を突き刺す。

が、その剣は届かない。

彼女はキリが後ろからその腕を押さえている事すら気付かず

もう一度突こうとする。

この隙きにと、腕を抑えながら逃げようとする影。

が、振り返った刹那騎士団長の拳に宙を舞う。


最も大柄で最も強そうな(実際に騎士一人を倒した)影を取り囲むと

相手は呆気なく剣を捨てた。

そしてようやく夜の街の騒ぎにこの国の騎士が現れる。

宴席に加わっていた者がいたお陰でこの場の事態はすぐに収拾する。

メリアと二人の騎士は傷の手当。三人共軽傷。

「皆さんは怪我はありませんか?」

キリが演劇部員達を気遣うが全員無傷。

月夜野アカリと若宮アオバは扮装を解いて事情を説明する。

「こんな事になったのは全て私の責任です。」

「止めなかった僕にも責任はある。」

自身を責め合う二人に

「まあ待て。」

メリアは笑顔で応える。

計らずも二人の変装が囮の役目を果たした。

あの場にいたのが本当に自分であったら不意打ちに無事では済まなかったかも知れない。

「ボクがこの程度の怪我で済んだのは君達のお陰だ。」

それは本心だった。

「だが傷が癒えるまでここで足止めだ。」

傷付いた騎士二人はさらに時間を要する。

「せめて王都までは移動したいな。」


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