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羽撃く者達の世界 ~演劇部異世界公演~  作者: かなみち のに
第一幕 「羽撃け、友よ。」
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「羽撃け、友よ。」 07

話が一段落すると、夕食までまだ間があるな。と

演劇部員達を会議室で待たせたまま

「キリ。君はボクと一緒に来てくれ。」

演劇部員は「何故アイツだけ呼ばれたのか」よりも

もっと重要な異世界のお姫様の事実に気付く

「ボクっ娘だ。」

お姫様メリア、帰宅部キリが部屋から出ると

部員達は長老と呼ばれた爺様三人に

もう一度事の始まりから今この瞬間までを説明させられる。

何か意図があるのではないか、と勘ぐるのはオタで皮肉屋で眼鏡の吾妻アヅマ。

「異世界の技術」には興味を示さない。フリをしている。

戦争があるのなら、

異世界のテクノロジーの利用も考えるはずだ。

だからこそ俺達を呼んだ。

オタ野郎の推測は正解で不正解。

長老の一人がようやく本題に入る。

「他国の軍が侵攻していると情報が入った。」

それは早ければ3日後。遅くとも5日後。

「今、王都は兵力が乏しい。」


会議室の前では黒髪の少女が控えていた。

侍女ルメニー。

メリアは彼女をキリに紹介すると共に来るよう告げる。

城の奥へと案内されながら

キリはさほど不安を抱いていなかった。

メリアは親しく話しかける。

「君の世界にも馬や牛はいるのか。」

「食事は変わりないのか?」

「その服も君の世界の物か?」

そして何も無い狭い空間に通される。

大人一人横になれない程度。四面壁とドア。

ドアだ。

城に入ってから初めて見た「戸」

中は何も無い部屋。

壁の一つに穴がある。人が通れるその穴の先は

岩の洞窟。


「私達は戦いに関しては素人です。戦のお手伝いは出来ません。」

月夜野アカリは長老達の申し出を断る。

力を貸せと言われて、普通の高校生になにが出来る。

「待て。待ってくれ。部長。俺達はこの世界に来てタダ飯くらって世話になりっぱなしだ。」

道具屋の笠懸ヒサシ。

義理堅いがだからと言って命を懸けろと?

「話だけでも聞こう。」

「話を聞いたら後戻りできなくなるぞ。」


人工的か天然か、その洞窟は大人が真っ直ぐ立って歩ける。

先頭はお姫様メリア。黒髪の侍女ルメニーがキリの後ろを歩く。

5分程度だろうか、10分程度だろうか。同じ景色に感覚が麻痺する。

行き止まり。

「いや。この先だ。」

大きな岩が軽く動く。


「守護竜ってつまりドラゴンが本当にいるって事よね。」

「マジで?どこにいるんだ?」

「それでその守護竜とやらのハリボテを作れと。」

「でもどうして。」


「紹介しよう異世界の少年よ。」

行き止まりに開いた穴を抜けると、

とても広い洞窟。広い広い洞窟。

その広い広い洞窟に

とても大きな大きな生物。

「守護竜ピータン。」

「ピータン?」


「ピータン?」

「アヒルの卵がこの国の守護者?」


洞窟は

東京ドームに入った事はないが東京ドームほどあろうか。

地面が光っているのは、金貨で埋め尽くされているから。

そこには横たわるドラゴン。

「デカイ。こんな生物が陸上に棲息できるのか。」

ピップとEJを何度も「14」送りにした真鍮のドラゴンでもなく。

最期の一頭ドレイコでも、

ヒックの友となるトゥースレスでもない。

四肢に、翼。ではない。

指輪物語のスマウグ。

前足の肘から肩に翼のある「翼竜」タイプのドラゴン。

「具合悪そうだな。」


「なるほど。具合の悪いドラゴンの代わりを作れと。」


メリアは竜に歩み寄り、

ぐったりとうなだれているその頭を撫でる。

サイズ的に一飲みできそうだ。

キリはスマホを取り出しライトでその身体を照らす。

ピータンは目を逸らす。

フトアゴに似ている。そもそも爬虫類なのか?

背中が少し歪んで見えるが暗くてよく判らない。

頬のコケ具合に較べ顎に浮腫みがある。

餌は何だ?

ぶつぶつと呟くキリに、メリアは懇願する。

「何とか、ならないか。」

キリはライトを消してドラゴンに近寄る。

ピータンはキリを威嚇するように睨み口を開くが何の音も発しない。

この異臭はドラゴンからではない。

再び点灯し、周囲を調べると腐った魚貝の「生ゴミ」

食べ残しではない。嘔吐物だ。

「お姫様。市場で野菜は売っていますか?」

「え?ああ。ある。と思う。」

「魚も近くで捕れますか?」

「それは問題ない。王都には大きな漁港がある。」

「それから、大豆とか豚肉とかの食習慣はありますよね。

「どちらも主要な食料だ。」

「大量の干草もほしいです。」

牧場があったからそれも問題ないだろう。

キリはもう一度考え込む。

「帰りましょう。今から用意して明日また来ましょう。」

「治せるのか?ピータン元気になるのか?」

ピータン。かわいい名前。


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