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第7話、巫女様の弟子入り。

「申し訳ございませんでした」


 僕はソファーに座って巫女様に扇子で仰いでもらっていた。その前には修道女さんが膝まづいて頭を床に擦り付けるように謝っていた。


「そんなことしなくていいですから」

「いえ、こうしないと私の気がすみません」


 ということで、止めてもらうように言っているのだけど、修道女さんは頑として土下座を止めようとしないので、仕方なくそのままにしているのだ。うう、落ち着かない。


 今回は前みたいに巫女様と修道女さんのあられもない姿を反芻してのぼせたというわけではなく、湯船につかっている間ずっと巫女様と修道女さんが中でタオル一枚待機していたせいで、コスモを鎮める余裕がなかったせいだ。


 そういう意味では確かに修道女さんのせいでのぼせたと言えなくもないけれど、巫女様しかいなかったら確実に別の理由でのぼせていたと思われるので、修道女さんを責めるのは忍びない。


「次からはお風呂は勇者様と私だけで入ります」

「……はい」


 修道女さんが落ち込んでいることをいいことに、巫女様は修道女さんをお風呂から追い出すことにしたみたいだ。してやったりという顔がちょっとかわいい。


 でも、そうなると修道女さんのあられもない格好や柔らかい感触を合法的に味わう機会がなくなってしまうのでは? それはもったいない。


「いや、やっぱりお風呂には修道女さんも来てもらった方がいいんじゃないかな」

「え、勇者様?」

「巫女様とはお風呂から出てからゆっくりしようね」

「勇者様♡」


 扇子であおぐ手を取って巫女様の目をじっと見つめると、巫女様はすぐに目がハートになって僕の肩にしな垂れ掛かってきた。


 それで、僕も巫女様の肩を抱き寄せて、どちらからともなく唇が近づいて、その後はなし崩しでそういうことになった。修道女さんは恥ずかしくなったのか、途中でこっそりいなくなったみたいだ。



 次の日、僕は巫女様に神殿から離れられない理由を聞いてみた。


「神殿には巫女でなければできないことがあるんです」

「巫女っていうのは1人しかいないんですか?」

「はい。巫女は神様に選ばれたものだけがなることができて、新しい巫女が生まれる時には古い巫女の力はすべて新しい巫女に受け継がれるんです」

「ユニークジョブ?」

「何ですか、それは?」


 僕が何気なく言った言葉だったが、巫女様は不思議な顔をして聞き返してきた。あれ? 今、何か変なことを言ったっけ?


「要するに巫女って職業には世界で1人しかなれないんですよね。ということは、ユニークジョブってことじゃないんですか?」

「いえ、巫女は職業ではなくて、神に選ばれたという印なんです」

「ん? 職業ってそういうものですよね。例えば、僕は勇者って職業ですし」

「勇者は神殿が認定した呼び名ですよ」

「え?」


 どうも話がかみ合わない。確認してみたが、やはり僕の目に映るステータス画面には僕の職業は勇者となっている。これと同じように巫女様のステータス画面では巫女という職業が表示されているのではないのだろうか?


「あの、巫女様のステータス画面にはどうやって表示されているんですか?」

「ステータス画面って何ですか?」

「ほら、あれですよ。ちょっと意識を周りから反らして自分の中に集中すると、この辺に文字が浮かんできますよね?」

「何ですか、それは?」


 なんと、巫女様はステータス画面のことを知らないらしい。ステータス画面のことを知らない人なんて初めて見た。もしかして、この世界ではステータス画面のことを知らない人って結構いるんだろうか?


 ということで、向こうにいた修道女さんに来てもらってステータス画面のことを聞いてみた。


「ステータス画面というのは初めて聞きました」


 どうやらステータス画面のことはあまり知られていないみたいだ。もしかすると、この世界の人はステータス画面を見ることができないのかも。つまり、これが僕の勇者の能力? でも、自分のステータスを見ることができても特別何もメリットはないような……。


 待てよ。確か、何か便利な機能があった気がする。


 そう思ってステータス画面のメニューを順番に開いて探してみると、フレンドリストに並んでアプレンティスという項目がある。これは高レベルの人が低レベルの人を弟子に取って育成するのに使われるのだが、ここでポイントなのは師匠は弟子のステータスを見ることができるということだ。


 ただ、師弟関係になるためには両方でステータス画面上で承諾の意思を示す必要があるのだけど、巫女様はステータス画面が見れないのでどうやって承諾してもらうかだけど。


「勇者様、大丈夫ですか?」


 ステータス画面を見て考え込んでいたら、巫女様に心配されてしまった。ステータス画面を見たことがないのだから、巫女様には僕がただ虚空を見つめているだけに見えていたのだろう。


「大丈夫ですよ。これから、もしかすると何か変わったものが見えるかもしれないですけど、もし何か見えたら言ってください」

「は、はい」


 さて、巫女様をアプレンティスにするにはメニューから追加を選んで巫女様を選択すればいい。そうすると申請確認画面が出るからそこではいを選ぶと、巫女様の方にダイアログが見えるはずだ。


「あ、何か見えました。え、何ですか、これは?」

「何て書いてある?」

「えっと、結城忍から師弟関係の申請がありました。結城忍のアプレンティスになりますか? って書いてあります」

「何を言っているのですか、巫女様?」


 果たして巫女様にはダイアログが見えたみたいたが、修道女さんには見えないので怪訝そうな顔で巫女様と僕の方を交互に伺っていた。まあ、とりあえず、修道女さんの方は置いておこう。


「それじゃあ、はいを選んでください」

「えっと、え、どうやってするんですか?」

「はい、という文字のところに集中して、きゅっと掴む感じにするんです」

「んっ。あ、何か、変わりました」


 んっ、っていうところで巫女様がぎゅっと手を握って力を入れた様子が可愛かった。


 そうじゃなくて、ちゃんと選択できたみたいで僕のステータス画面でアプレンティスのところに白乃という名前が追加されていた。これが巫女様なのだろう。


「巫女様の名前は白乃って言うんですね」

「はい。え、どうしてそれを?」

「それは、僕がステータス画面っていうのを見られるからなんですよ」

「もしかして、それが勇者様の能力なんですね!!」


 はっとした顔になって巫女様がそう言うと、修道女さんも同じように僕の方を驚いた様子で見た。確かに、現状だと他人のステータス画面を見るのは勇者の能力と言えなくはないかもしれないけど、特別なスキルでもなんでもないんだけどな。

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