プロローグ
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中学2年生の時、大好きだった隣の席のユミちゃんに言われた一言。
「キモっ」
大好きだった学校がそれから嫌いになった。
大好きだった自分の瞳がそれから嫌いになった。
俺の左目の虹彩は生まれた時から白かった。
瞳の虹彩というのはメラニン色素が含まれていて、基本的に白になりえない。
だというのに右目は他の人と同じようなダークブラウンで、左目が白。
心配した両親は小さい俺をいくつもの病院に連れて行った。
もしかしたら一部の鳥のようにカロテノイド、プテリジンなどの物質などが影響しているかもしれないと言われたみたいだけど、結局よく分からなかったらしい。
それでも視力は普通にあったので、なんだかんだ病院に行くことも少しずつなくなっていった。
それから、ちょうど中学二年生くらいの時期に俺は思春期特有の病気に感染した。
そう、厨二病だ。
左右の虹彩が違う色の目の事をオッドアイと呼ぶと深夜アニメで知って、その響きのカッコよさに痺れた。
そして別のアニメを見て、俺の左目は魔眼なんだと確信した。
それからは……なんだ、あれだ……「目覚めよ我が魔眼よ!」……とか鏡の前でやったりして。
結局、魔眼が開眼する事はなかったけど結構この瞳が気に入っていた。
……だというのに。
冒頭のユミちゃんの一言が俺の全てを変えた。
それを言われてから意識して相手の視線を追うと、どうも面と向かって会話をしている相手が俺の目を見ていない事に気付いた。
そうか、みんな言わなかっただけで心の中では気持ち悪いと思っていたんだ、そう思ってしまってから意識的に白い方の目を閉じるようになった。
眼帯をして行った事もあったっけな。
なんとか高校には進学したけど、新しい環境ではまた聞かれるんだ。
「どうしてウインクしてるの?」
「どうして眼帯してるの?」
「どうして?」
「どうして……」
理由を話してまたキモいって言われたらもう俺は……それから学校に行きたくなくなった。
両親はあなたのせいだ、あなたのせいだ、とお互いを責めあっていた。
だからそんな両親の顔も見づらくなっちゃって……俺は部屋に閉じこもった。
毎日寝て起きて、息を吸って吐くだけの毎日を送って気付けば7年が経っていた。
こうして24歳、最終学歴:中卒、職歴:なし。
まぁ立派なニートの出来上がりってわけだ。
俺だってなんとかしたかったよ。
いつも食事を運んできてくれる母親も、働いてお金を稼いできてくれる父親もいつかは死ぬ。
だからずっとこうしていられる訳なんかないし、両親に迷惑ばかりかけている。
なんとかしようと頑張って外に出てみた事もあった。
でも、周りの人の喋り声が自分の悪口を言っているように聞こえるんだ。
笑っている声が、馬鹿にされているように感じるんだ。
だから道に迷って声をかけてきた人から逃げて、逃げて……気付けばまた六畳の監獄にいた。
もう……
「死にたいよ」
自分の人生を思い返していたらついそんな言葉が口をついてしまった。
その時、左目の奥がズキリと痛んだ。
「うっ……」
思わず声を出して、目を押さえる。
今のはなんだったんだ?そう思っていたらまたズキリと鋭い痛みが走った。
俺は耐えられなくなってベッドに倒れ込んだ。
痛みは鼓動のように断続的に続き、しかもどんどん強くなっていってそのうち目が痛いのか頭が痛いのかも分からなくなってきた。
これ以上は耐えられない!そう思った瞬間、頭の中で声が響いた。
――やっと見つけたぞ
その声を聞きながら、俺の意識は闇に沈んだ。
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