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迷子の青空 27

倉庫の薄暗い照明は効果的だった。

あえて光量を抑えた舞台に

黒い竜と黒い衣装の魔女二人。

対峙するメリア役の月夜野アカリは光を浴びて浮かび上がる。

その姿に

集まった観客からはどよめきとため息のような吐息。

さらにレミー役の若宮アオバが守護竜と現れると

女性達の歓声が響いた。

騎士団長役の劇団騎士こそ棒読みではあったが

公演は拍手と歓声の中無事に終えた。

「ま、それなりにな。」

ほどほど満足。と言いたそうな部長。

「あの準備期間でこれなら上出来でしょ。」

「だな。これから作り上げればいい。」

一名を除いて皆が心地よい疲労感に浸っていた。


赤堀サワ。

散々でボロボロの赤堀サワ。

台本に無いセリフが飛び交い

今どの場面で誰のセリフで自分はどのタイミングで何を言うのか。

目眩で前も後ろも右も左も見失った。

舞台の上から走って逃げたかった。

なのに満足して笑顔の部長に苛立った。

「そんなに私の失敗が楽しいですか。」

「違うよ。君が悔しい思いをしているのが嬉しいんだよ。」

「イヤな感じっ。」

「だってそうだろう。君はそれだけ本気だった。それが判って嬉しくないわけない。」

逃げ出したくなるくらい恥ずかしくて

泣き出したくなるくらい悔しくて

「それでも君はきっとこう思っている筈だ。」

「次こそ。」


倉庫の片付けを終えた演劇部員達は

「滾る小魚亭」で遅い夕食。

倉庫を提供した商船の船長とその仲間達も同席。

「この世界にも演劇ってあるの?」

的な話から

「東の国の東地区には大きな劇場があるって話だ。」

本人確認したわけではなくたたの「聞いた話」。

船では東の国は西地区までしか入港できず

それがどの程度の規模で何が催されているのかは判らない。

「でもどうして船で行けないの?」

南の大陸と北の大陸はその東の国で繋がっている。

その先に東地区がある。

太平洋とカリブ海を結ぶパナマ運河的な水路も無く

山脈によって成り立つ地域。

船で行くなら西の国から未開の航路を進むか

船を解体し陸路で運び組み立てる。

東の国の王都は西地区寄りにあり、

交易の殆どは南の大陸と行っているため

同一国内と言えどその情勢は把握しきれていないらしい。


「興味があるなら乗せていくよ。」

船の荷を降ろしたらまた行くからと

船長は社交辞令のつもりだった。

その夜演劇部員達が騎士達の宿舎で寝支度をしながら

若宮アオバがその言葉を口にするまで

他の部員達もそのつもりで捉えていた。

「どんなとこなんだろうね。」

思えば彼は、この世界に来た事への不平や不満不安を口にしていない。

いつも誰かの後ろにいて口数も少なく

それこそ「いるのかいないのか判らない」ような奴なのに。

ビビリでヘタレで泣き虫のくせに。

「行ってみたいな。」

冒険心とか挑戦心は誰よりも強い。

そのくせ

「誰か一緒に行かない?」

一人で行くのは怖い。


倉渕ミサトは付いて行くつもりだ。

笠懸ヒサシにそのつもりは無い。

どのみち演劇部はもう一度部員を失う。

月夜野アカリはそれが判るので態度を保留した。

「君たちはどうしたい?」

二人の一年生は返事に迷う。

中学を卒業したばかり。こんなに長い期間親元から離れた事はない。

誰か知り合いに縋りたい。

たった二年先に生まれただけの高校生だろうとも。

一人にはなりたくない。ただそれだけだ。

だから二人の一年生は部長に全て委ねた。

対する彼女の答えも不明瞭。

「少し、考えさせてくれないか。」

そう答えた月夜野アカリの寝室に親友の倉渕ミサトが訪れる。

「何が問題なの?王様に言われた事守るとかそんな事?」

彼女は道具屋笠懸ヒサシの本意を知らない。

それを彼女に話してしまって良いのだろうか。

「ミサトは私が残ると言っても行くよな。」

「は?ナニソレ。私にへんな責任押し付けないでよ。」

「そんなつもりはないよ。ただ確認したいだけだ。」

「何よ確認て。」

「ミサトが本気なのかだよ。」


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