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6/22

右手じゃなくて眼だから・・・

また評価いただけて嬉しい限りです。本当に励みになります。

今回は説明回です。そして反応がとても怖いです。

書き方はあとで変えるかもしれません。

「う……うーん」


 目が覚めると……俺はどうやらベッドで寝ていたらしい。

 反射的に知らない天井だ、と言いたくなったがやめておく。


「こ、ここは?」


 ベッドから首だけ起こして辺りを伺うと暗くなった部屋の中、ベッドの横に置いてある椅子の上でユミィが船を漕いでいた。


 ああ、そうだった。

 確かギルドでユミィに暴言を吐いた冒険者とトラブルになって……そうか、殴られて気絶したのか。

 舌で口の中をまさぐってみると結構な傷になっていて飛び上がるほど痛かった。


 くそ……ゴブリンを倒した時みたいに目からなんか出るんじゃないかと思ったけどあてが外れたな。

 やっぱりあれは幻だったのか?案外闇雲に投げた石が当たっていたのかもしれないな。


 ――さっきは腹が減ってたからな


「!?」


 突然、頭の中に声が響いた。

 部屋の中をあちこち見渡してみるが誰もいない。

 ユミィは寝ているし……そもそも耳から聞こえたような感じもなかった。


 ――どこを見ているんだ? 俺はここだよ


 その言葉と共に左目が熱を帯び、そのあと左目から何かが抜け出るような感覚を味わって……


 俺の左目から何かが出てきた。


「ヒィッ!」


 視界に映る蔓状のものをみて、俺は思わず声を上げてしまった。ユミィを起こしてしまわなかったかと椅子をの方を見ると、むにゃむにゃいっていたので大丈夫そうだ。

 それにしてもこの触手みたいなものはなんなんだ?もしかして……


 ――ああ、これが俺だ。お前の左目に宿っている


 なんという事だ、やはり俺の左目は魔眼だったのだ。

 喜びに打ち震えているとさらに声が響く。


 ――お前が死を願った事でようやく契約が完了してお前を見つける事ができた


「じゃあお前が俺をこの世界に?」


 俺は声を潜めてそう尋ねる。


 ――声を出す必要はない。思うだけで伝わるさ。あと質問の答えだが……それは違うな


(じゃあ誰が?まさかピンポイントで俺を選んでるのに人為的じゃないっていう事はないだろう?)


 ――ああ。だがそれは制約によって話すことが出来ない


(制約ときたか。一気にきな臭くなってきたぞ。

 まぁ正直にいうと俺はこの世界に来て……いや、あの淀んだ監獄から出してくれて感謝している。

 だけど争いごとは苦手だし、のんびり生きていきたいと思っているんだ。

 守っていかないといけない相手も……出来たし)


 俺はチラリとユミィを見る。


 ――それでいいんじゃないか


(え、それでいいのか?なんかよくこういう展開だと世界を救って欲しいとかなるかと思ったんだが)


 ――お前がこの世界にいる、というそれだけが重要なのだ。救って欲しい世界などここにはないしな。だから後は何をしていてもいい…………


(おい、その最後の間はなんだ?とっても気になるぞ。

 まぁいいや、ところで昼間ゴブリンを倒してくれたのはお前か?)


 ――そうだ。一匹目を喰らって少しは力があったからな


(一匹目を喰らって……?いや、そうだったのか。

 それならお礼を言わないといけないな。ありがとう)


 ――……ああ。そうだな、後は俺の力を伝えておこう。何かと必要だろうからな…………


(だからその最後の間をやめてくれ、会話の裏を読むとか出来ないんだ)


 ――俺の力は<寄生>だ。生物に寄生する事で宿主の力を奪ったり、感情や思考を操作したりできる


(俺の抗議は軽やかにスルーするんだな。

 あ、もしかしてあのゴブリンにも<寄生>って力を?)


 ――ああ、そうだ。あの程度の生物なら<寄生>して内部から壊す事も可能だからな


(よし、力の事はわかった。あとは俺が使い方を覚えて使いこなせればいいんだな)


 俺の大魔導師への道はここから始まるようだ。

 でも触手系魔術師かぁ……なんだか格好悪いな。


 ――いや、俺の力を使いたい時は喚ぶだけでいい。ただし、飯を食わせろ。長い間、お前の中で眠っていたから飢えている


 大魔導師への道は始まる前に終わったようだ。


(飯って言うと……?

 俺は現在、というか過去を振り返ってみても一貫して甲斐性なしのろくでなしなんだが)


 ――具体的には魔物だな。因子を……あぁ人間がいう輝石というヤツを取ったあとの死骸をくれればいい


(おい、っていう事は定期的にあんなバケモノを狩らないといけないって事か?)


