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迷子の青空 20

「滾る小魚亭」

西に行くことがあったらと、キリは律儀にも若宮アオバに伝えていた。

「いつの間に仲良くなった?」

「仲良くはなっていないよ。」

笠懸ヒサシもそれなりに織機キリを気にかけていたつもりだった。

それ以上に若宮アオバは織機キリに声をかけていた。

「意識して僕達を避けていたみたいでさ。」

探しに行くと

「いつも(´・ω・`)こんな顔して一人でいたから。」

「捜しに行ったんだ。」

「面白いんだよ。決まって動物と一緒なんだ。」

「そしたら(´・ω・`)が( ・`ω・´)になって。」

赤堀サワが突然吉岡ハルナのスマホを取り上げる。

「え。ちょっと。」

ニヤニヤしながら眺めていたのは

織機キリが動物と戯れる写真。

馬を撫で、子猫に弄ばれ、黒猫を頭に乗せている。

「うわっ。そうだったのかお前。」

「そうって何っ違うからね。」

「違うって何だよ。」

「いやだからっそれはそのごにょごにょ。」

吉岡ハルナは、動物達がかわいかったから。と言ったと赤堀サワが通訳するのだが

それを信じる者はいない。


席を共にした騎士二人は

演劇部員達の世界の話を聞き出そうとするのだが

「こっちに来てからのがイロイロあって。」

本物の竜。本当の戦。王子様に騎士にと

ファンタジーでしかない日々の刺激は元の世界にはない。

「科学とか工業は発達していますね。」

馬のいない鉄の箱が人を乗せて走る。

海の底も、空も、そして宇宙にまで人は行ける。

その当たり前の生活に

二人の騎士は少年のように目を輝かせる。

互いの日常は互いの非日常。

互いが互いの日常を聞きたがるので

話は進まなず何とももどかしい。

料理が運ばれる。

「キリ様のお知り合いの方ですか?」

「キリサマ?」

演劇部員達は「キリサマって誰」状態。

「このお方達もキリ殿と同じ世界から参られ王都をお救いなされた。」

何とも丁寧な言葉に何が何やら。

この方達は新王の命を受け世界に平和を報せ巡る。

キリ殿が同席していないのはメリア姫と隣国へ向かったからだ。

等々騎士の二人が自慢する。

店の女性はキリの不在をとてもとても残念に溜息。

「そのキリサマってここで何してたの?」

赤堀サワは、月夜野アカリと共に魔女オルンから話を聞いていた。

それでも確認したかったのは、

「盛っている」と決め付けていたからだ。

あんなチンチクリンを勇者だの英雄だの。

守護竜に乗って現れ(これだけでこの世界の住人からは尊敬の対象)

黒猫を頭に乗せ魔女を従え、姫の隣に並び歩く少年。

(貢物がいつしか「私財」に代わってはいるが)

その財産を戦災孤児に寄付。

港で大怪我した男性を一瞬で癒やした。だの。

その頃、一人別行動を取っていた部長月夜野アカリも

騎士たちの駐屯地で殆ど同じ内容の「伝説」を聞いていた。

「キリ伝説」を確認しようと一人別行動の月夜野アカリ。

港を周り情報収集するには

演劇部員達が揃っては目立ち過ぎて話が膨らむと考えた。

駐屯地でも、一人巡った港でも同じ話を聞かされた。

港で広まっている勇者キリ伝説は、つまり既にこの国から他所の国に伝わっている。

と考えられる。

「私がどうこうする必要もないな。」

「まあそれならそれで。」

月夜野アカリが燃えていない。

悩んでいるのでも迷っているのでもない。

ただ熱を発していない。

月夜野アカリは冷めている。


「前も言ったけどさ。」

笠懸ヒサシは改めてこの「異世界旅行」についての見解を述べる。

「俺はあの王子様とお姫様が俺達をこの世界に呼んだって思っている。」

そうでなければ辻褄が合わない。と言った。

事故である。とか何かの間違いである。可能性も捨てていない。

だとしたら

「俺達がこの世界に来た理由は何だ?何か意味があるんじゃないのか?」

「リアリストに見えるけど運命論者なの?」

「間違って召還された少年少女が世界の運命を変えるって?ラノベじゃあるまいし。」

「変えてる奴がいるだろ。」

「誰。」

「部長が勇者に仕立ててたキリサマ。」

道具屋笠懸ヒサシは嫌味や妬みを一切含まず彼を「尊敬する」と言った。

「あの行動力には頭が下がる。」

「あー道具屋には悪いがそんなに褒められた行動じゃないな。」

否定する月夜野アカリ。

「アイツの行動原理は皆のためにーとかじゃ無い。」

これは私の責任だ。

織機キリを追い詰めたのは私だ。

「アイツはただ逃げているだけなんだよ。」

「逃げるって何から。」

「私達の世界。」


1年1組帰宅部織機キリ。

演劇部員達は誰一人その素性を知らない。

「あの子本当に喋らないから。」

「ただの人見知りなんじゃないの?」

「いやあこの世界の人とは普通に喋ってるから。」

「それじゃ私達が嫌われてるって事?」

「嫌われていないよ。避けているだけ。」

あの子は私に似ている。

そう言い続ける月夜野アカリの根拠が赤堀サワにはどうしても理解できない。

「それが嫌われているって事じゃ無いの?」

「自分の思惑と私達の都合が一致しただけだ。むしろ私達の事を好きなんじゃないかな。」

「言ってる事が全然判りませんっ。」

「うおっ危ねぇ。」

「なんですか。」

「いきなり匙を投げるな。」

「今頃どうしているのやら。」

「また動物と戯れているでしょ。」

「馬に猫に、今度は犬かな。」


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