迷子の青空 01
登場人物紹介
織機キリ 一年 帰宅部
月夜野アカリ 三年 演劇部部長 「部長」
若宮アオバ 三年 副部長 「副部長」 「ヘタレ先輩」
倉渕ミサト 三年 会計 「会計」 「部費子」
笠懸ヒサシ 三年 道具係 「道具屋」
赤堀サワ 一年 脚本 「プリン(ちゃん)」
吉岡ハルナ 一年 衣装係 「仕立屋」
吾妻アヅマ 二年 元演劇部効果担当 「オタ(眼鏡)師匠」
レミー 西の国 王様
メリア 西の国 王様の妹
ツグミ 魔女
ノト 黒猫
第一幕あらすじ
織機キリと演劇部員達は「西の国」に呼ばれる。
守護竜「ピータン」を癒やすキリ。
敵船団襲来の応戦に協力する演劇部。
陰謀渦巻かない中、演劇部員二年吾妻アヅマが失踪する。
彼と、守護竜を貶めた「執政官」を追う旅に
さあ出発だ。
羽撃く者達の世界 第二幕 迷子の青空
丘の上にある城。
庭園には日時計と鐘。
見上げるとオレンジ色の空。
見下ろす港には帆を張った漁船が漁から戻り
その活気は二人の女子高生にも届く。
「こんな時間に漁から戻るんですね。」
「何かおかしいのか?」
海を眺め佇む女子高生二人。
演劇部部長月夜野アカリ。新人赤堀サワ。
特に意味の無い会話で様子を伺う赤堀サワは
一度深く息を吐いて
「で、何でまだいるんですか?」
「それを言わないでくれ。」
「あの展開だと今頃もう船に乗って」
「その船がまだ出来上がって無いって。」
「あんな別れ方しておいてこんな仕打ち私なら耐えられない。」
赤堀サワは「褒めている」。
演劇部の部長に恥ずかしい事なんてあるものか。
「それでいつ出発ですか?」
「明日の朝だってよ。」
「それまでこうしてただ待っているだけ?」
「君こそ演劇部の打ち合わせに参加しなくていいのか?」
残留組演劇部員達は、既に「次に」向けての会議を始めている。
いくつかの選択肢。
王都に留まり「ぬくぬく」と暮らすか。
隣の村の部室を拠点に「だらだら」過ごすか。
その向こうの繁華街に出向いて一旗上げるか。
さらに向こうの西地区海岸でリゾートるか。
場所の選択だけでも意見は噴出する。
意見の噴出だけで結論はまだ先だろうと赤堀サワは抜け出し
海を眺める部長を見付け並んだ。
「あー言いたくなからた答えなくていいです。」
「うん?」
「オタ先輩の事、気付いていたんですか?」
「まあ、な。」
「その責任を感じて?」
「それもある。」
「でもオタ先輩は自分の意思で出て行ったんですよ?」
「そうだな。」
「なら態々連れ戻そうとしなくても。」
「無理やり連れ戻すつもりはないよ。」
「はい?」
「退部届を提出させないと。」
織機キリは魔女のツグミと打ち合わせ中。
魔女オルン宅にはこの大陸の地図があった。
「大きな大陸が二つある。」
地図からではこの星のサイズが判らない。
大陸と訳されてはいるがオーストラリアより小さければ島だ。
南の大陸と北の大陸。
「私達のいる国は南の大陸の西の国。」
「山の向こうに南の大陸中の国。」
「その向こうが南の大陸東の国。」
国は4つしかない筈だ。残りは必然的に
「北の大陸東の国。」
「東?」
かつて北の大陸には四つの国があった。
大戦により北の大陸に生息していた三体の守護竜が消え
同時に三つの国が消えた。
結果、北の大陸は東の国により統治され
国だったその呼び名は「地方」と変更された。
原則東の国の「法」が適用されるが
地方特有の「条例」が加わる。
思想や文化を規制するような事もなく、
「納税額が高くなり、王都と地方とでは貧富の差が広がっている。」
南の大陸より広大な北の大陸に、国はただ一つ。
「先ず漁港から中の国の西の港に。」
最も近い港。この西の国との交流以外に使用用途のない港。。
地図を広げながら確認。
「想像より広そうだ。」
「基本海路になる。ただ一箇所寄り道する。」
「メリア殿下のお母さんに会う。ですね。」
「そうだ。それがここ。」
ツグミが指差したのは中の国の中央から、南西寄り。
緯度的にはこの国より南にありそうだ。
寒いのだろうか。それより
「遠い、ですね。」
「そうでもない。ほら運河がある。」
キリはメリアとの最終打ち合わせに城へ。
庭園に月夜野アカリと赤堀サワの後ろ姿を見付ける。
「ゴドーは来ませんよ。」
「後藤?」
赤堀サワには解らなかったようだ。
振り返ると声の主はもういなかった。
「誰です後藤って。」
「さあな。」
月夜野アカリは部員達と最後の夜を過ごす。
「最後ってなんだ。戻るつーの。」
「あの子の面倒ちゃんと見るのよ。」
倉渕ミサトは月夜野アカリに進言、いや忠告する。
「ホントそっくりだから。出し抜かれないようにするのよ。」
本人と同じこと言っている。
赤堀サワは部長の親友の言葉にもまだ信じられなかった。
あのチンチクリンと部長が似ているとはどうしても思えない。
だいたい、ミサト先輩はアイツとどれほど話したんだ?
あれ?アイツ何て名前だっけ。
「さあそろそろ寝ようか。明日はきっと早いぞ。」
ハタオリキとか部長が呼んでいたような?
ハタオリキ?ハオタリキ?タハオキリ?ぐぅ
翌朝。
月夜野アカリは怒りに震えていた。
気付かずにいた自分に
まんまと出し抜かれた自分に。
織機キリは
メリア、ルメニー、騎士団長、ツグミ、そして黒猫ノトとともに
昨夜遅く出発していた。
「あの野郎。戻ったら絶対入部させてやる。」
「部長のくせに演劇部を罰ゲームみたいに言うな。」
「黙れミサト。」
「しかしすげぇな。部長をプッ。完全にぷぷっ。」
「黙れ道具屋。」
「絶対入部させる。絶対私に縋り付かせてやる。」
「は?」
本当に腹立たしいのは、
こうなる事を予想していたのに、かなり高い確率だと判っていたのに
気付かないフリをしていた自分に対してだ。
最初から気に入らなかった。
部室に来たアイツに「引き立て役をやってくれ」
(正確には「脱げ」)と言ったのに「イヤ」とも言わず。
ずっと人の顔色を伺うような目付きが私をイラつかせたんだ。
「あの野郎が帰って来たら、泣かす。」
「だめでしょ手を出しちゃ。」
「暴力なんか使うか。この国にアイツの伝説を広めて嫌がらせだ。」
「どうやって。」
「演劇に決まっているだろうがっ。」




