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ウインクの結末

需要がありそうであれば夜に続きを投稿します。

なさそうならマイペースに投稿します笑。

なんとかギリギリの戦いを経てゴブリン二体を倒した俺達は河原をゆっくり歩いていた。

本当はこんな場所はすぐに離れて街まで行きたい。

それなのに、俺の体が言うことを聞かなかったのだ。

体の中の何か出し尽くしたというか……賢者タイムというか。


「クロウさん、それは多分魔力切れですね」


「魔力だって?」


「何を驚いているんですか? さっきなんかやってましたよね? だからゴブリンが倒れたんだと思ってましたけど」


俺はその言葉を聞いて考え込んでいた。

この世界は一体なんなんだ、と。


「あ、痛っ」


部屋でいつものように引きこもっていたら突然目が痛くなって……気付けばここだ。

おかげで靴もないから足の裏が痛くて仕方がない。

きちんと下を向いて踏むべき場所を集中して選んでようやく歩けているような状況だ。


さっきの恐怖、そしてこの痛み……どうやらこれは夢ではないみたいだ。

とすると、やっぱりここは俺が住んでいてた世界とは違う世界なのか。

簡単には認めたくないけど、こうも立て続けに色々体験したら嫌でもそう思わざるを得ないだろう。


そもそも俺の世界はあの六畳だけだったのだ。

そこから外に出たなら……別にどっちの世界も俺にとっては知らない世界に変わりない。

ならむしろ出られた事自体を喜ぶべきかもしれないな。


「クロウさん! 街の外壁が見えてきましたよ!」


ユミィのそんな言葉に足元から目を離すと……おぉ。

河原の側にある森から突き出た木の枝が視界を覆っているが、その隙間からは確かに人工の建造物が見える。

思ったよりも壁の高さがある。もしかしたら結構栄えた街かもしれないな。


「痛っっってえ!」


街の外壁を見ながら歩いていたら尖った石が足元にあったみたいだ。ちょっと涙が出た。


「もう、クロウさんってば仕方ないなぁ」


ユミィはそう言ってピッタリと隣に寄り添うと俺の腕を自分の肩にかけた。

どうやら肩を貸してくれるらしい。

それは助かる、助かるんだけど……そんなにくっつかれると……。


自分の中の荒神を鎮めるため深呼吸をしているとすぐ横にいるユミィと目が合った。


「クロウさん、さっきのウインク……本気ですか?」


「ん、これ? 本気って……どういうこと?」


ユミィに向けてウインクをしながらそう尋ねる。


「あ、また……。んもう、しらばっくれないでくださいよ! ウインクは求婚の意味じゃないですか! 好きな人となかなか近くで会うことが出来なかった王子がベランダから女の子にウインクをした話……知りません?」