 ――そうなる。だが俺がこれ以上飢えると大変だぞ?俺は雑食だからな……例えばそこで寝ている……


(やるよ。だから黙れ、それ以上は言わなくていい。

 目玉をくり抜くぞ)


 ――ふはは、お前は時に豹変するな。だが目玉をくり抜けばお前は死ぬぞ?そういうルール(・・・)


(いざとなったら……やってやるよ)


 ――わかった、肝に銘じておこう。ではお詫びついでにもう一つプレゼントだ


(もう一つ?他に貰った覚えがないのだが)


 ――何を言っている。この世界の言葉を話しているだろう?それにさっきは文字も読めるようにした


(……どうりで。どうも違和感がないと思った。それは魔法かなんかか?)


 ――いや、お前の脳の一部に干渉をしたからだ


(…………ん? それって俺が寄生されてるじゃないか)


 ――最初にいったはずだぞ、俺の力は<寄生>だ、と


(くっそ! 今すぐこの目玉をくり抜いて……いててて!

 おい、目玉で手を押さえつけるんじゃない!状況だけで頭がおかしくなりそうだ)


 ――それについては大丈夫だ……俺はもう間違いを……いやなんでもない。それにこれは<共生>だ


(共生……相利共生ってやつか)


 ――そうだ。俺はお前の魔力を使って力を行使してお前はその結果を享受する。結局のところ今までと全く変わらないさ


(そうかそういえば、生まれた時からずっと側に居たのか。

 よし、ここは一つ俺からもプレゼントとして名前を付けてやろう。

 いつまでも"お前" じゃ呼びにくいからな)


 ――勝手にしろ…………


(そうだな……右手であれなんだから左目だと……それじゃ犯罪か。いやむしろ魔眼だから……。

 よし決めた。お前の名前は「マギー」だ。それでいいか?)


 ――勝手にしろといっただろう。おや、想い人が起きそうだな……今日はここまでにしておこう。こうやって形をもって顕現している時にしかお前に言葉を伝えられないが、お前の考える事は届いている。それを忘れるな


 俺の眼は、いやマギーはそういうと一瞬のうちに消えた。

 きっと俺の眼に戻ったのだろう。


「ふぁぁ。あれ、気がついたんですね。っていうか今誰かいました?」


「いや、だ、誰もいなかったよ?」


「んー、そうですか? それにしてもさっきのあれ、危ないじゃないですか! ああ見えてもブルートさんは二つ星冒険者(ダブルスター)ですよ!?」


二つ星冒険者(ダブルスター)?」


「いいですか? 冒険者はまず新米(ニュームーン)から始まって、実績を評価されると星がもらえて一つ星(シングルスター)二つ星(ダブルスター)三つ星(トリプルスター)って昇格していくんです! クロウさんはまだ新米(ニュームーン)にもなっていないのに……危ないですよ」


「ユミィが馬鹿にされているようで……許せなかったんだ。でも逆に心配させちゃったか。ごめん……でもこの通り、元気だよ」


 俺はそういってベッドから立ち上がる。


「それなら良かった……ですけど。……ふふっ」


 そういってユミィは笑い始め、俺を手招きするのでユミィが座っている椅子まで近づいた。

 するとユミィは俺の顔に手を伸ばして……左の頬を優しく撫でた。


「ほら、ここ腫れてますよ。よしよし痛いの痛いの治れ治れっ」


 そういって細くて白い手で、俺の頬を撫で続けたのだった。


「私、小さい頃からヤンチャだったからよく身体中に傷を作ってて……その度にお母さんがこうやって撫ででくれたんです。小さい頃に死んじゃったんですけど」


「……っ! そう、なのか」


「でも、想い出は……ここにありますから!」


 そういって大きな胸を突き出した。

 そういえば俺が気絶してる間に服を着替えたみたいだ。まぁあのボロボロの服じゃ色々とまずいことになるもんな。

 おっと、そんな所ばかり見ていたら嫌わてしまいそうだ。

 俺はそう思って窓の外を見る。外はまだ暗い時間のようだ。

 空を見ると月に似た真ん丸の星が輝いている。


「ふぁぁ、まだちょっと眠いですね」


「椅子に座ったままじゃあよく眠れなかっただろ……悪いな。俺が使ったあとで良かったらベッドを使ってくれ」


「あ、それはいいですね! ではお言葉に甘えてっ!」


 ユミィはそういうと椅子から立ち上がると、ぴょんというような動きでベッドに飛び乗った。

 そうして枕に顔を埋めると、ふんすふんす呼吸をし始めた。


「あぁぁこの匂い……たまらんたまらんっ」


 あ、また病気が出てるわ……見ないふりしないと。

 アー月ガキレーダナー。


「あれ、クロウさん何してるんですか? こっちどうぞ」


 そういってユミィはベッドの端に寄ると空けたスペースをぽんぽん、と叩いた。

 そこで……寝ろと!?


 そこで否定するのも意識をしている感じでいやらしいかな、と自分に言い訳をしながら俺もベッドへ入り、ユミィの隣へ行く。


「今日はいろいろとありがとうございます。私、本当はあの時かばってくれて嬉しかったです」


 その言葉のあと頬にちゅっという軽く吸い付く感触があって。


 ユミィはそのあとすぐに「お、おやすみなさいっ」といって布団を被ってしまったが俺は……。

 夜は長そうだ。

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