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迷子の青空 29

召喚とは

装置による「成果」。

同時に魔法による「調整」

(調整と呼ぶにはその役割は大きいが)

鉱石を用いて装置を稼働させると聞いた時点で

おそらくはそれが電力で、しかも不安定だと確信していた。

過電圧かまたは不足したのか。

不安定になった装置に翻弄されただけなのか。

やはりこれは「ただの事故」だろうか。

月夜野アカリ以外の演劇部員達はそう考える。


ここは竜が舞い、剣と弓で戦う世界。

常識の定義が異なる。

「僕はこれを運命だと思っている。」

「それこそラノベじゃねぇか。」

レミーは大袈裟に何の根拠もなく「運命」などと叫んだのではない。

召喚に必要なのは

「鉱石」と「魔女」

装置を扱うのは相応の知識を要する。

少なくともこの国の者は演劇部員達の召喚に一切関わっていない。

他国の誰かが、何か理由があって呼んだのだとしても

「この国に君達は現れ、その何者かよりも先に僕は出会ったのだから。」


月夜野アカリは明確な答えを保留するが

それでも今はレミーの説明を一つの可能性として捉えるしかない。

要は何も解決していない。

「それで部室が元の世界に戻ったのではないと言う根拠は何。」

「装置が使われていないからだよ。」

「勝手に消える(戻る)可能性は?」

レミーは一思案してから

「全く無いとは言えないが、そのブシツが目的である可能性や理由に心当たりはあるか?」

月夜野アカリはこの時点で確信を抱いた。

これは可能性の排除としての質問。

「例えば他の国がそうしたとは考えられない?」

ここへ来たのも

部室が消えたのも

本当にレミーやメリアが知らなかったのだとしたら。

「なんのために?」

「なんのために?」

レミーの疑問に月夜野アカリはオウム返しをしてしまった。

そうだ。なんのためにそんな事をする?

「今のは忘れて。」

「中の国も東の国も召還装置の申請も使用報告も無い。」

「一々他の国にお伺い立てるの?」

「勿論だ。互いに余計な詮索はしたくないからな。」

「それでは北の大陸の誰かがそうした可能性は?」

「僕の推測もそれだ。」

レミーの予想と月夜野アカリの確信は全く同じ見解。

部室の存在を知り、それを必要とする者の仕業。

「アヅマか。」

笠懸ヒサシもそれに気付く。

「やっぱり行くしか無いわね。」


月夜野アカリはもう一度吾妻アヅマを追うと決めた。

「道具屋。君はどうする。」

どのような選択をしても尊重すると言った。

「行くに決まってるだろ。」

吾妻アヅマをどうこうではない。

部長が奴を見付け出せば演劇部員は全員揃う。

部室が奴の元にあって、そうできる方法を知ったのならば

帰る方法だって判るかも知れない。

置いて行かれてたまるか。

「いや一年二人はここに残そうと思っている。」

危険な目には合わせられない。

「道具屋には二人の面倒を頼みたいのだよ。」

本当は一人で行きたいのだが副部長は行く気になっている。

ならば倉渕ミサトも行くだろう。

「部長が本当に一人で行きたいなら手を貸すぜ。」

「何?」

レミーに東の国へ向かうと告げると

「では船を手配しよう。」

「え?またあの漁船は嫌よ。」

「あの船長さんに頼みましょう。」

「王都見学するとか言っていたな。急いだ方がいいぞ。」


船長は城に招かれただけで舞い上がっているのに

王様から直接

「この者達を無事東の国に届けてほしい。」

と手を取られ、直々にその報酬を手渡され

その額に意識を失いかけるほど恐縮する。

だが船長はその殆どを

「旅には何かとお金が必要になる。」

からと演劇部員達に渡した。

部長は受け取れないと拒否するが

「キリ殿に会ったらくれぐれも感謝を伝えて欲しい。」

これはその伝言の依頼料だと無理矢理押し付けられてしまった。

「またアイツかっ。忌々しい奴っ。」

「もう呪っているようにしか聞こえないよ。」


「それで東の国に行ったらどうすればいい?」

「メリア達と合流。」

北の大陸に渡るのであれば東の国に赴く。

港と王都で情報を仕入れ待つか追うか決める。

「私達だけでアヅマを追うって選択肢はなし?」

「行き先か判るなら構わないよ。」

「魔女のツグミさんからは聞いてないの?」

「そうなんだ。僕はうっかり聞き忘れてしまた。」

うっかりで済む問題か?

どうにもこの兄妹はまだ大事な何かを隠しているようでならない。

それともただの天然か。


月夜野アカリと笠懸ヒサシは

若宮アオバと倉渕ミサトに気付かれぬよう

二人を王都に残す算段を企てるのだが

その最中本人達に勘付かれ見付かり

結局三人で吾妻アヅマを追う事になる。

「終わったら今度こそ皆で帰ろうな。」

「自分達だけで帰ったりしないでくださいね。」

月夜野アカリは船長に呼ばれ行程の説明を受ける。

若宮アオバは船室の場所を確認しようと船員に声をかける。

残りは荷物を積む。

「何人だっけ?」

船員が荷物を運ぶ吉岡ハルナに尋ねる。

「三人です。二人は先に乗っています。」

彼女はただ人数を答えただけだ。最後の一人が自分だなんて言っていない。

それなのに。ああそれなのに。

荷物を置く場所を探していウロウロして

船から降りようとウロウロしていたらタラップが上がっていた。

哀れかな吉岡ハルナ。彼女は旅立つ。

倉渕ミサトは?

城の食料庫でおやつを物色中。出発にも気付いていない。

港に向かうと笠懸ヒサシと赤堀サワがウロウロしている。

「何やってるの。」

「仕立屋見なかったか?お前は何でいるんだ?」

後日、立ち寄った中の国から伝言が届き吉岡ハルナの無事は確認されるのだが

倉渕ミサトは3日ほど起き上がれなかった。


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