お、おう……知りませんとも。

この世界ではウインクがそんな大それた行為に昇華されていたのか。


「ま、まぁ命を二回も救ってもらったわけですし? 想い人がいるわけでもないので(やぶさ)かではないですけど……でもちょっと急っていうかなんいうか……」


「あ、あぁ。そうだよな」


「だからっ! もうちょっとだけ時間を下さいっ! もう少しお互いを知ってからでもいいと思うんですっ!」


ふんす!という効果音を響かせてユミィがそう言い切った。

その後に「ね?」と小首を傾げて聞いてくるんだから「そうしよう」って答えるしかないだろう。


「じゃあ、とりあえず婚約者って事で……我慢してもらえますか?」


「こ、婚約者!?」


なんとこの世界に来てから数時間で婚約者が出来てしまったようだ。

なんだか壮絶な勘違いをしているような気がしないでもないけど……それでも誰かにそんな事を言われる日が来るなんて思ったこともなくて。


「う、嬉しいよ……」


「えーじゃあどうして泣くんですかっ!?」


「嬉しいから……だよ」


もう仕方ないなぁ……といって横のユミィが頭を撫でてくれる。

その手が暖かくて。

そうして少しづつ俺は落ち着くことが出来たのだった。


「さぁ、ここから壁伝いに行けば街の入口がありますよ!」


いつの間にか壁のすぐ側まで来ていたみたいだ。

街のすぐ側はいつも冒険者が練習がてら魔物を狩っているから安全ですよ、という言葉の通り壁の側ではなにも起こらず、やがて街の入口と思しき門が見えてきた。


「クロウさん、あそこが入口です!」


するとユミィは俺から少し離れてからくるりと向き直り、俺に一礼する。


「ようこそルクサンド最大の街、ロンマリアへ!」


そう言うと戯けた様子で「一回やってみたかったんです」と、ころころ笑った。

さっきゴブリンを倒したのはよくわからない力だったけど、それは守りたいと俺が一歩踏み出した結果だったのは間違いないわけで……この笑顔が守れて本当に良かった。

俺は心からそう思うのだった。


笑いがおさまったユミィはまた俺の側に寄ってきて肩を貸してくれようとする。


「ユ、ユミィ、もう大丈夫だよ。それにほら、誰か知り合いに見られるかもしれないし……やっかまれたら厄介だろう」


俺は頑張って自然を装い、ユミィの名前を呼んだ。


「クロウさんは何を言ってるんです? 私達はこ、婚約したじゃないですか。それに私はモテないですから……」


おいおいこんな可愛い子を放っておくなんて。この世界の住人は俺の美意識とはかけ離れているのか?

そんな事を思っていたらもう門が目の前に迫ってきていた。


「クロウさんは身分証とかありますか?」


「ん? あぁー……ないな」


「それじゃあまずはあっちで手続きをしないといけないですね」


そういって門の横の建物を指さした。

二人でその建物に入ると、カウンターがあってそこには職員と思しき女性がいた。

おや、その目の前には旅人のような男がいる。

どうやら俺の他にも街に入るために手続きをしていた人がいたようだ。


後ろに並んで順番を待っていると奥のドアから兵士のような男達が現れ、俺の前の男を脇から挟み込むと引きずって建物の外に放り出した。

なるほど、どうやらいわゆる入国審査みたいな事をする場所らしい。

建物の外に出された男は「どうしてだ!?」と叫んでいる。


「なんの目的もなくこの街にくるなんて怪しすぎるから駄目だ」


一人の兵士がそういうと建物のドアを締めた。

前の人は普通の旅人に見えたけど……あれで駄目なら俺はもっと駄目だろう。

そうやって怯んでいると俺を支えているユミィが兵士に向かって気安く声をかけた。


「ルドラさん!」


「お、おぉユミィちゃんじゃないか」


と、そこまで言ったところで隣にいる俺に気付いたようで声のトーンが一つ落ちた。


「隣の男は誰だい?」


「あ、森でゴブリンに襲われていた所を助けて貰ったの……身分証を失くしてしまったみたいで……ねぇ、入れて欲しいんだけど、いい?」


ユミィが上目遣いで兵士にお願いする。

いやいや、兵士だって仕事でやっているんだろうしそんなのは通用しないだろう。


「ああ、ユミィちゃんのお願いだったら問題ないよ!」


うん、通用するみたい。


「でも後でちゃんとギルドで身分証を作って貰ってね」


「はーい、ルドラさんありがとう! クロウさん良いって。いこっ!」


「あぁ良かった、助かったよユミィ(・・・)


その俺の何気ない一言を聞いた兵士は眉間にピクリと皺を寄せた。


「ちょっと待て、その剣はなんだ!?」


「あ、これは森でゴブリンから奪ったものでして……」


俺が慌てて答えるも、それがどうした?というような顔をしている。


「街に抜き身の剣を持ち込む事は出来ない! よって……没収っ!」


おいおいユミィさん……これ、思いっきりやっかまれてるよ。

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